第三十話〜ついに来た、この瞬間〜


 ブォォォォォ!!

炎の魔人と化したフィアンマの大きな指の隙間から、

私たちの視界に移る景色は雪景色、そして夜の砂漠…

町の明かりを一瞬で飛び越え、風たなびく草原の涼風をもこえる速度で飛び去る。

「レルシア、みえてきたぜぇ?」

前方から大音量でしわがれた声が響く、私も指の間から目を凝らした。

見覚えのある尖塔、月明かりに浮かぶ巨大な城──ルアス城──

「わかった、ありがと。 塔から中に入りましょう」

長い金髪を強風にたなびかせて、レルシアは私たちに合図した。

月明かりと同じような色をした彼女のドレスと、楽器の柄が風で揺れる。

「ええ、いきましょう。」

私は鎧をはおい、きつく帯を締めた。

今晩、今から決着をつかないと…!

「んじゃあ、いきますか。 ほら、おきろやシリウス、ついたで?」

紺色と白のいりまじった法衣のしわをてで伸ばしながら、
隣で伸びているうす青のローブをきている銀髪の少年、シリウスをこづく。

「うえ…ごめん、乗り物酔いしちゃって…」

シリウスは、具合の悪そうな青い顔をすこしあげ、
私たちを包み込んでいる指の隙間から外の風をあびている。

「いよいよだね、ティア。 ミレィさんも、きっと助けれるから...しめちゃおう!」

私の隣に座っていたリルムが立ち上がって、私の肩をたたく。

黒い縁取りの紅い修道服と、
肩までたれる蒼い髪が月明かりに照らされて、どこか強張っているのがわかる。

「ああ、今日こそ決着をつけるときだ、いくぞ。」

闇のように黒い長髪を後ろで束ね、顔の下半分に同じく黒い覆面。

銀色のチェインメイルを着込んだ男、ヘブンも立ち上がる。

いつも徹底して冷静な彼からも、にじみ出るような闘志がうずまいている。

「じゃあ、おろすぜ。 さっさとでな!」

ガバッ、包み込むように合わせていた指をあけ、一つの見張り塔に手を差し出すフィアンマ。

私たちがおりきったところで、その炎の魔人は、ボンッと音を立てて爆発したかと思うと、

いつものバスケットボールほどの大きさの炎の塊に戻っていた。

「ふう、久々に変身すると疲れるったらありゃあしない。急いで片付けてオイラに薪でもくべてくれや。」

 タンッタンッ…

夜の静まり返ったルアス王宮を、人の走り抜ける音が響く。

「ティア。 魔法武具を保管しているところはどこだ?」

走りながら、横にきたヘブンが話しかてくる。

「えっと、たしか、、、王宮美術室、中央の一番大きいホールよ!」

「よし、いそごう。」

私たちは複雑に曲がりくねった王宮を駆け抜けていく。

ホールが近づくにつれて、私の鼓動は跳ね上がっていく。

今日こそ…決着を!

 バンッ!!

豪華な黄金の飾り細工がほどこされた両開きの扉を大きく開け放した。

むせるような書物のにおいと、溜まった空気が噴出してくる。

しかし、私は、いやこの場にいる全員は感じていた。

とても大きなプレッシャーを…

「ふ、今頃来たか、待ちくたびれたじゃんよ。」
「ガキも一緒か。 上出来だ。」
「…」

闇にまぎれるようなロングマントをはおい、深くフードを被った男が三人…

圧倒的なプレッシャーをはなって、そこにいた。

「ええ、、、私も待ちにまったわ。今晩、貴方たちの悪巧みもおわり、あんたたちをぶっ倒す!」

シャッ、私は背負っていた鞘から大剣“セルティアル”をひきぬいて構えた。

「そうや〜、ワイらがとっちめたる。」

「そうよ! うちも謝ってもゆるしてあげないんだから!」

「僕に何のようがあるのかしらいけど、先にこちらの用をすまさせていただきます!」

「私も、アポカリプスは引き起こさせません!」

「ヒャヒャ、このフィアンマ様も助力してるんだ、おとなしくつかまれや。」

「…いくぞ。」

お互いが、その瞬間 飛びちるように飛び出した。

引き返すことのできない戦いへ…

今、深夜の大激闘が始まる…!



駄文 Next stage もこれで30話。 なんかごちゃごちゃしてしまった気がする^^; 補足説明を入れさせていただきます^^; まず、なぞの生物フィアンマ。 イメージは鬼火、命を持った火の玉って感じですかね〜 (絵を描いてみようとしたけどマウスじゃ…汗 レルシアが召喚、契約した炎の悪魔で、みずからの意思で姿を変える魔法を得意とする。 Fantasy参照、したにしずんでいるかも^^; なお、カレワラの魔女の魔力をあつめて、 全長20メートルの巨大な炎の魔人に変身し、ティアたちをルアスまではこんだ。 このときのイメージは日本でいうと鬼なんでしょうか...まさに。 F○のイフリートのように獣人じゃありません、人型でふ笑 幽霊みたいに足はないんですけどw 30話はセリフがおおくてみにくいな〜^^; 一応、セリフだけで全員誰かを識別できるようにかいていますが、読みにくいときはすみません^^;