第三十一話〜ぶつかり合う力〜 夜の闇に浮かぶルアス王宮。 今、その中央付近に位置する大広間で、戦いの幕はひらかれた…! ガキィィン、ガキィン!! 私は渾身の力をこめて、背の高い男へ大剣“セルティアル”を振るう。 全身の筋肉をしならせ、舞を舞うような動き、これが私の新技“剣舞”。 一歩踏み出すたびに空を切る剣の残影が尾を引いて流れ、まるで水中で波を起こすように衝撃波は広がる。 “剣舞” それは私の体のまわりに剣をすばやくふりまわし、剣の結界を作り出しながら歩み寄る技。 流水のように滑らかに、 それでいて攻め入る隙を与えないほどの高速で体の周りを球を描くように駆け回る刃。 防御の技でもあり最高の攻めの技でもあるが、筋肉の異様な負担をかける。 「グッ…」 長身の黒マントの男は、鉄の鞭で剣を捕らえようと何度も間合いを取りながら鞭を繰り出すも。 すべて剣圧のまえにはじき返され、徐々に追い詰める。 そしてついに… ガキィン… パンッ。 鞭が男の手から吹き飛んだ。 表情は深いフードのおかげでわからないけど、きっと焦ってることでしょうね。 「これで… きめるっ!」 “燕返し” 手を後ろに回してる動作から、一気に第一撃を重心をひくく、 右足に力を踏み込んで下から右上へ繰り出した。 シュッ、それを跳躍でかわす男。私のすぐ左側に現われ、拳を突き出す。 しかし…それは… そこは、私の思う壺よ。 ブゥウン、右上にはねあがっていた剣を、 左手を添え、おもいっきり腰と足の筋肉のばねで左真横へきりかえした。 瞬き程度の瞬間であった。 ザッ、そして確かに感じる手ごたえ。 「ぐっ。」 男は一気に後ろへ跳躍し、私と間合いをとった。 黒いマントとフードは大きく剣の跡がのころ、今にも落ちそうになっている。 「腕を上げたようだな、小娘。」 彼はもう意味のなくなったフードをとりはらった。 下から現われたのは深い緑色のショートヘアー、 ストレートにのびたそれ、そして女のように綺麗な顔つき。 まだ大人の男ではないだろう、私と同じくらいか… 彼はマントにも手をかけ、引き裂いた。 濃い青と白の裾の長い軽装、マインドチュニックに、銀色の鎖がグルグルに巻き付いている…。 「…本気であいてになろう。 俺の名はオフィエル。 氷の“フェンリル”を駆る者!」 彼は、ベルトの鞘から一つの短剣を引き抜いた。 短剣というには少し大きいが、シルバーブルーの曲剣、そして柄には狼をあしらった飾り。 それ自身からあふれ出る魔力が、周りの空気を白く曇らせる。 「! それは、、魔法武具ね。 けど、たとえなんであろうと貴方は私が倒す!」 力を…、あいつに打ち勝つ力を。 お願い“セルティアル”! 私の持つ魔法武具の大剣にも、私の魔力を吸い込むのに比例して、 刀身に纏う青白いオーラがおおきくなり、そして脈動する。 「いくぞ、小娘。 その剣、俺が貰い受ける。 “インビジブル”」 「!?」 オフィエルは足元から揺れるように空間に溶け込んでゆく。 そして、完全に消えた、気配さえも。 「クッ、完全なインビジブル…気配すらないなんてとんでもないやつね。」 私は周りを剣を構えながら見回す、必ずどこかにいる、私を狩人の目で見ているはず。 …ならば、目を潰す。 “シャイニング” 私は“セルティアル”を、床におもいっきり突き刺した。 バァアアアア、強烈な閃光が全てのものを射抜いていく。 こんな中で目を開けていられるはずない…! んっ!? 「甘いぞ、小娘。」 突如、足元からその長く鋭い巨大な狼の牙の牙を思わせる刀身が刃をむいた。 それは確実に私ののどを… 私は自分から床へ仰向けに倒れこんでゆき、床に衝突する直前で左手を突いて、全体重を支えた。 そして勢いを殺さず男の手首に両足で蹴りを… 「!?」 ジャラッ、右足に鎖のようなものがからまって… 男はそれを逆方向に鎖ごと投げ飛ばした。 ブンッ!! ドガカララララン… 「うっ…」 私は木製の床にたたきつけられ、部屋の隅まで滑っていた。 左腕と右ひざが痛い…、よほど強烈な勢いで投げ飛ばされたみたいね、ハァ。 「いい攻撃だが、俺の任務の邪魔というほどまではいかないな。」 美形の顔に冷酷な笑みをうかべて、オフィエルはこちらを眺めていた。 みると、彼の周りには、幾重にも重なりあった鎖が浮かび、彼を保護している。 彼の間合いはチェーンの結界とも言うべきか… 銀色の鎖が、なにかに操られたように空中にうかび、彼の体の周りを動き回っている。 「…そのわりには過保護なんじゃない?」 私は、膝をついたまま男を睨み返していた。 あれはうかつには近づけない、ならば間合いの外から… 全神経を左腕に集中させ、頭の中でそれをイメージする。 トンッ、勢いよく腕を突き出し床をたたいた。 “スプラッシュ” ブシャアアアア!! 突然、男を中心に宮殿の床を突き破り、巨大な水柱が下から男を直撃する。 しかしついどのそれは銀の鎖の結界に阻まれ、水圧が男にかかることはない。 「この程度じゃ俺にはあてられん」 しかし、鎖がぬれること、それが狙いだった。 「シリウス!」 「!?」 男が驚いて、前を見たとき、そこには彼女のほかに、もう一人。 銀髪の少年が前で手をクロスさせて暗唱していた。 「ええ、いきます!」 “モノボルト” ゴゴゴゴ、、、ホールの高い天井に黒い雲が登場したと思うと… バチバチバチ!! 数多のいかづちが迷うことなく男へと降り注ぐ。 ただでさえ金属は雷をうけやすいのに、天井まで水しぶきを上げて電気の通り道を作ったのだ。 数万ボルトの電圧が直接ながれこんでいく。 「ぐぅぅぅぅぅ」 男は、フェンリルで薄い水の膜をはり、電気をうまく逃がしているが、 鎖には数万ボルトがおもくのしかかる。 「いまよ!」 バリバリバリ、、、ガキィィン!! 私が渾身の力で上から振り下ろした剣は、鎖も水の膜もつきやぶり、男の短剣とぶつかり合う。 「グゥゥゥ」 「はぁあああ!!」 力の拮抗で、激しい光が拮抗面を中心に光り輝いていた。 「いっけ〜、ティアさん!!」 シリウスはそれをみまもり、声をかける。 「あらまぁ、ターゲットの貴方が観戦なんてしてる暇あるとおもう?」 「!?」 突然、背後から女の声をかんじて振り向くと、そこには・・・
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