第二十四話〜再会〜 薄い緑の光が異様な光景をさらけ出している。 事実…その部屋は神をも冒涜する研究の結果がそこに残されている。 「ふえ〜、こりゃあ…」 当たりの様子を見て驚愕を隠さずにはいられない3人。 無理もない、このような奇妙なものはみたことないだろう。 「ねぇ…この子達、ほんとに生きてるの…?」 リルムが、一つの水槽を覗き込みながら怯えた声を出す。 その水槽には…半身が焼きただれ、そこに機械が埋め込まれたような少年がういている。 片方の目は閉じられ、もう片方の目には…なにやら奇妙なものがうめこまれていた。 そう、この部屋、実験室には数々の人体実験の結果が残されている。 「えぇ…、現にさっきの狼人間も、そのこたちの成れの果て。」 私はうんざりしたような声を上げた。 「私、人殺ししちゃったのかな…?」 「いや、やらねばやられる、それだけだった、気にするな。」 ポン、と彼女の肩に手を乗せるヘブン。 そのやり取りをききながら、私の横でシリウスは険しい表情をしていた。 彼もまた、作られた兵器なのだから…。 「ティアさん、あの…僕の過去のこと、話すべきなのかな?」 ささやく様に私に意見を求めてくる彼の目は、少し怯えたような表情。 「シリウス、、、別に言う必要もないんじゃない?」 「いえ、僕もはっきりさせたいんですよ。 いつまでも記憶喪失じゃとおせないし、 何より素性がどうであろうと、みんなに認めてもらいたいですから」 ほんと、強くなったね、、、始めてあった時のあの自信のない姿がうそのよう。 「あの〜、ちょっとみんなに伝えたいことが…」 険しい表情をしながらも、彼はきりだした。 「え? どうしたの〜?」 「うん?」 シリウスを中心に、みんなが集まってくる。 「実は…、僕、記憶が戻ったんです、それで…」 「うぉおおお、よかったやねんか!」 「ほんと〜ぉ、よかったよかったっ!」 バシバシ、と激しく肩をたたかれるシリウス。 あまりのクロスとリルムの喜びように、少し戸惑いながらも微笑み返している。 「まだ最後までいえてないです、それでね、伝えておきたいのは僕の生まれが…モゴモゴ」 だが、彼の言葉はまたも最後までいえなかった。 急にヘブンの腕が伸びてきて彼の口をふさいだ。 「静かに…」 彼は周りを見回しながら剣を抜いた。 みんなに緊張の色が走り、研究室が真の沈黙につつまれる。 「隠れていても無駄だ、でてこい!」 彼の声が、シンとした研究室に響く。 それは通路のほうににも反響し、ゆっくりと消えていく。 ただ、それだけのように思えたが…。 シュンシュン! 今、5人の前、ほんの十メートルほど前に二つの影が舞い降りる。 全身黒一色のマントとフードで覆い隠した二人の男。 ドクン、私は鼓動が高くなるのを感じた。 忘れもしない、この二人わ…。 「ほ〜、俺たちの気配を完全によまれるとはね〜。」 「流石というべきか、ヘブンでしたっけ?」 私たちの捜し求めていたなぞの集団のメンバーが、今、そこにいた。 「やっと会えたわね、、、うれしいわ。」 私は、右手に剣を強く握り締め、一歩前に出た。 彼女の口元にはうっすらと笑みすら浮かんでいた。 「…ふ、もはや逃げ去った少年を見つけた今、お前に用はない」 構えることもせず、二人の男は不敵にこちらをみつめているようだ。 「なっ、僕に何の用があるっていう!?」 驚きながらも、シリウスはそいつたちを凝視する。 「記憶もないようだ、仕方がないつれてかえってからだな。」 ガキィィン!! 金属がたたきつけられる音が響く。 ティアが剣で床をたたいていた。 「うるさいっ、用があるのは私なの。 シリウスもつれていかせないし、貴方たちはここで終わらせる。」 「だ か ら 小娘には用がないのっ!用があるのはお前の持ってる剣にじゃん。」 背の低いほうの男。 「うるさい! 私は用があるのよ。 ママをよくも…とっつかまえてやるっ!」 「おい! まてよティア!」 私は、制止も聞かず飛び出していた。 ダダダダ、、、わずかな距離を初速から最高速度でふみきり、跳ぶ。 「はっ!」 そして勢いよく剣を螺旋を描くようにまわし、突っ込んだ。 時間にして2秒もかかっていない、神速の斬撃。 が、すでにそこに男はいない。 「フ、やはり所詮はその程度。 私には傷一つつけれやしない。」 「!?」 「ティア! 後ろ!」 空振りの攻撃が止まった直後、後ろから声が聞こえた。 黒くしなびる鞭が私の頭を一直線に… やばい、さけられない! とっさに、腕を頭の前で組んで防御姿勢をとった。 バシッ!! はじけるような音が顔の前で響いた。 私の体はインパクトの反対方向へ大きく吹き飛ばされ、地を擦った。 「うっ…。」 「むちゃすんなや! もう!」 すぐにクロスが走りより、治癒の魔法を両腕に当ててくれる。 優しい光包まれると共に、細胞レベルでの再生がはじまり、傷口が瞬時にふさがる。 「あの男たちは!? にがしちゃだめ!」 見ると、今は二人の男の前にヘブンが立ちふさがっていた。 シリウスを守るようにリルムも前に立ちふさがっている。 シリウス本人もいつでも魔法を打てるように身構えている。 「へ、今度はあんたか、、、前回はよくもやってくれたじゃんよ」 「混沌の魔法をつかうものがおまえたちのなかにいるな?直し方をはいてもらおうか…」 ヘブンの持つファインヒュージョナの白いオーラが強く、激しく揺らめく。 「お前の質問に答える気などない、今ここで戦う気もな。」 ブンッ!! そういい終えた直後の男の前に、ヘブンが瞬間移動したようにあらわれ、超高速で剣を振った。 ズバババッ、男は真っ二つに切れて...、いや、違う、残像が切られた消えていくのみ。 タッ。 黒ずくめの男は天井まで届きそうな水槽の上に立っていた。 「腕を上げたようだ、フ…」 ヘブンがまた剣を構えなおし、二人を凝視する。 そのとき、長身の男が腕を前に出し… パチィン! と指を鳴らした。 ズゴゴゴゴゴゴゴゴ!!! 「なっ!?」 研究所全体が揺れている!? 自身、いやそんなものじゃない。 もはや建物自体が崩壊する勢い。 「きゃああ、なによこれ、たっていられない!」 「やばいで〜、こりゃあ。」 私たち5人は床に吸い寄せられるようにたおされた。 黒ずくめの二人は水槽の上で私たちを見下ろしていた。 「まて! 逃がさないわよ…」 私は床に手をつき立ち上がろうとするも、揺れにあおられてすぐに地面にしりもちをついてしまう。 それをあざ笑うかのように二人は見下している。 「もうこの研究所は崩れ去る。 明日の夜、我々はルアス王宮に、魔道武具をいただきにいく。 おまえ達もくるんだな、その剣“セルティアル”をもってな。 ま、こないなら王宮をつぶしてから向かうだけだが。」 「せいぜい逃げずにくるんだ〜。 そのとき相手になってやるじゃん」 シュン、二人の男は消え入るように空間に解けていった。 「くそう! 逃がした…」 クロスも無念そうな表情だ。 「いかん。崩れるぞ、俺の周りの寄れ!」 ヘブンが暗唱をはじめ、足元に黄金の光を放つ魔法陣が展開されてゆく。 「きゃあ、急いで!天井が落ちてくるわ!」 ドゴオオオオ!! ものすごい音を立てて土煙が充満する部屋の天井がずれて動き出した。 「ねぇ、この子達はたすけれないの!?」 私は水槽の中の子供に目を向けていた。 いくらもう人ではなくなってしまったとはいえ…。 一番かわいそうな命たちだった。 「…無理だ。 時間がない、はやくよれ!」 みんな、ごめんね… 私は、水槽からはなれヘブンの元へすべりこんだ。 “ウィザードゲート” 黄金の光に包まれ5人の姿が消えるとほぼ同時、 天井とその上の岩盤がその研究室をおしつぶしていた。 人体実験にさせられられた哀れなかずかずの命を、一瞬に土砂の下に埋もれさせながら・・・
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