第一話〜結婚式〜



やわらかい太陽の光が、復旧し始めたルアスの町に降り注ぐ。
爽やかな風が、町を吹きぬけ、城門の旗を大きく揺らしている。

まさに、最高の天気ともいうよう。
しかし、いつもは賑わう広場にも、城門にも、今日は人がいない。

最近は仕事が増え、忙しく働く大工さえ、今日は仕事をやすんでいるようだ。
そんな中、ルアスの町の一角に、人々が群れている場所があった。

美しい白い壁に囲まれ、屋根の上には、光を受けて金色に輝く十字架。

そう、そこは奇跡的にも被害がなかったルアスの教会。
そこに、ルアス中の全ての人といっていいほどの、人が集まっていた。

構内の席に座れぬ人は、入り口で中をのぞく有様。

その、紅い絨毯がひかれた道の先に、
白い法衣を着た神官が立っている。

「いよいよ、この時が来たね〜」

入り口の隣の控え室。

顔を恥ずかしそうに紅く染める彼女、ミレィは
純白で、スカートには幾重にもビラがかさなったドレスをきている。

「あぁ。 遂にだな。」

黒い長髪とは対照に、全身真っ白なタキシードに身を包み、胸には赤いリボン。
鏡の前で着慣れない服をいじりながら、レヴンも珍しく緊張した顔をしていた。

「新郎、新婦の入場です!」

…司会役はスルトのようだ、明るく、大きな声が構内に響いた。

「いよいよだな…、いこう、ミレィ」

「うんっ!」
彼は、ミレィの手を引いて、控え室から真っ赤な絨毯の上へ…

「わぁあああああ!!」
構内が割れんばかりに拍手が鳴り響く。
彼らは腕を組んで、その絨毯の道を一歩一歩あるいていく。

彼らの頭の中には、今何が思い浮かんでいるのだろうか?

 出会い…
  
      そして助け合い

               惹かれあった。


今、その思いが結ばれようとしている。ゴールイン。

否、これからが、本当の始まり…。

「では、指輪の交換を…」

神官と、大勢の人々に見守られる中。

レヴンは、彼女の指に指輪を通した。
彼女もまた、レヴンへと指輪を通す。

教会の窓から入る光が、その指輪の宝石を光らせる。

二つ並んで…輝き続ける星のように。

「パチパチパチパチパチ」

鳴り響く拍手をバックコーラスに
二人は長い口付けをかわした。

今…、新たな関係として、二人は生まれ変わった。
夫と、妻という形で…。

「おめでとー!」

二人が腕を組んで、教会から退出する際に、
観客の列のなかから、ミラがミレィの肩を叩いていた。

よくみると、さりげなくザックスまで、こちらを笑いながら見ていた。

「おまえら、王宮からささやかな結婚祝いだ!」

 ドドドーン!!

ルアスの空に、大きな花火が上がった。

町中、いたるところからその花火は打ちあがり、ルアスの空をさまざまな色に染めていく!

その華麗な昼間の光さえ、なりを潜めるようなうつくしい光の輝きを、
ルアス中の人々がうっとりとしながらみていた。

 やっぱり…、俺、この時代に来れてよかったな…。
   感じたこともないほど、幸せだとおもう、この思い、永遠に…!

ルアスの歴史に残るほどの、現実を忘れさせるような華麗で、甘い日がすぎてゆく…