I WISH ・・・ 最後の戦い〜葛藤〜



  はやく…レヴンのもとへ…!

ミレィはくらい廊下ひたすらにはしっていた。
と、そのとき、微弱な気を、次の曲がり角から感じる。

 …新手の敵?! 

彼女は走るのをやめ、雷槌“ミョルニル”をかまえ、通路の壁にみをよせた。

気配は徐々にちかより…もう隣を通過するころ。

「えいっ!!」
彼女は眼を瞑り、力任せに槌を振りぬいた。

 ガキィィン!!

金属音が響き渡る。

「わっ!!」
相手も驚いた声をあげる。

 あれ…この声…

彼女は目をあけた。すると前にいたのは…

「スルト!! ミラ!!」
狂喜のこえをあげるミレィ。

「・・・あのなぁ! 急に武器で殴るかかるやつがあるか!」
ちょっと怒った表情をしながらも、安堵の顔をするスルト。

「無事でよかったわね…ミレィも。」
少し笑いかけるミラ。

「よかった〜無事で」
再会の喜びをかみしめている三人。
しかし時間がそれを許してくれなかったようだ。

 ─ビシィィィィ

張り詰めた空気、そして邪悪なる魔力が不意に感じられる。

「スルト! ミラ! これ…」

「あぁ、行ってみよう、誰かが闘っている、すごく邪悪な気を感じるぜ…」

三人は邪悪なきの源へ駆け出した。



ミルレス城、王の間。

 ガキキキキキン

剣と剣がぶつかり合う音がこだましていた。

あるときは天井で、次の瞬間には遠く離れた空中で。
部屋の中を縦横無尽に走り回りながら、その音はひびく。

あまりにも動きが速いためか、二人の姿は肉眼では見えず、
ただ金属音と、うなる風で現在の位置を確認できる程度である。

 ドゴッ!!

どちらかが床に叩き落されたようだ。

床の穴からゆっくりと立ち上がったのは…ガルフラントのほうであった。

「グ…貴様…」
すでに全身傷だらけである。

そのまん前に、レヴンが軽く着地する。

その瞳に映るのは…先の見えた未来のみ。

そう、勝利の瞬間までのカウントダウンのように。

「…もう、終わりにしよう。
貴様に殺された人の魂、これ以上待たせるわけにはいかない…」

彼の持つ双剣が、強いオーラを発し、光り輝く。

これで、この戦いも、仇討ちも終わりだ…

 ビュン!

今、剣は振り下ろされた。

が、振り切ることはなかった。

「レヴン!!」
入り口から、高い声が響き渡った。

「ミ、ミレィ…」
その隙を、ガルフラントはみのがさなかった、鋭い斬撃が、レヴンをおそう。

「ちっ!」

大きく後退し、その剣を避けた。

「ククク…どうした? “深淵の闇” 我を殺すのではなかったのか?」

 く… この姿を、、、この邪悪に染まった姿を…ミレィの前にさらしていいのか…?

彼の心に迷いが生まれる。

そう、かっての自分なら、想像だにしなかった迷いが。

「レヴン…」

彼女もまた、レヴンの異変を感じ取っていた。

普段から、魔力の威圧などは感じていた、しかしこれは…

感じたことない、殺意、そして狂気をまとった彼の姿。

 いかん…今は奴を倒すことだけ考えないと。

 ─見られたくなかった、こんな姿を…、ましてや彼女の前で、人を殺せるのか?

 なに怖気ついてるんだよ! これが俺達のほんとのすがたじゃないか!

 ─違う、もう彼女のため、
 一度は封印され、二度とあけてはならぬ凶気だったんだよ。

 だまれ、こうでなければやつは倒せない、そうだろ?

彼の心に、一瞬二つの声が響いた。

「迷ってる場合じゃねぇええ!!」
自分にいい聞かせるように、彼は剣をふりあげる。

その時…!


 ゴォォォォォ!!

強烈なプレッシャーと魔力が、ガルフラントから発生する。

 ちぃ、しまった! 迷ってる隙に!

 ブォン!!

猛烈な勢いで剣が振られた。

「がっ…」

それを双剣でうけとめるも、大きく弾かれふっとばされる。

レヴンのテリトリーにもかかわらずこの威力。

「クククク、ハハハハハ!!
何をしていたのかしらんが…俺を本気にさせる時間をくれるとはな…」
ガルフラントの周りには、凄まじい魔力が渦を巻き、大気をはげしく震わせていた。

 ちぃ…、開放されたか。

「レヴン!! “リカバリィ”!!」
魔法を唱えつつかけよってくるミレィとスルト、ミラが後に続く。

「ばか、みんなくるな!」

「ふ…、邪魔なゴミどもが…」
彼がさっと手をふった。
 
「きゃあああ!!」
ミレィは見えない壁に突き飛ばされた。

ガルフラントとレヴンを、ドーム状の結界が張られ、遮断された。

「そこで、こいつが死ぬのを見物してろ、ククク」

「レヴンーーっ!!」

 ブンッ!!

王の姿が消えたと思うと、次の瞬間にはレヴンの前に現れた。

 ズガガガガガガ!!

 こいつ…俺の空間魔法を…!

先ほどのレヴンより早い斬撃が、レヴンをおそった。

耐え切れず、ふっとんだところに更なる追い討ちが来る!

彼の体に、深い傷が刻まれていく!

「ックハハハハ!! 手も足も出ないのか」

「グ…てめぇ…!」

立場が逆転した。

レヴンの支配空間の力さえも突き破る斬撃が、ふりそそぐ。

これが、創造の力を全解放したガルフラント。

一方的に追い詰められていく“深淵の闇”

「レヴン、レヴンーっ!!」
結界の外側で、ミレィが泣き叫びながらその光景を見ている。

「スルト、なんとかして!」
ミラもさけんでいた。

「はぁああああ!!」

“ピアシングスパイン”
彼の空間をも切り裂く超高速の突きのラッシュが結界にぶち当たる。

が、

 ドンッ!!

「つ…」

「スルト!」

吹き飛ばされたのはスルトのほうだった。

この結界、硬すぎる…。

「うぅう… レヴンっー!!」

 私は…ここで泣き叫ぶことしかできないの…?

 だれか、私をあそこにいかせて…!

絶望感に支配されながらも、彼女はただ叫んでいた。

「やれやれ…一方的だな。」

「えぇ…、このままじゃ彼、危なそうよ」

「!?」

不意に、彼女の脳裏に声が響いた。

そして、眼を開くと、前には光に包まれた、二人の少年、少女がたっていた。

「貴方達は…?」

「俺? レイツァーだ。」

「私は…クレイっていうの。」

 !?