I WISH ・・・ 最後の戦い〜対峙〜 カシャッ レヴン、いや、“深淵の闇”は血のついた大剣をぬぐい、剣を鞘に収めた。 足元には、骸なき血の海が広がっている。 否、骸がみえないほど、微塵に切り刻まれた死体というべきか。 彼が、歩き出そうと片足を上げた瞬間だった。 ─ズドォォォ 「!?」 空気が、すごく重く感じる。 否、強烈なプレッシャーがあたりにみちている。 「ククク…どうやら戻ったようだな、“深淵の闇”に クククク…」 虚空から声が響く。 そして、彼の目の前の空間に立てに大きな亀裂がはいり、 その深き闇の空間から男がでてきた。 「…ガルフラント…!!」 そう、そこには、金色の長髪をなびかせ、黒い鎧、紅いマント、 そして血のように紅い刀身をもつ剣“ベルセルク”をもった男 “王”ガルフラントがゆっくりと現れた。 「ククク…また会ったな。 前にあったときはひどく弱弱しい気だったが… ヴァンをも倒す力を得るとは…ほめてやろう、ククク」 それでこそ、その力、喰らい甲斐があるのだが。 ククク 「フ…、そうだな、もう前の俺とは違う…。 俺は“深淵の闇”!全てに滅びを誘うもの、貴様も、今日ここで滅する!」 クレイ、レイツァー、そして死んでいった者達。 今、俺がここでおまえたちの仇を討つ! ブァアア!! レヴンの体から、突き刺さるような殺気が放出される。 常人なら、この殺気にあてられるだけでも死にかねない。 「ククク…気持ちのよい殺気だ、よかろう、その力みせてもらおうか」 スッ、 音もなく、二人は剣を構え、対峙する。 それは一瞬にも、永遠にも思える時間だった。 ポチョン! “血桜” でとびちった、ヴァンの血が、天井から滴となって、落ちた。 それが、最終決戦の幕を開く合図だった。 ガキィィィン!! 動いたのは闇。 一歩で、王の間合い間で踏み込むと、右手に持つ剣を遠心力を着けて叩き込む! それをなんなく、“ベルセルク”でふせぎ、力をこめ、弾く。 だが、それだけは終わらない。 ブンッ レヴンの左手に持つ剣が、後退しながらも足を狙ってなぎ払われる。 それをたやすく、跳躍してかわす王。 しかし彼の体が宙へういたときだった。 “瞬光” 右手の剣“セルティアル”で音速を超える突きが繰り出される。 と同時に王も蹴りを繰り出す。 ブスッ それは王の首を掠っていき、蹴撃はレヴンの腹を捉え、お互いが吹き飛んだ。 またも、はじめの位置にもどった二人。 「ククク…ハハハハハッ」 二人の笑いが暗い部屋に響いた。 ─この命のやり取り、たまらねぇな…! 二人はいつのまにか、声を上げてわらっていた。 「ククク…おもしろい、おもしろいぞ“深淵の闇”よ、クハハハハ!!」 お遊びもここまでだ…。 彼が纏うオーラが膨大に膨れ上がる。 それとともに、 手に持つ真紅の大剣“ベルセルク”に邪悪な黒い光がまとわりついてゆく。 「・・・」 レヴンは黙って、その光景を見つめていた。 「!?」 先ほどまでより数倍はやいスピードで、ガルフラントがつっこんできた。 ガキン、ガキンッ!! 「ち…」 光速の斬撃のラッシュが、レヴンの剣圧をおしのけ、レヴンを壁に押していく。 烈火のように激しい連続攻撃、レヴンはただ防ぐだけで精一杯。 「ククク…くらえ。 “猛衝斬”」 「!?」 大剣“ベルセルク”の、邪悪なオーラが、 瞬間的に極度に膨張したかとおもうと、レヴンの剣に触れた瞬間。 ドゴオオオオ!! 大爆発を起こした。 「ち…っ、 うぜぇ!」 爆発の衝撃は、全て身に纏う闇で相殺したが、 レヴンの腕には大きく痺れが残り、一瞬の隙が生まれる。 ブンッ!! 不意に、ありえない方向から打ち下ろされる斬撃。 それをなんとか、跳躍することで避けるレヴン。 「ククク…、愚かな」 バシッ!! 彼に、王の強烈な回し蹴りがきまる。 「ぐ…」 そのまま地面に叩きつけられそうになり、腕を伸ばして床を強く押した。 腕の力のみで、後ろへ…! ガンッ!! だが、それを読み、 まちかまえていたガルフラントの剣撃を頭にうけ、吹っ飛んで壁に激突した。 激突の衝撃で壁に穴があき、粉塵が舞い飛ぶ。 「…哀れな姿だな、“深淵の闇”よ。」 レヴンは、剣を杖代わりに突きたて、立ち上がった。 体を取り巻く闇が、攻撃を防御しているもの、 全身にダメージを負い、頭からは血がたれていた。 「・・・・」 そのような状態になりながらも、何かを呟きながらガルフラントに向かってゆく。 そして、ガルフラントのまん前で立ち止まった。 自ら死を選んだように見えるその行動の意味は…? 「・・・みずから死を選ぶか! 哀れだな、そのような姿見たくもない、すぐに終わらせてやる!」 ガルフラントは渾身の力を込めて、剣をふるった。 その斬撃は、あまりの速さに衝撃波を後ろへつくりながら、一直線にレヴンの首へ… ・・・彼が、ゆっくりと剣のほうへ手をかざした。 「!?」 ガルフラントが、驚きを隠せない表情をつくった。 渾身の力で振るった剣が…レヴンの手の掌の前でとまっている! それは時が止まったように、完全に停止し、 王が力をこめて動かそうと思ってもびくともしない。 スッ… レヴンが、今度は王の胸元へ手をかかげ、ゆっくりと上へあげていく。 すると、彼の体も宙へ上がっていく。 「ぬぅううう」 ブンッ!! 彼が手を振りぬくと、ガルフラントの体は宙をまい… ドガアア!! 壁に激突してもなお、その推進力は消えず、彼の体は壁に沈んでいく。 ビキビキビキ!! 壁が砕ける音が響き、その崩れ落ちる土砂の中を、王は膝をついてレヴンをみた。 「ググ…貴様。 何を… ! そうか…“創造の力”の全解放か…」 「・・・“己の支配するテリトリーの創造” もてる力すべてをまわさないと、貴様を滅ぼせられないようだからな。」 冷ややかな視線が、彼を見下した。 “己の支配するテリトリーの創造” それは、己が完全に支配する空間を、 小範囲ながら自分の周りにつくりだし、その空間の中のものをすべて支配する。 それは物理的法則や、時間さえもこえて・・・ グ…あのガキ… 俺も解放しなければ… 王は、心の底に眠る強大な魔力にアクセスしはじめる。 しかしこれは、相手に大きな隙あたえることになるため、普通は使用不可能な技…。 己の慢心が招いた苦境だった。 「させない!」 ギィィィン!! 「ぐっ…がきがぁああ!!」 ひとたび、今の“深淵の闇”に近づいたら、斬撃の地獄にはまることになる。 レヴンのテリトリーにはいりこんだ彼の剣は動きを止められ、 そして時をレヴンのみ早めて、 通常では、絶対に乗り越えることのできない、 物理的法則をもこえた速さの剣撃がくりだされる。 もはやみえる、見えないのレヴェルじゃない。 常にそこに存在し続けるような速さ。 ガガガガガガ!! レヴンの剣が、王の鎧をけずり、身を裂く音がこだまする。 お、おのれぇえええ!!こんなガキにこの俺がここまで…、万死に値するわっ!
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