I WISH ・・・34 〜決戦前夜〜


カン!カン!

眠りから目覚めたばかりのルアスの町に、職人のハンマーの音が響き渡る。

そう、それは城の一角から・・・。

「…どういうつもりだ? これは・・・」
寝起きで不機嫌そうなザックスが、朝早くの面会人にあっている。

「恐れながら申し上げます、あれは先日、
町を襲ったゴーレムの魔砲の原理を応用した兵器であります。」
マイトが設計図を差し出しながら頭を下げた。

「なにっ!? そんなもんつくってどうする・・・」

「俺達が・・・ミルレスまでいって、ガルフラントを倒す。」

「!?」

「正気か・・・? レヴンよ。
いくらお前といえでも・・・、そもそも近づけもしないぞ、ありゃ。」
呆れ顔で聞くザックス。

「だからこそ、この私が設計したこの砲であります、
これで敵の魔法障壁を吹き飛ばします。」

「ほぉ・・・、まぁいい、いきたいならいくがいい。」

「あぁ、それより、相手も今度で決めるつもりで来るだろう・・・
町を守りぬけよ、人類最後の希望の地を」

「・・・無論だ。」

そう、エイリーンの秘策とは・・・通称“学士”マイトをつかうこと。
以前から、妖しげな研究をしていることを彼女は知っていた。

そして昨日の晩、すぐに呼び出して・・・今に至る。

ミルレスへ砲身をむけ、着々と建設されていく。

はたしてこれで敵の城壁を打ち破れるのか・・・?

昼間のうち、5人はそれぞれ必要なものを買い揃えた。

何が待ち受けるかわからない敵の本拠地へ乗り込むのだ、準備と覚悟がいることである。

それでも、もしかしたら最後になるかもしれない、ルアスの一日は過ぎていく・・・

ルアスの町が眠りにつく夜。
一人の騎士が闇に包まれた町へでてきた。

 は〜、もしかしたらこの街を見るのも今日で最後か・・・

彼は立ち止まって、周りを見回した。
綺麗に整った民家、そして豪華で大きい王宮がみえる。

彼はそこに座り込んで考え事をしていた。

 コン、コン
彼の後ろから足音が響いてくる。

そして彼の首に手がのびて・・・・

「わっ!!」
彼は大声で叫んで飛び上がった。

「ミラ! なんでここに・・・」

手をだした本人、ミラもあまりのスルトの驚きようにびっくりした。

「スルトさんが出て行くのが見えたから・・・ついてきちゃった。」
ミラは彼の隣に座った。

「ミラは・・・こわくないのかい?」
しばらく沈黙が続いた。

「・・・それは・・・怖いよ、けど、行かなきゃ・・・」

「君は残っても・・・、僕も命がけになるだろうし・・・」

「ううん、貴方が行くから私もいくの。
あの時のミレィと同じ気持ちよ、あのこみたいにうまく表現できないけど…
私もスルトといっしょにいたいから」

ミラがそういって笑いかけてきた。

「ミラ・・・」
彼は、ミラをそっと抱きしめた。

二人は夜が明けるまでそのままずっと寄り添っていた。


同じころ、レヴンもベットの上で夜空に浮かぶ月を見ていた。

 ここへきて・・・いろいろなことがあったな・・・

そんなことをぼんやり思い浮かべているようだ。

 トントン!

急に扉をノックする音が聞こえた。

「ミレィ・・・ねむれないのか?」

戸を開けると・・・ミレィがたっていた。

少し目の辺りを赤らめながら。

「うん、ちょっとね・・・ねぇ、はいってもいい?」

「あぁ」

二人は、ベットのふちに腰をかけて寄り添って座った。

「ねぇ・・・いよいよ明日だね・・・」

「あぁ・・・、もう、終わらせなきゃならないんだ・・・」

「こんな時間まで・・・レヴンは何を考えていたの?」

「う〜ん・・・ 今までのこと、思い出してたんだ。
始めてこの部屋でおきた時のこと、初めて狩りに行ったときのこと、
町を魔物から守ったこと・・・、なにより、ミレィのこと、考えてた。」
すこし笑みをつくって、彼女の肩を抱いた。

「私も・・・私もだよぉ・・・」

彼女の手がレヴンの肩を強く引き寄せる。

「ねぇ・・・ほんとしんじゃだめだよ・・・
私、貴方がいなくなったら・・・生きていけないよ・・・」
涙で目を閏わせて、彼の瞳をみていた。

「泣くなよ・・・、俺もだ、一緒に生きて帰ろうな・・・。」
彼女の涙を優しく拭きながら、髪をなでる。

「約束だよ・・・、全部終わったら…、私と・・・ ね?」

「あぁ・・・俺もそうしたい。」

「レヴン・・・」

「ミレィ・・・」

そのまま彼らは抱き合い、唇を合わせながら倒れこんでいった。

月の光が、彼らを優しく包み込んでいる・・・