I WISH ・・・29 〜闘う意思〜 その日の朝、ミルレスからきた聖職者もふくめ、 現在ルアスにいる聖職者全てが集められた。 王宮前の少し高い台の上、レヴンと、それに寄り添うようにミレィの姿が見える。 「みんな、聞いてくれ。」 風の魔法をつかってレヴンの声は王宮の全ての人に届けられる。 「今、皆知ってのとおりルアスに山のように巨大な魔物、ゴーレムがむかってきている。 昨晩、スオミの町も滅ぼされた。 ここで、君たちを呼んだのは、この町を守るための力を貸して欲しいからだ」 シンとした雰囲気の中、レヴンの声だけが響いている。 「あの・・・私たちがどうすれば・・?」 「俺たちは戦闘は苦手なものばかりだ・・・」 なぜ、聖職者が呼び集められたのか、みんな疑問におもっているらしい。 「ゴーレムは町一個楽々飲み込むほどの巨大な魔力を持っている。 そこで、聖職者の方々の力を借り、巨大な魔法障壁を以ってそれに対抗する!」 魔術師の魔力と、聖職者の癒しの魔力はこらいより反発する性質を持つ。 これを利用して魔法を防ごうという理論だ。 「お〜」 「ゴーレムの射程範囲になるのは多分明日の朝、 それまでに各自準備をしておいてくれ。」 こちらも不安そうな顔をして人々は散っていった。 「レヴン・・・私たち大丈夫なのかなぁ・・・?」 さすがのミレィも不安そうな顔をしている。 「あぁ・・・俺もいるし、 他の聖職者さんたちもいるから、防ぎきれるとはおもうが・・・」 そういうレヴンも少し不安な顔つきである。 なにしろ、レヴンは実際にそこまで大きいゴーレムをみるのははじめてだからだ。 ふ・・・小型のゴーレム軍団なら燃やし尽くしたことがあったな・・・ 俺一人のために大げさなもんだったが。 思い出して、レヴンは苦笑した。 「ねぇねぇ、王宮のお兄ちゃん」 みると、紺色の服を着た幼い聖職者の女の子がレヴンをよんでいる。 「ん? どうした?」 「聖職者達の力が要るって・・・ 私でも何か役に立つのかな?街を守れるのかなぁ?」 「!?」 「あぁ・・・もちろんだ、よろしく頼むぞ」 「よかった、がんばります♪」 少女は少し笑みを残して去っていった。 「・・・あんな小さい子でも、この町を思って力を貸すといっている。 きっと神がいるとすれば・・・守ってくれるだろ」 笑いながらミレィの頭を軽くこついた。 「うん・・・そうだよね、私達ががんばらなくっちゃ・・・!」 「あとは騎士団がうまくいけばよいのだけど・・・」 そのころ、ルアス王宮騎士団は全員召集がかけられていた。 今、騎士達の前に一人の男、リヴァルスがたっていた。 「皆、よくきけ! 俺達王宮騎士団は明日、 山のような魔物、ゴーレムに特攻をかける!」 「!?」 「まぢかよ・・・」 騒がしくなる騎士達。 「だが、今回の戦いは正直いって、命の保障はない。 もしかしたら全滅もありえるかもしれない。 だから強制はしない、志願するものだけ俺について来い」 場がシンと静まる。 いつもの任務にも危険は伴う。 しかし、今度のことはまさに特攻、命の保証はないからだ。 騎士といえども、家族もあれば恋人もいる。 皆、誰も口を開かない・・・ が、その時。 「団長、僕は志願します。」 騎士達が一斉に振り向いた。 「スルト・・・」 「僕も死ぬのは怖い・・・、 大切な家族や仲間を残して逝くことがどんなに辛いことか・・・ みんなもかんがえてるとおもう。」 「けど、僕達騎士団は、僕達の大切な人だけじゃなく、 この町にすむ、全ての人々も守らなきゃならない、義務もあるとおもう。」 「今は・・・僕達が戦って、 大事な人を守らなきゃならないんだ!だから僕はいくよ。」 しばらく沈黙が続いたが・・・ 「俺もだ! 誇り高き騎士として、町を守りきるぞ!」 「お〜!」 スルトのやつ、急に化けやがった。 その様子を満足そうにリヴァルスはみていた。 ついに騎士全員が立ち上がり、戦う意思を示している。。 「よし、明日は騎士団の大見せ場だ! 魔物なんざぶっ壊してやろうじゃないか!」 「お〜〜!!」 その喚声は鳴り止むことなく騎士団修練所から響いていた。 ついに、明日、この町を中心に第二ラウンドが始まる・・・!
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