I WISH ・・・28 〜足音〜 強烈な光が窓から飛び込んできて、王の間を昼間のように照らしたかとおもうと、 一瞬でもとの闇へともどっていった。 「陛下! たった今スオミが・・・」 「もう、見ていた。次はここへくるぞ・・・」 ギリッ 歯を噛む音がする。 ・・・これが貴様やり方か…?ガルフラントっ!! 無力な市民まで巻き込んで殺すというのか・・・ 「おい! 全宮廷職員をよびあつめろ、今すぐにだ! あの土塊を壊す・・・!」 宮廷の会議室に、全ての分野の専門家があつめられていた。 「今日、諸君らを招集したのはほかでもない、 スオミをおそった魔物に対する対応を協議するためだ。」 今日はザックスも参加している。 「スオミが襲われた・・・?」 「相手はどんなものだ?」 「あ〜うるさい、おい! スオミ村長エリク、説明してやれ。」 エリクが席より立ち上がり、話し始めた。 「・・・我々スオミ魔術師団は、夕方、 山のように大きい魔物と町を守るために戦いました・・・ 町に大魔法陣を描き、万全の対策をもって全市民で迎え撃ちました・・・ が、結果は魔物に傷一つあたえられず・・・スオミは・・・ 敵は巨大で、圧倒的過ぎる魔法をももっています・・・ 親父、ガントでもかないませんでした・・・」 俯いて座ってしまうエリク。 それを片目に議会は大騒ぎになった。 「なんと! そんなに大きいものが!?」 「あのガント氏が・・・」 「スオミが全滅だと!?」 「終わりだ・・・」 「今はそんなことで時間を潰している暇はない!」 ザックスが机を思いっきり叩いた。 「次は・・・奴はここにくる。多分明日の朝にはな。 何か対抗手段を今から考えねばならん、何か意見わないか?」 議会がシンと静まった。 数は少なくても瞬発力的戦力は一番のスオミの魔術師たちでもかてないととわ・・・ 何も抵抗手段がなかった。 騎士団団長が悔しそうな顔をして俯いている。 政治を司る長官どもは今にも逃げ出しそうな感じだ。 このまま首都まで捨てて逃げるのか・・・? 「おい、ザックス。何もないわけではない。」 一番後ろの席で声が上がった。 「貴様、陛下に向かってなんと無礼な!」 「よい、なにか対抗手段があるというのか?レヴン、創造の力を持つ者よ」 声を上げたのはレヴン。となりでレイチェルがびっくりしたような顔をしている。 「あぁ・・・みんなもよくきいてくれ。 あれほど巨大なのは見たことないが・・・あれは創造された魔法生物だ。 土砂の塊を魔力で動かしているにすぎん、ゆえに魔法も物理的攻撃もきかない」 「ではどうしたらいいんだ・・・?」 「あの生物の"核”いわば心臓のようなものを壊せばいい。 体内に侵入してな・・・」 「!?」 「なんと・・・」 ざわつく会議場。 「だが、それよりも厄介なのはその魔法。一撃でもくらえばこの町も終わりだ。」 淡々とレヴンは話し続ける。 「そこで、ルアス中の聖職者をあつめてくれ。 俺とそいつらで魔法障壁を張る。」 「ほぉ・・・それで防げるというのか?」 「多分・・・何度もは無理だが・・・、 聖職者たちが防いでるうちに、攻撃隊が奴の体内に侵入。"核”を壊せばいい」 「よかろう・・・それしか方法はあるまい、誰か攻撃を仕掛けるものを決めねばな」 「それは俺たち騎士団がいく!」 リヴァルスが吼えた。 「今度こそ、町を守るのは俺たち騎士団だ。」 「ふ、よかろう。リヴァルスよ、お前たちは、騎士団から攻撃隊をだすがいい。 レヴン、お前の言うように、聖職者をかき集めるぞ。 では、解散。」 ぞろぞろと会議場から人々が出て行く。 皆、不安そうな顔をして。 騎士団長、リヴァルスも神妙な顔をしてでてきた。 ほんとに俺たち騎士であれをなんとかできるのか・・・ いや、俺たちがしなければ誰がする? 騎士の誇り、みせてやらねばな・・・ 「リヴァルス!」 振り返ってみると、レイチェル、その隣にあの生意気なガキまでいやがる。 「・・・どうした? 俺に何か用か?」 「あぁ・・・、一つ渡しておきたいものがある。」 そういってレヴンは一本の巨大な槍を差し出した。 淡く紅の光を放つ刀身に、メンタルロニア文字で何かが書かれている。 柄には炎をイメージさせる装飾がなされている。 「なんだ? これは?」 手にとってながめてみる。 うっ、なんて重さだこの槍・・・ 「やつの“核”を突くには魔力のこもった武器が要る。 それを渡しておこう。銘を“サラマンダラ”魔力を炎とする槍だ。」 「ふん、生意気なガキだな・・・、だが助かる。もらっていこう。」 彼はそれを肩から吊るした。 「あぁ・・・俺は聖職者達とともに防御に回る。たのんだぞ・・・」 こうして、レヴンが創造した武器はリヴァルスに渡された。 これから、一番過酷な戦いを強いられるだろう者のもとへ。 はたして騎士団、いやルアスの運命は・・・? ドシン、ドシン! 確実に、その足音はルアスへと向かっている。 地上のものを全てなぎ倒し、圧倒的な威圧感をもって・・・
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