I WISH ・・・11 〜創られしもの〜



 ─キャアアア  逃げろ! お母さん〜〜

ルアスの町は、市民の叫びと騒ぎで満たされていた。
ほんの30分ほど前、正門から災いが進入してきた・・・

それは巨きく、そして禍々しい。

 巨大な4つ足の生物であり、とても巨大な顔がついている。

 民家4軒ほどはあろうか、、、その大きさ。

 体から生える体毛は蛇を思わせる、先端についた顔が舌を出している。

 するどい爪は石で舗装された道に大きな爪あとを残していく。

─ズドーン

また、罪もない人々の民家が一踏みで潰されていく。

神は人を見捨てたのか

いや、これはもしかしたら神がつかわせた滅びの使者なのか・・・?

圧倒的な力を持って町を蹂躙していく。

「どけどけ!」

槍を構えた騎士、リヴァルスが、
進行方向と逆に逃げ惑う人々を掻き分けながら進んでいく。

魔物は、一軒の潰れた前で「食事」をしている最中だった。

騎士の尋常なざる殺気に気づき、巨大な顔を向けたとき、
その口には、女性の首のない上半身がはみ出ていた。

「てめぇ・・・好き勝手あばれやがって・・・死ねぇぇぇ!」
怒りで逆立った髪が彼の起こす風にゆれる。

ものすごい勢いで、彼は魔物に突進する。そして・・・

─ピアシングスパイン!!

槍をくりだす彼の腕が、無数にダブって見える。

狙いは魔物の城壁ほどの高さと太さはあろう前足。

魔物の皮膚にあたったやりは、確実に無数の大きな穴をあけていく。

ブンッ

ものすごい勢いで、魔物の爪が彼に襲い掛かる、が、空を切るにおわった。

跳躍で後退した彼。

 あれだけ喰らわせば、もう左の前足は死んでいる。 動きは封じれるだろう。

「!」

リヴァルスの攻撃であいた穴が、外側から徐々に再生され、跡形もなくなくなった。

 ・・・マジかよ!

魔物から大量の触手が群れを成して飛び出した。

その一つ一つについた眼は、確実に彼を捉えている。

「はやい!」

リヴァルスは瞬時に横へ跳んで回避するも、
後ろから触手が回り込むほうが次に彼が動くよりはやかった!

「グッ…」

彼は触手につかまり、吊り上げられた。

王宮一の彼の馬鹿力をもってしても、触手はきれない。

ゆっくりと巨大な牙が迫ってくる。

「ウィンドバイン!!」
鋭い風の刃が、彼に絡みつく触手の根元を切り裂いた。

リヴァルスは2メートルほどの高さ地面におとされた。

そして瞬時に後ろへ跳んだ。

「大丈夫?! リヴァルス。 誰か救急班よんできて!」

魔法を放ったのはレイチェルである。

再生した触手が、今度は彼女を捉える。

まるで一つの生き物のような動きで彼女に迫る触手の群れ。

彼女は手に魔力を込め始める。

体中から集められしそれは渦を巻いて球となる。

「ビックフレアバーストっ!!」

彼女はそれを投げつけた。

凄まじい熱を放つ大きな火球が群れを迎え撃つ。

彼女へむかっていた触手は、完全に灰に成り、音もなく崩れていく。

しかし、また燃え尽きた後から、高速で一つ一つ再生していく。

蛇のように頭をもたげ、また群れを形成していく。

これで体の一部なのだから、全身の体毛をまわせばどうなるのか・・・

彼女は背筋が寒くなるのを感じた。

「ししょ〜う! うわ、なにこれぇ! 気持ち悪い。」

「なんだこれ…よくも町を・・・」

「待ちなさい! 貴方たちのかなう相手じゃない!」

怒りに任せて飛び出そうとするスルトをレイチェルが抑える。

その時、脳に直接響くような声がきこえる・・・魔物から。

「無駄ダ・・・ソノヨウナ攻撃、我ニハツウジン。
大人シク喰ワレルガイイ・・・下等生物ドモ・・・」

「!? 喋れるのかこの魔物・・・」
リヴァルスが槍を構えながら一瞬レイチェルをみる。

「そうみたいね・・・話せても、説得して大人しく返すなんてできないだろうけど。」

「こんな生物がいたなんて・・・どんな記述にものっていないぞ・・・!」
マイトが腰を抜かしながら見ている。

「生意気いってんじゃねぇよ、たかが「兵器」のくせに。」レヴンの声が響く。

「!?」みんなが驚いてレヴンをみた。

「そう、アレは俺の時代・・・
今ではメント文明とよばれた時代の戦争兵器・・・
魔力により創られし、「chimera」だ!」

「!? レヴン? あなたメント文明からきたっていうの・・・?」

「き、、キメラ?」

「合成獣だよ、色々な生物がまざっていて、すさまじい回復能力を持っている。」

「・・・何故我ラヲシル・・・?

  ソノ魔力・・・我ト同ジ時代ノ人ノモノ・・・

  ダガ、失敗作ドモト我ヲ同ジトオモウナ。

  「創リ主」デサエ、我ヲ止メルコトハデキナカッタ。

  ユエニ、「時ノ狭間」ニフウジラレテイタ!

  ヤット、、、自由ニナッタノダ・・・

  モハヤ我ヲ止メルモノハイナイ!

  貴様ノ魔力ニミチタカラダ、クロウテ我力トシテヤル!」

また、頭にあの声が響く。

キメラが、レヴンへ向かって歩みよっていく。

「フン、化物なぞに食われてたまるかよ・・・」

背中に背負った鞘から剣を引き抜いた。

青白い光が剣を取り巻く・・・

「レヴン!」心配そうな顔をしたミレィと目があった。

「・・・大丈夫だ、俺は負けない。 俺が倒すから後ろへ下がってろ!」

 ─守り抜く!

光り輝く大刀をにぎりしめると、瞬時にキメラの頭の前へとテレポートする!

 一刀流 「月光」!!

剣が分身したようにダブって映る。
そのままキメラの頭に剣を縦に振り下ろした!

 ズザザザザザザッー!!

剣よりルナスラッシュのような闘気が発した、しかし、桁外れに大きい!

魔物の身長をも上回る巨大な三日月型のオーラは、
魔物を貫通し、そのまま直線状にある民家も城壁も縦に貫通してみえなくなった。

キメラは頭から尻尾まで、真っ二つに両断されて、左右に崩れ始める…が

両断された肉体から、紐のような肉が無数に出て、
絡み合い、またもとの姿へともどっていく。

「我ハ不死身ナリ・・・」




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キメラは空想なのでイメージし辛いとおもいますが^^;
作者自身は、巨大なライオンで、体毛が全部蛇になったようなイメージでかいています
(神話だとライオンの頭にヤギの体と蛇の尻尾なんですが、迫力が出ないので全身へ蛇体毛!笑

キメラの言葉はちょいよみづらいとおもいますが勘弁してくださ〜い^^;


独自に管理人が調べた結果・・・ ギリシャ神話に登場する想像上の動物: 頭がライオン、胴がヒツジ、尾がヘビ。 だ、そうです。 正確には、キメラは化け物以外に、意外と日常にある物もあります。 果物の品種改良なんかも、キメラの一種です。 二つ以上の異なった遺伝子を組み合わせて作ることを、キメラと言うようです。 以上、無駄知識でした__;