I WISH ・・・12 〜理由〜


「チッ…やはりあのくらいじゃ滅ぼせないか。」

 ─少々町の中で使うのは危険だが…両断してもだめなら、微塵に切り裂くのみ。

「マジかよ・・・本体を両断しても再生しやがるのか・・・」

リヴァルスが呆れた表情でその光景を見つめていた。
うっすらと諦めの笑みすらうかべて…

「師匠〜、あんなの倒せるのか?いくらレヴンが強くても・・・
いくら攻撃しても再生するんじゃ打つ手がないんじゃ・・・?」

「まだ、わからないわ・・・、
レヴンの魔力の波動が上がっている。なにかやるつもりね。」

「レヴン・・・」

 ゴォッ!!

キメラの爪がレヴンを切り裂くべく空を走る。
巨体には想像できないほど、機敏で、すばやい動きで突進していく。

民家や道路の破片が大きく吹き飛ぶ。

─魔導剣 ストームシールド!

レヴンは風を纏って、空へ飛び上がる。
またも空しく、キメラの爪は空を切った。


「微塵と化せ!大魔法ースラッシュ・トルネード!!」

─ブォォォォォォ!!!

キメラの周りの空間に、突如に風の障壁が発生する!
高速で、そして鋭利に流れるそれは 触れるもの全てを切り裂いていく!

そして円を縮めるように風が中心へ収縮していく。

風が中心でぶつかり合い、相殺してあたりに突風がひろがる。

その中心にみえたものは、微塵へ切り刻まれた肉の塊だった。

「やった、木っ端微塵だ! あれならいくらなんでもキメラとはいえ、再生ふ・・・」
スルトが言いかけた言葉をもう一度胸に押し込み、唾を飲み込んだ。

肉塊が、、、脈を打ちながら集合していく!

「チ、、、まだ生きてやがるのか。」

地面に降り立ったレヴンは、その光景を見つめていた。

 ふぅ・・・あれを受けてもまだ再生できるか…ほんと、厄介な兵器だ。

冷や汗をかいている自分にきがついた。

まだ目の前の「肉の塊」は蠢きながら形を作っていき、
元の姿へと戻るのに数分とかからなかった。

「無駄ダト悟レ・・・ 所詮人間ナド我ニ食ワレル運命ヨ・・・」

再生した触手の群れが高速で飛んでくる。

「クッ」

彼はセルティアルを手に、近づいてくる触手をきりまくった。
ただただ、延々と押し寄せる群れを斬って斬ってきりまくる。

 なにか・・・何か倒す方法を考えないと・・・

彼にも焦りが見え始める。

「!?」

触手がいっせいに引き始める。
段々と晴れていく視界の中で、
彼はキメラの口に赤黒い光が溜められているのに気がついた。

 まずい!

ドゴオオオオオオオオオオオオオ!!

その口より放たれたそれは、あたりの酸素を燃やし尽くし、
ものすごい熱量を撒き散らしながらレヴンをつつんだ。

一斉に舞い上がった土砂がひいていくと、
ひざを地面についた人のシルエットがうかびあがってきた。

「グッ・・・」

とっさに魔法の障壁をはり、直撃は避けたものの、そのダメージはおおきかった。

纏っていた服の端が熱で溶けている。

「レヴン!!」
建物の影から人が走り寄ってくる。

「ミレィ! くるなぁぁぁ!」

鋭い爪が、彼女を捉えて空をすべる。それに気づき彼女は眼を閉じた。

 私…死ぬのかな・・・

 グサッ・・・

爪は確実に腹部を捉え、大きな穴を開けていた・・・

眼を恐る恐るあけてみると、そこには見慣れた背中が見えた。

ただ・・・爪が背中から生えているのを除いて・・・

「きゃあああああ! レヴンっっ!!!」

彼女の前に、レヴンが立ちふさがっていた。

「愚カナ・・・自ラ我ガ爪ヲ受ケニ来ルトワ・・・」

爪を引き抜きぬかれた瞬間、彼はそこに倒れこんだ・・・

駆け寄るミレィ

「二人トモクロウテヤル!」

触手の群れが向かっていく。が、

「ビックフレアバースト!」レイチェルが魔法をはなった。

魔法に拒まれ、また彼らに届くことはない。

「ゴミガ・・・マダイタノカ。」

「ゴミだ? 王宮騎士団団長をなめるなよ!」

キメラの頭上に向かいの民家の2階から青い影が飛ぶ。

ーハボックショック!!

 グサッ  

キメラの頭から顎まで、ドロイカンランスが貫いた。

頭を一振りして、その騎士をふりおとす。 また傷がなおっていく・・・

「けっ、また再生か! 何度でもくらわせてやるよ、てめえが死ぬまでな!」

「僕もついていきますよ、団長」

「ぼ、ぼぼぼくも! 学問だけじゃないんだぞ・・・」

「私の暗殺術の全て・・・みせてあげる!」

「私のカワイイ弟子を狙ったこと、後悔させてあげるわよ!」

 きかないとわかっていても・・・私たちはこうするしかないじゃない!


「レヴン! 眼を開けて!」

必死にレヴンの傷に治癒の力を送り込んでいくミレィ

彼の傷は相当深い・・・ 普通なら即死だろう。

それでもまだ・・・息はある。

「なんで・・・なんで私のせいで貴方が死ななきゃならないの?
助けられてばっかで・・・何の役にも立ってないじゃない!」

泣きながら、レヴンによびかけるが、彼はまだ動かない・・・

 どうして・・・なんで私なんかのために・・・

 力がほしい・・・! 今の彼を癒す力を。

 そういえば、、、初めて師匠に会ったとき、言われたっけ。

 何で貴方は聖職者という職をえらんだの?って、
 あのときの私は、ただ親の仕事が神官だったために・・・ただ成り行きだった。

  ほんと真面目に考えたことなかったな、ほんとに私は聖職者になりたかったのか。

   ただ何も考えず、治癒の魔法を唱えるだけだった。

 けど、今は違う。

 どうしても彼を癒すための力がほしい・・・
 私なんかを命がけ守ってくれる人を、癒せる力が欲しい・・・!

「・・・それは違う。 ただ、俺が君を守りたかっただけだ。」

小声だが…確かな声がミレィの耳に届く。

「レヴン!」

 よかった…目が覚めた、もうちょっと。

  聖職者になって・・・ほんとよかった

レヴンの傷は、ミレィの必死の治癒によって塞がっていく・・・