WILD CRUSHERS 〜盗賊の極意V〜 ルアス一の極悪盗賊の家に押しかけ弟子が来て三日後、 シーザーは次の狩りへ出るための買い出しに来ていた。 「あと・・・・・・爆弾大量に」 「まいどあり!」 威勢のいい声で商売しているのはジプシーのルエン。 「兄ちゃん、またこの爆弾でテロでも起こす気だね」 「こんな粗悪な爆弾でテロなんか出来るかよ。子供の花火じゃねぇんだぞ」 「うちの爆弾は天下一品だよ!自分の腕が悪いのを人の所為にしないでくれるかい」 「その『腕の悪い』盗賊にいたいけな少年を押しつけたのは何処の誰だ?」 「あ!やっぱりあの時のバンダナ少年、あんたのトコに行ったかい?! やっぱりねぇ・・・・・・あの手の顔はそうなると思ったよ」 「ま、あの手の顔にゃおれもいろいろ手ほどきしてやらねばと思ってたんだ」 「コレかい?」 「素材は悪くないからな。修行次第では俺の次くらいに・・・・・・」 「はぁ〜・・・・・・ま、あんたに真っ先に落とされたあたしが言えた事じゃないけど、 あの子にはまっとうに育って貰いたいねぇ・・・・・・」 苦笑して額に人差し指と中指を当てながら、だがどこか愉快そうにルエンは言った。 陽気さと不敵さだけが取り柄だという点において、シーザー達とルエンには共通するところがあった。 「ところであんた達、今日は何処へ行くんだい?」 「んー・・・・・・まだ決めてないが、多分ディドキャプテンかノカン村周辺だな」 「気をつけなよ。各地で最近モンスターの様子がおかしいって噂が流れてるから」 「おかしいって・・・・・・どうおかしい?」 「年々モンスターの数が増えてることは有名な話だけど、 どうも最近モンスターの分布がおかしいらしくてね。 ディグも含めて、出るはずのないモンスターを見かけたって情報があるのさ。 まぁ、ネッシーの目撃情報なみに信憑性ないんだけどね」 「出るはずのないモンスターねぇ・・・・・・」 「そうそう!聞いたかい?最近カレワラで新種のモンスターが見つかったってさ、 名前は・・・・・・なんだったかな?ま・・・まーだー?だったかな?とにかくパンプキンの一族らしくて…」 こういう話になると、俄然張り切って長々と話し続けるルエンの性格を知っているシーザーは早々に礼を言って引き上げた。 「それじゃ、肩慣らしにノカン村にでも行ってみるか?」 ジャックは荷物をまとめながらそう言った。 「だな、ディグには行かん方が良さそうだし、」 結局ルエンにサービスして貰った大量の爆弾をバックパックに詰め込むシーザー。 「嫌われてるからな」 それもあったがルエンに言われたことも多少気にはなっていた。 彼女の情報がはずれることは少ない。 ノカン村まで行くとなると最低二日は帰ってこない。 今日もモスを叩きに出かけているハーレーのために置き手紙を用意し、 最後に装備品を持って出掛けていった。 「どうやら、今回は無事にすみそうだな」 ノカン村の奥まで行ってあたりのノカンを一掃し、 のんびり昼食を食べながら言うジャック。 「つまらんな・・・何か起こらねぇかな〜」 「お前さんがトラブルを好むのは勝手だが、トラブルの方はお前さんのこと、嫌ってると思うな」 「そうかぁ?トラブルもきっとおれのことが好きだぜ。 なんせ毎回トラブルがおれの方へやってくるたびに油を注いで火を大きくてやってるんだから」 「消火の準備もせずにな」 その時、シャギャァァァァという、この場では絶対にあり得ない叫び声が聞こえた。 あたりでは人々の混乱する声。 二人は顔を見合わせた後、再び昼食を食べて、水筒の茶まで飲んで、 あと片づけをしてから声のした方向へと向かった。 するとそこにいたのはドロイカンマジシャンが二匹ほど。 しかし、混乱は収まっている。 その様子を見ながらジャックが言った。 「変身スクロールってやつだな」 「なんだそれ?」 「一定時間、人がモンスターに変身できる巻物のことさ。よく露店とかで売ってるだろ?」 「へぇ…」 そうか、目撃情報はコレだったのか。と、心の中で一人納得するシーザー。 そもそも、こんなところにドロイカンがいるなんてまともな神経では誰も信用しない。 「それじゃ、気を取り直して狩りを続けるか」 シーザーがそう言ったときだった。 ディグバンカーの中からたくさんのノカン達が血相を変えて出てくる。 今度はなんだと思っていたら、近くに立っていた聖職者と戦士のペアが語り始めた。 「二週間前くらいにもこんな事なかったか?」 「ああ、あれね。確か迷惑な盗賊の二人組がディグの中を破壊して回ったとかで」 しばし無言で逃げまどうノカン達を見つめる二人。 誓って言うが今回は彼らの仕業ではない。 どうせ彼らと似たようなことを考えた他の連中の仕業だろう。 とはいえこのまま放って帰るのも後ろめたい。 二人はディグバンカーに入っていった。 入り口には外へと逃げるノカン達しかいない。 少し視線を合わせて、無言で彼らはエレベーターに乗った。 ついた先で彼らが見た物は・・・・・・ドロイカンマジシャンだった。 「どーせ、また変スクだろう」 と、無防備に半眼で眺めていたシーザーの視界が暗転した。 それと同時にジャックの声が聞こえる。 「逃げろ!そいつは本物だ!!」 しかし、追い打ちをかけるように頭が一瞬二日酔いになったときのような状態になる。 混乱をかけられたらしいが、普段常備していた安定剤が幸いし、 すぐに回復すると、シーザーは気配だけを頼りに逃げる方向を決めようとした。 風の動きで飛び込んできた何かの攻撃をかわす。 ジャックは何処へ行ってしまったのか気配がしない。 とにかくこうなってしまっては視界が回復するまで避けているしかない。 どこまで持つかはわからないが・・・・・・ その時、前方からの攻撃をかわすつもりで左に飛んだところを何かに強く殴られた。 まずい。 シーザーが、そう思ったときだった。 突然、彼の視力が回復した。自然回復にしては早い。 シーザーが周りを見てみるとそこにいたのはなんとハーレーだった。 「師匠!レベル3になりました!!ほーりーびじょん使えるようになったんです!!!」 「そ・・・・・・それはよかった」 「はい!師匠のおかげです!!置き手紙を見て、 早く報告しようと思ってここまで追いかけてきたんです!!!」 相変わらずどこかずれているし、どうやってここまで来たのか、不思議だが今それを突っ込む余裕はない。 「とにかくここは危ない!お前はさっさと・・・・・・」 そこまで喋ったとき、ハーレーの背後にブラドケティが立っていた。 次の瞬間、ハーレーとブラドケティの間に入って交戦するシーザー。 だが周りにはネクロケスタやドロマジが溢れていて、 とてもではないがハーレーを守る余裕はない。 並み居るモンスターを切ってはかわし切ってはかわししているうちに、 ハーレーはあっさり街へと転送されてしまったようだ。 たいした怪我もしないうちに一瞬で飛ばされたのだろう。 ホッとする間もなく、シーザーは周りのモンスターを避けながらジャックを探す。 その時、大きな音と共に軽く地響きがして、熱風がねっとりと彼の左頬にかかった。 かすかに流れてくる煙。 「爆弾か」 これだけの規模だ。 かなりの量の爆弾を一斉に爆発させたに違いない。 シーザーには、こんな事をするのは一人しか心当たりがなかった。 「やれやれ、つい一週間前まではディグはおれの天下だったのに。 誰が勝手に侵入していいと言った?」 言いながら後ろからかかってきたブラドケティを背負い投げの要領で投げ、 インビジブルをかけると爆発の起こったと思われる地点を目指して一目散に駆け出した。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 続く(かもしれない)
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