My Way 亡王の娘[後編]

「ちょっと、触らないでくれる?汚れるだろ!」 みんなと別れて大通りに来たあたし 喧騒が聞こえてくる 何だろ? 「あ?お前俺の財布盗っただろ?」 「盗ってないよ!言いがかりは止めてくれない?」 近くまで行って見る、争っているのはあたしと同い年ぐらいの女の子と、ごっつぃ戦士 「俺のツレに何かようか?」 1人の戦士が女の子の前へ出る どこかで聞いたことある声 え・・・・・・?レイレン? あたしはもっと近くへ行く 確かに、戦士の格好してるが、レイレンだ 黒いレザーアーマー、腰に下げてる剣 そして、銀色の装飾が施されたアメット あのアメットは・・・・・・アリスさんがしてるのに似てる・・・・・・ 「こんなおっさんはほっといていくぞ」 女の子の手を引き、路地へ入るレイレン 「おい、待てって!」 叫ぶが、レイレンたちには聞こえてないらしい あたしも走ってレイレンたちを追う 「誰だよ!ボクは戦士の知り合いなんか居ないよ」 少し入った路地から声が聞こえてくる 強気の口調の女の子 「あぁ、俺は戦士じゃないからな」 といって、アメットを外す いつもの見慣れたレイレン 「あ・・・・・・」 「覚えてますか?姫」 「・・・・・・」 黙るお姫様 あたしは2人を遠くから見守っていた 「覚えてるんですね?お久しぶりです」 「何のようだよ・・・・・・」 うつむいたまま呟く姫 「スられた財布を返してもらおうかと」 笑って言うレイレン 「・・・・・・」 黙る姫 「どうしてたんですか?姫」 「今はもう姫じゃないよ、ユエって名乗ってる」 レイレンを見て言うユエ姫 「こんなとこじゃ何ですから、俺の泊まってる宿へ行きませんか?」 「屋敷じゃないの?」 不思議そうなユエ姫 「後で話します、魅悠、出ておいで」 バレてたらしい・・・・・・ 「はい・・・・・・」 あたしは素直に出てくる 「宿に戻るよ」 そう言って、ユエ姫の手を引きながら歩き出すレイレン もちろんアメットは被っている あたしはその後ろを付いていく 見失わないように 「君、魔術師だったの?」 レイレンのほうを見て言うユエ姫 レイレンは戦士服から魔術師のローブに着替えている 「はい、俺は戦士に向かないそうで」 淡々と言うレイレン 「親父が心配してますよ、戻ってください」 「嫌だ、今戻っても殺されるだけだよ」 「姫を王座につけようとする人は大勢居ますよ」 「嫌ったら嫌だよ!」 宿に戻ったとたんに、口論の2人 はぁ・・・・・・ ため息をつくあたし 「どうかした?」 レイレンがこっちを向いて言う 「ユエちゃんが嫌がってるじゃん・・・・・・」 ジト目で言うあたし 「そうだそうだぁ〜」 ユエは笑って言う 晴れやかなというか、イタズラっ子の微笑みだ 「昔からレオンは考え方が固いんだよ〜」 「今はレイレンです」 キョトンとするユエ 「何で?魔術師になったのも気になるし・・・・・・。昔は兄様と一緒に剣の練習してたじゃないか」 「俺は虚弱体質なんです!」 大きな声で言うレイレン 「虚弱だったのか!?」 大声で笑って言うユエ 普通にしてるときは可愛らしい 姫というか、普通の人みたいだ 「まぁ、ボクは戻らないよ?この生活が気に入ってるんだ」 すねた子供のような口調で言うユエ 「しかし・・・・・・」 「ねぇ、あたしたちとパーティ組まない?」 何か言おうとするレイレンの言葉をさえぎって言うあたし 「ルアス以外のいろんな場所にも行くし、今女があたしだけなんだよね」 微笑み、言うあたし 「レイレンだって、ユエちゃんのコトが心配なんだよ また今日みたいにバレちゃったりしたら大変だし・・・・・・ね」 ユエを説得しようと試みる 「・・・・・・考えとくよ、じゃ、今日は帰るね」 そういうと、部屋を出て行くユエ 「はぁ・・・・・・」 ため息をつくレイレン 「お、お疲れ様・・・・・・」 ベッドに座り、レイレンに言う 「姉貴にアメット返しに行かなきゃな・・・・・・」 酷く疲れた口調のレイレン 苦労人だなぁ・・・・・・ 「へぇ〜・・・・・・で。500Gは返してもらえたのか?」 「あ」 すっかり忘れてたあたしとレイレン ちょっと怒りオーラを出す淕 「ご、ごめんってば・・・・・・」 引きつった微笑みで謝るレイレン 「500Gぐらいならどうにかなるだろ〜」 気楽なワン 危機感なしだなぁ・・・・・・ 「なぁ、何でヒーロレザーがあるんだ?」 昼間レイレンが来ていたアーマーを見てつぶやくワン 「昼間俺が着てたんだよ、アメットと一緒に」 「何の為に?」 「顔知られてるから、偽装?」 「なるほど・・・・・・」 3人の会話を聞きながらあたしは1人、ぼーっとしていた ユエちゃんは・・・・・・何で嫌がるんだろう? レイレンとは知り合いっぽいし・・・・・・ 「メシ食いに行こうぜ〜」 ゴキゲンな淕の声 「魅悠置いてくぞ〜」 「あっ、待ってよ〜」 これで女の子増えたら楽しいだろうになぁ・・・・・・ ふぅ、頑張ろう 宿屋の1階、レストラン部分で、あたしたちは料理を待っていた・・・・・・んだけど 「レオン!!ちょっときて!」 大急ぎで入ってきたのは、アリスさん 「何だよ姉貴、アメットは返しただろ?」 「イイから!3人も来て!!」 切羽詰ったアリスさんの声 「行こう?」 あたしは立ち上がり、3人に声をかける ワンと淕は無言で立ち上がり、上へ行く 「え?」 アリスさんは何も言わない レイレンも1歩遅れて上へ上がる 「????」 少ししてから3人は武器を片手に降りてきた 「ほれ」 淕はあたしに杖を投げてくる 「あ、ありがとう」 「ちょっと、騎士団の詰め所まで来てくれる?」 早歩きのアリスさん あたしたちは黙って付いていく 何が、あったんだろう・・・・・・ 「レオン、ミュリエル姫って、わかるわよね?」 「あぁ・・・・・・」 騎士団詰め所の、来賓室に招かれたあたしたち 着いて座るなり、アリスさんの話は始まった 「5年前に失踪して、暗殺疑惑が出てた彼女が、どうも居るらしいの」 レイレンも、あたしも、淕も、ワンも黙ったまま 「一緒に探してくれない?」 「騎士団を動かせばいいだろ?」 レイレンは眉をひそめ言う 「公にコトを動かすことは出来ないのよ、今の王・・・・・・は、ね」 「だから、俺たちに・・・・・・か」 「そうそう」 淕は口出しをしない。 ワンも黙ったままだ あたしもやっぱり、黙ってしまう 「わかった」 レイレンは立ち上がると部屋を出て行く 「目的は保護よ、いい?」 「わかってる」 あたしたちもレイレンを追って、部屋を出る 騎士団の人たちは珍しそうに見てくる そ、そんなに見ないでよ・・・・・・ 好奇心の目って、何よりも怖いと思う 何時から怖くなったって、わかんないんだけど 「はぁ・・・・・・、息が詰まるな」 詰め所を出たレイレンはつぶやく 「あーいうトコ、苦手」 一息ついて言うあたし 「姫さん、ホントに探すのか?」 「あぁ・・・・・・彼女が殺される前に俺たちが保護して、そのままルアスを離れるぞ」 真面目な顔をして言うレイレン 「了解」 淕とワンは低い声で答える あたしは黙ってるまま もう月が出た夜空 ユエは何を考えてるんだろう? あたしは、何が出来るんだろう? ルアス王宮前を走り続けて10分 争う声が聞こえる 大通りだ 「離せよ!!」 「姫、そろそろ観念したらどうですか?」 ユエの声と、ナイスなダンディヴォイス 「ユエ!」 レイレンが走っていく その後を追うあたしたち 「レイレン!」 ユエもレイレンの姿を見つけると、駆け寄る ワンと淕は、レイレンとユエの前で構える 「大丈夫?」 あたしはユエが怪我してないか、調べる 「どこかで見たことがあると思ったら・・・・・・、レガンフォード候の長男であらせられますか」 妙に慇懃な口調で言うおじ様 「・・・・・・宰相か」 にらみつけて言うレイレン 「覚えていてもらえて光栄です」 そう言い、一礼 「さて、本題に移りましょう。ミュリエル姫は王宮へ帰していただきたいんですが?」 「ボクは絶対帰らない!」 涙目になりながら言うユエ 「どうせボクを殺すくせに!お父様やお母様、お兄様を殺した奴らの下へなんか誰が行くもんか!!」 叫び声にも似た、声 胸を刺す、痛み 「先代王や、王妃、皇太子は病死ですよ?我々を犯罪者みたいに言わないで下さいよ・・・・・・」 「嘘だ!死んだって聞かされる前はみんな元気だったんだからね!」 「我がままはよして、こちらへきてください。あなたはルアスの姫なんですから」 そう言って、手を伸ばしてくる ワンと淕は身構える 「お父様は王として生き、王として死んだ。ボクはお父様の娘であって、王の娘じゃないよ それに今の王はお父様じゃない ボクは姫でも、なんでもない、独りで生きることを選んだ人間だよ」 宰相の動きが止まる 「しかしですね・・・・・・」 うつむき、狂気にも似た笑いが漏れる 「あなたに生きてもらっていては後々困るんですよ!」 宰相が、腰に下げていた剣を抜き放ち、襲い掛かってくる 間一髪のところで、ワンが押さえる 「やっと本性を現しやがったな!」 淕は言うと、宰相の腹部に一撃食らわせる 身体をくの字に曲げ、咳き込む宰相 「魅悠!行くぞ!」 レイレンがユエをおんぶし、淕に手を引かれながら走るあたし ワンは後ろから、黙って走ってくる 「何処へ行く?」 「スオミ!!」 淕の声に反応し、叫ぶレイレン 十分に宰相とは距離をとっているので、多分聞こえてないと思う 10分ぐらい走っただろうか 気がつけば、もう町から出ていた 「疲れたぁ・・・・・・」 あたしはへたり込む 「ユエ、大丈夫か?」 レイレンはおんぶしていたユエをゆっくり下ろす 「うん・・・・・・」 「こうなったのも、何かの縁だし、一緒に行動しないか?」 焚き火に火をつけながら言うレイレン 淕は黙々と枝を集めていた 「・・・・・・もう、行く場所もないしね」 「ここに居たら、もう独りじゃないよ」 ユエの傍に近寄り、言うあたし 炎に照らされた顔が綺麗だった 一粒の、涙 あたしはユエの手を握ってあげた 彼女の心が休まるように もう、誰も傷つかないように・・・・・・ -------------------------------------------------------------------------- 盗賊登場です・・・・・・。 ル、ルアス王宮の関係者様スイマセン!って感じの内容になってしましました・・・・・・ 一応主要キャラは登場しました。