第十三話〜悲劇〜


メルスはいまだに激怒していた。

「誰か一人を犠牲にするって、そんなことできるわけないじゃないか!」

「気持ちは判る。でも、人一人の命で、世界が救われるのよ?」

落ち着いて、ミールはそう言った。

「・・・・・・」

二人の間に、沈黙が走った。

「俺一人で行く。」

メルスが沈黙を破った。

「後のことは、ミールにまかせた。」

そう言い捨てると、メルスは出て行った。

「まって。私も――」

その声は、メルスには届かなかった。



「私はどうしたら・・・・・・」

ミールは、悩んでいた。

「あらあら、あの坊や行っちゃったのね。」

振り向くと、そこにはミルレス神官がいた。

「い、いつのまに!?」

「さて、貴方はどうするの?」

「決まっているわ、私も戦う。」

「そう・・・・・・でも、今の貴方なら、行かない方がいいでしょうね。」

「どうしてなんですか!?」

「今のままの貴方じゃ、かえってメルスの足手まといになります。」

先ほどまでとは違い、神官の目は真剣だった。

「でも、メルスが戦っているのに、私だけ何もしないのはいやなの!」

そう、ミールは叫んだ。

「そう。でも、それはメルスも同じよ?」

「え・・・・・・」

「一人の犠牲で世界が救われるなら・・・・・・あなたは、そう考えたはずです。」

「あ――」

「えぇ、彼は死ぬ気ですね。」

「それだったら、なおさら――」

「彼のために犠牲になろうとなんて、考えてはいけません。

彼を、生きて帰らせなければ意味は無いのですから。

まぁ、後は言わなくても、あなた自身が一番良くわかっているはず。」

そう言うと、ミルレス神官は扉を開けた。

「さて、私たちも行きましょうか。」

「はい!」

もう後戻りはできないことを、ミールは覚悟した。



メルスは、前に狩りで休憩した、遺跡近くに来た。

「どこにいるんだ。あのやろう。」

あたりをキョロキョロ見渡した。

一番大きい神殿から、光がもれていた。

(あそこは誰も居ないはず・・・・・・あそこだ!!)

メルスはその神殿へ走った。

メルスは神殿を上り、屋上まで上がってきた。


「見つけたぞ!サタンの復活などさせるわけにはいかない!」

メルスは、今まさに復活の儀式をおこなおうとしている所に来たようだった。

「生きていたか・・・坊主・・・」と苦笑いをした。

「今度は前のようには負けないぞ!勝負しろ!」

「サタン様、この坊主の息の根を止めて見せましょう、暫しの余興です。ごらんあれ。」

黒フードの男は、うやうやしい口調でそう言った

「行くぞ・・・・坊主!」

そう言ったかと思うと、黒フードの男は襲ってきた。

「マシンガンキック」

メルスは蹴りを放ったが、軽く避けられた。

「お前も修道士だろ!いったい誰なんだ!答えろ!」

メルスは怒鳴った。

「そんなに知りたいか・・・・・・しょうがない・・・・・・見せてやろう」

男は、黒フードを取った。


「ま、まさか・・・・・・そんな・・・・・・お、おじぃ!」

メルスは、驚きや悲しみや怒りなどが入り混じった複雑な感情だった。

「ひさしぶりじゃのぅ・・・・・・メルス・・・・・・こうやって会うのわ・・・・・・」

フォッフォッフォと、おじぃは笑った。

「なんでこんなことをしたんだおじぃ!」

メルスは怒鳴った。


「サタン様は・・・・・・何でも叶えてくれると・・・・・・約束してくださってのぅ」

おじぃは言い始めた。

「わしは・・・・・・」

そうおじぃが言うや否や、メルスが殴りにかかった。

「おじぃ・・・・・・あなたはおじぃじゃない・・・・・・

だから貴方を倒して・・・・・・本当のおじぃを呼び起こす!」

メルスは叫んだ。

「フォッフォッフォ・・・・・・おぬしみたいな小僧に・・・・・・倒せるかのう・・・・・・このわしを・・・・・・」

あざ笑うおじぃ。

「絶対倒す・・・・・・村のみんなの・・・・・・そして本当のおじぃに戻すために!」 


今回の変更点。 ミーナが神官に会ってからの話を追加しました。 ミーナが神官にあって、戦おうと決意するまでの心境を描いたつもりです。 ダメだと言われそうな追加ですが・・・・・・