第1章 :血が導いた道C


人は見かけに寄らず―

誰が言い出したかは知らないけど、ここまでその言葉が当てはまる人ってそう いないと思う・・・・・・。

レヴィンは私が一生懸命ウッドスタッフで殴って倒してたモスを鮮やかな剣捌きで一閃していく。

はじめてPTなんて組んでる私だけど、何にもしないでもなぜか経験値も入ってくるし・・・・・・。

そんなこんなで、あっという間にモスナイトがうようよいる所まで辿り着いた。

「ね、ねぇレヴィン。ここってモスナイトがいるんだよ。大丈夫なの?」

「楽勝だよ、僕は。セルフヒールはもう解読してるんでしょ?

自分さえ守ってくれたらすぐレベルも上がるよ」

なーんて言いながら、私が見たこともないような技で敵を一閃していく彼・・・・・・。

自分の身を守りつつレベルが上がると魔法を覚えるための読書タイムを取る。

そんなこんなで日の暮れ始めた頃、ロディーさんが野営の準備品を山程かかえてやってきた。

「師匠・・・・・・そんなに物いりませんよ。一晩なんですよ・・・・・・」

レヴィンの言葉に私は大きく頷く。二人ともあきれ気味だ。

「備えあれば・・・っていうだろ。足りないよりはましさ。

で、フィリア。どのくらい魔法覚えたんだい?」

「ヒールまでは何とか 解読できました」

おぉ・・・・・・とロディーさんが驚いたような声をあげた。

「さすがに早いな。血は争えない・・・・・・かな」

「?―――何のことですか?」

意味がわからずに私が訊くとロディーさんは突然真顔になった。

「知りたいかい?」

意味深な言い方に、私はますますわけが分からなくなった。

「むかーしむかし、ミルレスをこよなく愛した一人の聖職者の女性がいました。」

まきに火を灯しながらロディーさんが語り始めた。

「王宮で聖職者を束ねることも出来るだろうと言われる実力のある彼女でしたが

再三の王宮からの要望にも応ずることもなく、ただただ、ミルレスのために・・・・・・

と町の傍らの小さな家で、聖職者としての仕事を続けていました」

「いつしかミルレスの天使と呼ばれるようになった彼女に、

運命の出会いは突然やってきました」

「その頃ミルレスの町の近郊では

普段現れるはずのないモンスターが突然現れては町の人を傷つける・・・・・・

そんなことが起きていて、王宮からたくさんの人が事態収拾のため派遣されていました」

”どこかで聞いた事のある話・・・・・・。”

「彼女は王宮から派遣されてきた一人の魔術師と恋に落ちたのです」

「え?」

私は思わず声をあげた。

聖職者と魔術師・・・・・・それは・・・・・・。

「ミルレスでは聖職者と魔術師が結婚することは決して許されていませんでした。

なぜならお互いの方向性が全く正反対だから。

聖なる神に仕える者と、知識の探求のために魔の道を歩む者と・・・・・・。

結ばれてはならないと信じられていたのです」

そう・・・・・・スクールで聞かされた話だった。

私が聖職者、妹は魔術師。

昔なら結婚すら認められない仲・・・・・・

別の道を歩むのね、って先生は私たちに言ったんだ。

「掟を破れば、当然のごとく彼女は愛してやまないその町から出ていかなければいけません。

ですが、彼女達は自分達の気持ちに嘘を付くことは出来なかった。

そうして、ミルレスの天使はこの町を去っていきましたとさ」

"あなたが私を守るなら
   
私もあなたを守りましょう

命を司る者として

共に守っていきましょう

神への愛と共に・・・・・・"

聖職者しか知らないはずの詩・・・・・・歌っているのはロディーさん

「何で知ってるんですか?」

私は思わず尋ねた。

男の人が歌うとまた、違う歌を聴いてるみたいに聞こえる。

でもどこか懐かしい・・・・・・。

「なんで?―――か。それは自分に聞くことじゃないか?」