Will of Saga W


漆黒の目をもつ混血の魔術師が王宮に行ったのは開戦数日前だった。

「おい!何で俺は入れないんだよ!!ちゃんとベルガー家に雇ってもらっているのに」

「いいえ、貴方様は傭兵としては登録されておりません」

「クソォ!そんな事いいからとっとと入れろ!!仕事を失うだろ!」

ヨハンは頑固な警備兵とルアス王宮の前で戦い、そして敗れた・・・・・・。

「クソォ!あの女食わせ者だったか!!」

城に入れなかったヨハンは、そんな愚痴を言いながら、町を歩いていた。

そこに、その食わせ物の女が、漆黒の目をもつ魔術師の前に現れた。

「ヨハンさん〜どこ行っていたんですか?」

「貴様ぁ!!よくもノコノコと現れやがったな!」

魔術師はそう言いながら、腰に下げているハプンをすばやく抜き構える。

「うわぁ!ヨハンさんって、魔術師なのにハプンを使えるんですね。」

「そんな事よりも覚悟しやがれ!!この食わせ物!」

叫ぶと同時に、ヨハンはニナに向かってハプンを突き出した。

それをニナはかろやかにそらして避ける。

「あ!スイマセン、まだ説明していませんでしたね・・・・・・。

とにかく、そのナイフ収めてください。

詳しい話は屋敷のほうでするので・・・・・・。」

ヨハンはあっけにとらわれながらも、ハプンを収めた。

自分より4歳年下の女に、屋敷へと案内される。

数分ほど歩いただろうか。人通りの少ない道の先に、それはあった。

「ここが、私専用の屋敷です」

恥かしそうに、ニナは言った

たしかに、一目でただの家ではないと判った。

見るからに大きい建物。

家の大きさは、レオンの家の5〜6倍はあろうかと思えるほどだった。

「ささ、中へどうぞ」

ニナに、応接間らしき所に案内された。

待っていると、ニナと、見たことのない男が入ってきた。

その男は、ヨハンの目の前のソファーに腰掛けると、話を始めた。

「君があの有名な「速射ヴァーミリオン」ことヨハン・ヴァーミリオン君かね?」

「はい、そうですが・・・・・・貴方様は?」

男は一瞬、しまったといった顔をしたが、元の顔に戻ってこう言った。

「私の名前はロイ・ベルガー、よろしく」

コイツが、ロフが言っていった、ベルガー家の当主か・・・・・・

「早速話に入らせてもらうが、私は私的に君を雇いたい。」

「それはお嬢さんから聞いております」

「では話は早いな、1日5万グロットで君を雇いたい。

仕事の内容は、戦争中のニナのボディーガードだ。

期間は、戦争が終わるまで。どうかね?」

「喜んでお受けいたします」

「おぉ!受けてくれるかね、ありがとう!では頼むよ!

それでは、私はここらへんで。仕事が忙しいのでね」

そう言うと、男は騎士のマントを翻しながら部屋を出て行った。

「それじゃあ、よろしくお願いします。ヨハンさん」

ニナはそう言うと、これから自分の身を守ってくれる傭兵に頭を下げた。

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漆黒の目をもつ混血の魔術師が、

ベルガーに私的に雇われてから、ちょうど一週間たった後だった。

ルアスの港を、40隻ちかい軍船が、帆を一杯に張って海原へ走り始めた。

その中に、漆黒の目を持つ混血の魔術師がいた。

彼はレナと話をしていた。

「敵の数はどれくらいなんだ?」

「えっと・・・・・・

魔術戦艦が7隻、魔術船が3隻、大型帆船が4隻、小型魔術船が10隻ほどって聞きました。」

「計24隻で、その内20隻が魔術動力か・・・・・・

   敵は最低でも知恵型魔術師を50人は持っているな。

   あと、イカルス沖だと言うのにも関わらず、

   これだけの数で戦っていられる事からして、頭の奴は相当切れると見た。

   敵の戦術は魔力動力と言っていたから、

   ほぼ100%ヒット・アンド・アウェイだろうな…。 

   それに、夜襲とかも頻繁に使ってきそうな、嫌な奴らかも知れんぞ。」
         
「え…船の数だけでこんなに判るんですか?」

「ん?これは作者が…

じゃなくて、昔ルケシオンの海賊に雇われていたことがあってな。

そのときに養った知識だよ」

「そうなんですか…。」

あっけにとられた顔をして、ニナがそうつぶやく。
   
「ま、敵がどこにいるかわからんが、風の関係で近いうちに出会いそうだな・・・・・・」

ヨハンが顔を曇らせながら言った。

そして海原へ出てから8日目、ついにイカルス海賊団を捉える…。

海軍の指揮をとっていると思われる男が叫んだ。

「全艦に通達!全艦に通達!これより我が艦隊はイカルス海賊団と戦闘に入る!」

そう言うと、男は即座に次の指示を出した。

「右舷旋回70度!火箭発射用意!

旋回終了と同時に、敵艦に対し、攻撃を開始する!」

漢数字の「ニ」の形に並んだ艦隊が旋回を始める…。

「火箭発射!!」

声と同時に銅鑼が鳴らされた。

銅鑼の音が鳴り響くと、半数の艦から火箭が発射される。

「発射終了艦は全速前進!未発射艦は射撃用意!!」

発射を終えた艦がすばやく前進し、隊列を漢数字の「一」の形にする。

「撃てぇ!!!!!!!!!!!!!!」

再び銅鑼が鳴り響き、火箭が発射される…。

この攻撃により、隊列が乱れているイカルス海賊団は大きな被害を受けた。

しかし、まだ「イカルス沖海戦」は始まったばかりであった…。

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お久しぶりです

今回は用語説明をします…。

火箭(かせん)  中国で発明された武器で簡単に言い表せば
         「集団ロケット火矢」です…舟につんで使ったりします

魔術船      これはオリジナルです…。
         魔術師の魔力を原動力として動く船
         これを動かすには知恵系統(wis魔)の魔術師が必要

これからも頑張っていく(つもり)なのでよろしくお願いします。