Will of Saga X


敵の船は炎上しつつも、まだ動くようであった。

「よぉーし!!このまま敵に突っ込むぞ!」

イカルス海賊団の頭がそう叫んだ。

旗艦を中心にして、楕円状に陣を組んでいたイカルス海賊団は、

隊列が横一文字のままのルアス軍に突っ込んで行く。

ルアス軍の旗艦「バーリッツ」の操舵室に、若い将校が駆け込んできた。

「艦長!!敵船が、我が艦に向かって突進してきます!!」

「なにぃ!?」

イカルス海賊の狙いは、旗艦のみだった。

旗艦だけを狙って、破竹の勢いで前進してくる船の群れ。

「各員、格闘戦の配置につけぇーーー!」

艦長は叫んだが、格闘戦は行われることなく終わった・・・・・・

ルアス軍第04海戦旅団旗艦「バーリッツ」は、

戦闘開始からわずか1時間後、あっけなく沈んでしまった。

「旗艦を落とせば奴らの士気は落ち、艦隊の動きが悪くなる。

俺の予想どうりになっちまったな・・・・・・」

イカルス海賊団の頭が間抜けそうにぼやく。

しかし、彼の言っていることは正しかった。

旗艦が沈んでしまったため、連絡がつかず、

身動きが取れなくなった艦隊は、一隻、また一隻と海賊に食われていった。

艦隊が全滅してしまうのも、時間の問題だろう。

「ったく…言わんこっちゃない、早くここから逃げないとこの船も沈むのにな・・・・・・」

漆黒の目をもつ魔術師が、一人甲板の上で呟く。

男は立ち上がると、おもむろに腰に下げているパウチからアキュラオーブを取り出した。

(今残っている艦が大体20〜15隻。で、敵はいまだに14隻ほど・・・・・・か)

男は長いメンタルロニア語の魔法の詠唱を始めた。

一方、ルアス軍は接近戦に突入していた。

船と船が互いにぶつかりあい、その際に人が乗り移る。

俗に言う、血によって語られる英雄伝が始まったのである。

自らの腕のみが頼りの戦場・・・・・・弱者は血に染まる以外許されない修羅の場。

一斉に飛び掛る海賊に対し、それを組織的に回避して反撃に移るルアス軍。

接近戦では、ルアス軍が圧倒的に有利であった。

海賊が3人一組の小隊で突入してくるのに対し、ルアス軍は4人一組の小隊。

三個で迎撃に当る…数で勝っている上に、技術面でも勝っていた。

海賊の戦士が斧を力強く振り下ろす。

それを流水のごとく避ける聖職者。

そして、避けた直後にわき腹から修道士のコンビネーションパンチが入る。

痛みによって体の自由が効かなくなった哀れな戦士に、盗賊が引導を渡す。

このような動作が淡々と行われ、次々と命の灯火を消していった。

だが、戦術的勝利は、戦略的勝利には必ずしも直結しなかった・・・・・・

着実に「魔法」によって船を沈めていくイカルス海賊団。

戦闘開始から2時間が経過した時、

すでに、数量で勝っていた・・・・・・。

「ルアス軍と言っても、案外弱いものなんだな・・・・・・」

イカルス海賊団の頭がぼやく・・・・・・

だが彼は、その3時間後に、海の藻屑となる運命だとは知るよしも無い。

戦線より少し後に退いていた船から、メンタルロニア語の詠唱が消えた。

そして次の瞬間、海に大きな次元のひずみが生じた。

ひずみからは、ルケシオン海賊団が・・・・・・

「おっしゃぁ!!野郎ども戦争だ!!!ぬかるんじゃねーぞ!!」

「オウ!!!!!!!!!!!!」

あたり一面に響く声で、海賊は気合を入れた。

ルケシオン海賊団は、即座に海の王者というものを両軍に見せつけた。

からくり部隊であるテュニショットが一列に並び、

合図とともにカノン砲を一斉発射する。

その後、すばやく船を近づけると、戦闘員が突入し船を制圧。

この動作を、恐るべきスピードでやってのけたのである。

しかも、この作戦は魔術船に効果ばつぐんであった。

魔術船は魔力炉に魔術師が魔力を送り込み、

たまった魔力を一斉に噴出する事によって推進力を得ている船である。

動かすのに少ない人手ですむため、たくさんの戦闘要員を配置できる利点がある。

だが、重大な欠点があった。魔力がなければ動けないのである・・・・・・

普通魔術師は魔法を唱える際、浮遊しているマナを一度吸収してためねばならない。

それを簡単に行う為に、考え出された言葉をしゃべる事。

これが一般に言われる「詠唱」である。

魔術船は人間で言う詠唱を、魔術師が魔力を送り込むことによって行っている。

しかし、この動作は術を使う者に相当の負担が掛かるため、戦闘中は行えない欠点がある。

 「魔力の補給は戦闘中は出来ない」

彼らの戦法は、ここをついていた…

最初の射撃は、全て魔力炉狙いで打っているのである。

そして次の突入後、真っ先に制圧するのが魔力炉である

彼らは乗っ取った船を破棄する際、必ず爆弾を仕掛けていくのも魔力炉である。

魔力炉を破壊する事によって魔力が垂れ流しになり、魔力船は動けなくなる。

動けない船が、いくら兵力を持っていても意味がない。

それに、まれにだが、垂れ流しになった魔力が暴走し、爆発を起こす危険もあった。

この徹底した魔術船対策により、イカルス海賊団は瞬く間に殲滅していった。

だが・・・・・・勝利を確信するには、まだ早いようだ。

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こんばんぷ…逆毛です…。

今回は魔法に付いての説明を…
 
  魔法は空気中を浮遊しているマナを集め、

  それを、自分の魔力を使って加工して放出する。
  
  一般的に、魔術師は二タイプに分けられるが、
  
  マナを集めるのに適しているのが知恵型(WIS型)で、

  マナを加工するのに適しているのが、知識型(INT型)です。

  WIS型は、莫大な量のマナをあまり加工せずそのまま放出する為
  
  範囲魔法が得意。(でも、マナの量が多すぎて収束させる事ができない)

  INT型は、少ないマナを加工して放出する為、

  単体攻撃に長けている。(範囲攻撃できるだけのマナをためれない)

続編

  ウィザードゲートは、浮遊しているマナに、

  自分の魔力をぶつけることによってできる「次元のひずみ」を作り、

  このひずみを使って、瞬間移動をしている。

  一応ゲームでは70からとなっているが、使う気になればレベル1の魔でも使える。

  確実に行きたい場所に行くには、「リコール媒体」と呼ばれるものを使うか、

  行きたい場所を正確に頭で思い浮かべる必要性がある。(ヨハンはこれが得意)

            …聖様の魔法の原理について…

  聖職者の唱える「回復魔法」は、原理的には魔術師が唱える魔法と同じである。
  
  だが、魔術師が使う魔法は「攻撃」に使われることをメインに考えられた物であるのに対して、

  聖職者が使う魔法は「治癒」の魔法に分類される。

  治癒の魔法といっても直接直すのではなく、

  その生物の自己再生能力をマナを送ることによって高めるのである。

  また、ロックスキンやホンアモリに代表される「援護魔法」は、

  加工されたマナを纏うことによって、恩恵をうけることができる。

  盗賊のブリズウィクや、騎士のドラゴンスケイル等もこれと同じである。

とまぁこんなところです…。

こんなあてつけがましい説明が、すこしでも皆さんの想像の世界を広げる事を願います。