Will of Saga V 漆黒の目をもつ魔術師と、ルアスの中佐と、その奥さんがテーブルを囲んで話していた 「ん?じゃあお前は俺がスオミを出て行ってから、すぐルケシオンに行ったのか?」 「あぁ、そういうことだが・・・・・・海賊衆には相手にされなかったな。 帰り道サラセンによったんだが・・・・・・そこでサラセン銀行に雇われてな」 「そこでしばらく働いた、と」 「あぁ、そこで1年ほど用心棒として雇ってもらって、 その後カレワラにでも雇ってもらうつもりでカレワラに行ったら――」 「門前払いだったんでしょ。」 リーナがニヤッと笑って言った。 「よくわかるな…女の勘ってやつか?」 「まぁね、話を続けて。」 「そこで俺は一回スオミに戻ったんだ。 そこで半月ほど暇をつぶしていたが、たまたまスオミの近くでポンポンが大発生してな。 ポンポン狩りに行って、ポンポン狩らずにルアスに行ったわけよ。」 「ルアスに!?何で俺のとこ来なかったんだ!?」 レオンが身を乗り出して言った。 「んー行きたかったが行けなかった。 ついたとたんにアルバート少佐に見つかって、 「今度俺達結婚式挙げるんだ!おめーも来い!!」とか言われて。 そのままイカルスに飛ばされて、そこでアルバート少佐とモニカさんの結婚式を見て・・・・・・」 「えぇ!あの二人も結婚したんだ!!おめでと〜」 「俺はそのままイカルスの道具屋にまた用心棒として雇ってもらって、そこで2年ほどかな・・・・・・」 「そこにルケシオン海賊団が来たと。」 「あぁ、来たとたんに酒場に奴らが駆け込んで、 ちょうどその時飲んでいた俺は、はじきだされたんだ。 それで、頭に来たんで、ちょっと魔法を撃ってやったら、 相手は悲鳴を上げる代わりに、こう言ったんだ。 「オイ、お前なかなかやるな。俺達の仲間にならんか?」ってさ 後は言わなくてもわかるよな…。」 「その後、去年まで海賊団に傭兵として雇ってもらったと。 そしてスオミに戻ったらポンが大発生していたと・・・・・・ それをお前一人で全部倒してしまったと・・・・・・ そして今、ここで俺らと茶を飲んでいるわけだ。」 「そういうこと」 「結構楽しそうな人生送ってきたんだね〜。 聖職者になるって決めてから、毎日が地獄だったわ。 聖職者に必要なのは精神だ!!とかいわれて毎日お祈りささげたり、 まったく書体の違うメンタルロニア語を解読したり、 肉弾戦が多くなるって理由で、毎日格闘訓練したりとか…」 「まぁ、そのせいで俺はもうリーナに勝てなくなっちまったけどな」 などと、思い出話に花を咲かせていた時だった。 コンコン 「はい!どちらさまですか?」 「ラグナロック隊の者です、隊長はいらっしゃいますか?」 扉を開けて出てきたのは、メイジローブをまとっていた男だった。 ローブには、ラグナロック隊の象徴のワシがデザインされている。 「隊長!トール将軍が例の件でお呼びです!至急王宮へ!」 「あぁ・・・・・・わかった・・・・・・聞いてのとおりだリーナ、ヨハン、また後で。」 「いってらっしゃい〜!!早く帰ってきてね」 レオンは短く詠唱を始めた。 「ウィザード・ゲート」 男とレオンが光に包まれた。 「じゃ、俺は仕事でも探しに行きますかな」 「ヨハンもいってらっしゃい〜夕方にはもどってきてね〜」 俺は広場へ足を運んだ。 相変わらず、広場は人でごった返していた。 「いいぞ!いいぞ!やっちまえ!!盗賊なんざぁ殺しちまえ!」 なんだぁ?と思い、声のする方向を見てみると、 41服を着た男戦士が、21服を着た女盗賊をいじめていた。 いや、いじめというよりは、殺そうとしていた。 戦士はフレイムスラッシュを放とうとしている。 (このままじゃあの女、やばいな・・・・・・柄でもないが助けてやるか) 戦士は、炎をまとった剣を振り下ろした・・・・・・ だが、剣は戦士の自信のみを切って地とぶつかり、カツンと音をたてた 「小娘相手にフレイムスラッシュかよ、戦士も落ちたものだな。」 随分ダメージを受けている女を丁重に地面に寝せた。 「きさまぁ!!!!!!」 (なんとも単純な奴、まぁここで腕のよさを見せておけば職がくるかもな) 戦士の攻撃を余裕で後に飛び退けると、すばやくバゼルを取り出し、 防御の姿勢に入った戦士向かってバゼルを投げた。 「なんのぉ!!!!!!!」 戦士はバゼルを打ち払った。 「これでおわりだぁ!!!!!」 盗賊なみのスピードで、戦士は切りかかってきた。 (たいていの連中はコイツの気迫とスピードに圧倒されるんだろうな) またもや戦士の攻撃を右にさばいて避け、こう言った。 「お前はまっすぐの攻撃しか出来ないのかい?」 「なにおぉぉお!」 案の定、戦士は顔を真っ赤にして再び切りかかってきた。 (むぅ、案外面白くない奴だな、けりをつけるか) 再び攻撃を避けながら、腰に下げていたハプンを取り出した。 「一つ忠告しておくよ、君の場合、攻撃は最大の弱点だよ。」 そう言うと、魔術師はハプンを逆手に持って戦士を二回すばやく突き刺した。 血がとび、戦士が悲痛の声をあげ、気絶する。 回りが魔術師に拍手を送る。 「気絶してよかったな」 大衆を尻目に、魔術師は戦士にそう言って、倒れている女の元へ行った。 「お嬢さん、大丈夫ですか?」 「えぇ、何とか…。」 幸い、立てる体力は残っていたようだ。 「じゃ、応急処置としてヒールかけておくので、後でちゃんと手当てをして下さい。」 「あ、ありがとうございます・・・・・・」 女は礼をすると、そそくさとこの場を立ち去った。 (ったく・・・・・・何一つ得る事は無かったな・・・・・・。) 男はそんなことを考えながら、広場に例の看板を出して昼寝を始めた。 ----------------------------------------------------------------- その日の晩、再びギルバート家に人が集まって宴会を開いていた。 「今日こそはヨハンに勝つぞぉ〜!」 「ヨハンにはどうやっても勝てないと思います・・・・・・」 そんな事を言いながら、ヨハンとエリーがモス酒一気のみ対決をしていた時だった。 ドンドン、ドンドン 「あのぉ・・・・・・こちらにヨハン・ヴァーミリオンさんが入ると聞いてきたのですが。」 ドアを開けると、そこには昼間助けた盗賊の女が立っていた。 「おぉ!美女からの夜のお誘いだ!!断る理由はないよな!!」 酔っ払っていかれているレオンの言葉に、顔を赤くしながらも女は用件に入った 「今日は助けて頂いて本当にありがとうございました。」 「いぇいぇ、当然の事ですよ。」 女は少し間を置いてから言った 「あのぉ・・・・・・お楽しみのところ悪いのですが、仕事の話をしてもいいでしょうか?」 仕事!?コイツ俺に仕事をくれるってのか? 「はぁ・・・・・・いいですけど」 「今、イカルスで海賊が暴れているのはご存知ですよね。」 「あぁ・・・・・・」 「近いうちにルケシオンの海賊団とルアス海軍が彼らと戦うのですが、 その際、傭兵として戦ってもらえないですか?」 まってました!!こんな仕事!! 「いいけど・・・・・・1日いくらだ?」 「働き次第ですが・・・・・・1日5万を予定してますが、どうでしょうか?」 「よし!乗った!!」 「ありがとうございます。 戦闘まではまだ時間がありますので、必要なときはこちらから伺いますので〜」 「あいよ、アンタの名前は?」 「ニナ・ベルガーです、戦いには私も参加する予定です。」 女が名前を言った瞬間、レオンたちが動きを止めてこちらを向いた。 「あなた・・もしかしてベルガー家の人間?」 「はい、その通りですが」 女の回答を聞いた同時に、レオンたちは顔を見合わせた。 「では、ヨハンさん、よろしくお願いします」 ニナはそう言って、こげ茶色の髪をなびかせて帰っていった。 「おいヨハン、お前いつの間にあんな化け物の家と繋がっていたんだ?」 先ほどまでアレだけ酔っ払っていたレオンが、冷静な顔で聞いてきた。 「化け物?どういうことだ?」 「ベルガー家――ルアス人で有れば、誰でも知っているはずです・・・・・。 あの悪名高き「処刑人ベルガー」の名前を・・・・・・。」 「ベルガー家は代々処刑人の家なんだよね〜 けれども、歴代の当主は結構まともだったらしんだよね〜 けど、一つ前の当主のアウデナアー・ベルガーが狂人でね〜 禁止されたはずの魔女狩りを再開したり、 1〜2歳の赤ちゃんをギロチンにかけたりしていたんだよね〜」 「けれども、今はその当主は隠居していて息子が後を継いでいるだけどね…。」 「その息子も狂人なのか?」 「ロイ・ベルガーは俺の上官だ…あのお方は、仁徳のあるお方だ。」 ロルフが力強く言った。 「フーン、でさっきの女が狂人の孫にあたるってことか」 「そういうこと、もうちょっと情報仕入れておいたら?」 「今度からそうしておくよ」 この晩の来客により、一人の魔術師が再び戦地へ赴く事となった…。 -------------------------------------------------------- 最近、コーヒーばっかり飲んでいる逆毛です またもや新キャラ作ってしまいました…。 不覚です…。 死にキャラならないよう頑張ります!!
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