その3
どのくらいそうしていただろう。
「あれ?おい、陸。」
突然、明るすぎる声が背後で聞こえた。
振り返ると、一人の少年が小走りで駆け寄ってくる。
彼の名前は淳といって、職業は盗賊。
淳は頭の回転がいいし、(まあ、悪く言えばずる賢いとも言う。)
小回りも利くし、「盗賊」は、こいつにとって天職だと思う。
実はこいつも師匠の弟子で、年も同じくらいだということもあり、
師匠から出される課題のときにはよく組んだりする。
まあ言えば、相棒のようなやつだ。
ただ・・・・・・こいつを一言で言うなら、「変わり者」、だろうか。
「なぁ、さっきハギリさん見なかった?」
「――さっきまでここにいたけど・・・・・・」
自分の師を"師匠"と呼ばなかったり・・・・・・
本人いわく、「諸事情で♪」らしいが・・・・・・
「うーん・・・・・・まっ、いいや。
それよりさー、薬屋の婆さんに孫が怪我したからって、薬の材料探してくれって頼まれてさ。
・・・・・・手伝って♪」
淳はしばらく考えると、「お願いっ」と手を合わせて頼まれる。
――これじゃあ、なんだか悪者にでもなったみたいだ・・・・・・
「――はいはい。で?何探せばいい?早く済ませよう。」
こうして僕は、また森へと歩き出した。
「そういえばさ、ハギリ君。」
ここは、スオミダンジョンのエレベーター内部。
エレベーターを降りている途中で、突然彼女は口を開いた。
「そういえば、何?」
彼女が銀色の髪を耳にかける。彼女特有の、癖だ。
「なんで、さっき陸君来なかったの?」
頭一つ分くらい低い目線が、こっちを見上げてくる。
「いや、なんていうか・・・・・・」
俺が言葉を濁すと、彼女がひらめくように言った。
「あっ、レベルが違いすぎるから?
それとも、まだPTに慣れてないからかな?」
・・・・・・おいおい。
いくらなんでも前者をさらりと言うなよ。さらりと。
まあ、そういう性格なのは昔からだが・・・・・・
「うーん、どっちかっていうと後者かな・・・・・・」
俺は苦笑を浮かべながら言う。
「なんていうか――2,3人なら大丈夫なんだよ」
「え?じゃあ、なんで?」
少し言っていいのかどうか迷ったが、結局口を開いた。
「あいつは――聖職者に、トラウマがあるんだ。」