第5話


当たり障りのない会話をして、ルナは帰っていった。

一応名家の娘と言うことで、カイトさんが騎士団宿舎まで送ったが。

「私たちがコメディノリでいくのも結構シビアね……」
「……今のは聞かなかったことにしていいんですよね、師匠」

ヘルさんがポツリとつぶやいた言葉が、今日の出来事を象徴していたような気がした。



次の日も、ルナは現れた。

「ルナ……」
「何ですか、ディカン先生」

「とりあえず10も違わない年上を捕まえて、先生はやめてくれ」
「でも、私にとっては先生ですし」

なぜか我が物顔で、ぼくの定位置に座っているルナ。

「というより、学校はどうしたんだよ」

思いっきり平日の真昼間。例によって例のごとく、アジトにはぼくだけ。

せっかく一人でまったりしていたら、騒動の種が転がり込んできた。

「別に行く必要はないんですよ、私は」
「それはまた、どうして?」

「ほら私、一応女ですから」

ああ、そうか。“最初の七家”、歴史が古いイコール頭も古いらしい。

いまだに男優遇社会なのか。

「鏡家だけだよね、女性が頭首になれるのって」
「そうですけど……、頭首って、ディカン先生も古臭いですね」

笑われた。

「一族の代表になれるかなれないかですよ。結局騎士団は戦力が必要ですからね。
どだい女性では、無理な話です」

それはうちのギルドの面々に声を大にしていってみたい。

というか知り合いの女性……、みんなありえない戦闘能力の持ち主なんだけれど。

もちろん声に出しては言わない。

壁に耳あり障子に目あり。どこで誰が聞いているかわからない。

「先生、あの実は個人的な質問が」
「何だね?」

「私の推測ですけど……ディカン先生って」

凄まじく嫌な予感。

「……レゾルロッド家現当主の、イデルカープンさんじゃあ……」

……げえ。バレたよとうとう。

「ふふふふふ」
「……不気味ですよ」

「よし。じゃあこっちからも質問だ。どうしてここに来るのかね?」

話をそらすに限るッ!

「……」
「あ、答えにくいこと、かな」

聞いちゃまずいような雰囲気。

「……暇つぶしですっ!」

ぼくは椅子から思いっきり転げ落ちた。







そうこうして、ルナが来るようになって一週間がたった。

そして、事態は大きく動くことになる。