第3話


「はい、皆さんこんにちは。ディカンプールといいます」

胸元にマイクをつけ、広い講堂を見渡す。

座っている、生徒、生徒、生徒、生徒。

立っている、親、親、親……。

話聞かされてなかったが、今日は授業参観の日らしく、

特別授業のぼくの時限まで、たくさんの親が来ている。

一通り、いる人間を確認する。

…………。

て、待て。

……少し落ち着こう。これは幻覚だ。きっとそうだろう。

「さて、今日の話はマイソシアの魔法のお話です」

もう一度、勇気を持ってある場所に視線をやる。

    にやにやと口もとを緩ませる蒼さん。

    何やらうれしそうな顔のヘルさん。

    ノートを広げ、まるで授業を受けているかのような板さん。

…………。

見えない見えないぼくには何にも見えないよー。

……さて

「……皆さんは、魔法をどのようなものだと理解していますか?」

気を取り直して、授業を始めよう。



ぱちぱちぱちぱち

盛大かどうか分からないが、それなりの拍手を持って授業を終えた。

おおよそ2時間弱。正直疲れた。何より精神的に。

「お疲れ様」

あいさつをし、教室を出たところで待ち構えていたのは例の三人。

「………………、なんでいるんですか?」
「あれ? 聞いてなかったっけ。私たちへの招待状」

ほら、と言って紙を見せてくるヘルさん。

……なんだ、これ?

「講演チケット……、ディカンプール先生ってこれ」

「そうよ、騎士団からプレゼントされてね。

ディカンプールなんてありふれてない名前だけど、まさかねぇとは思ったのよね……」

嘘だ。

絶対に嘘だ。

――てかこの三人にぼくは相談したんだから。知らないわけがない。

「……知っててやりましたね」

せめて否定くらいしてくれるかと思ったら。

「当然だろ」

さくっと蒼さんに答えられた。







で、これで一つのサブストーリーが終わってもいいのだけれど。

残念ながらこれで幕を下ろすわけにはいかなかった。

全く、……こんな面倒くさいことになるとは思わなかった。