第4話



──そのころ。蒼は夢を見ていた。

それは、一人の少年と、一人の魔術師のおはなし。

長い長い昔の、でも、振り返れば最近のおはなし。



そこは
 とてもくらいぶきみなもりでした

ひとりのしょうねんが
 ひとりであるいていました
  てには、しょうねんにぴったりの
   かこうされたたんけんがにぎられています

ふと、きがつくと
 うしろに
  おおきなかぼちゃのおばけがいました

かぼちゃは
 てににぎったおおきなてつのかまで
  しょうねんのあたまへと
   おそいかかります

しかし
 それはとつぜんのばくはつで
  さえぎられました

ばくおんにたちすくんだしょうねんのもとに
 ひとりのおじさんが
  やってきました

「どうしたんだい? 
    ──こんなところで」

おじさんはそういってしゃがみ
 しょうねんとめせんをあわせました

「ここは、ひとりじゃとてもあぶないよ」

「……ねえ
     おじさん」

しょうねんは
 とりつかれたようにくちをひらきました

「ん? なんだい?」
「おじさん、いきてるよね」
「もちろん」

しつもんのいとは
 おじさんにはわかりませんでした

「でないと、きみとこうして
       はなせないじゃないか」

「ぼくも、いきてるの?」
「もちろんさ」

おじさんのえがおは
 とてもみりょくてきなものでした

「じゃあおじさんからもひとつ
              いいかな?」
「なぁに?」

しょうねんのめには
 かすかになみだのあとがみえました

「きみは
   どうしてこんなところにいるのかな?」

しょうねんのくちから
 こたえははっせられませんでした
  でもかわりに

「ぼく、わからないんだ」
「なにがだい?」
「いきているって、どういうことなの?」

おじさんは
 すぐにはこたえられませんでした

「そうだね」

きせつににあわない
 つめたいかぜがふきました

「それは
   ……むずかしいしつもんだね」

おじさんは
 しゃがむのをやめて
   じめんにすわりこみます

「ひとついえるとしたら
    しんでいることとはちがう、ってことかな」
「しぬ……?」

「そう、さっきのかぼちゃのおばけは
                     しんじゃった」

そこには
 てつのかまだけが
   のこっています

「それにもしいま、
   おじさんたちがあれにおそわれたら
              きっとしんじゃうだろうね」

──そのとき
    しょうねんのめに
     まんとをきたかぼちゃのおばけがうつりました

でも
 おじさんはきがつきません

おおきなほうちょうが
 おじさんめがけてふるわれました

  にくをきるにぶいおととともに
   しょうねんにちがふりかかりました

「おじさん
    ……しんじゃった」

おおきなかぼちゃのおばけは
 つぎのひょうてきをみつけました

そう
  しょうねんです

「ねえ
   おじさん」

しょうねんは
 すでにうごかない
  おじさんのからだをゆすります

「いきているって
     ……しんでないってことなの?」

しょうねんはむぞうさに
 てをうごかしました
  てにもったたんけんを
    むいしきに

それだけで
 かぼちゃは
  てんにめしました

「じゃあみんな
                ……ころせば」

よろよろと
 しょうねんはあるきだします

「ぼくは、いきていることに
                  …なるの?」

めのまえには
 まちがありました
  だからこそ
   おじさんがとおりかかったのです

  そこは
さらせんまち
    もんすたーとにんげんが
      きょうぞんしているまち

だけど
 にんげんでももんすたーでもないかれに
   そこにいばしょは
    ありませんでした

そのかわりに
 かれはすべてを


ころしました


──こうして、さつじんきがうまれました