ALICE  2'nd Demand


真実の裏側に何があるのか。

幻想の裏側に何を感じるのか。

遠く離れた心の奥底に手を伸ばし

その手で掴んだ物は感覚にさえもならない。

少女は私に何も無い世界を与えてくれた。

昼か夜かもわからない。

自分がなぜここにいるのかもわからなくなるような深き森で。

この少女はただ、一人。

ただ、一人でたたずんでいた。

深き傷を負い、にごった血が私を麻痺させていたのか。

その何者かわからない。

それは人間じゃなかったのかもしれない。

私は救いを求めたんだろうか。


名はアリス・・・・・・。

それが本当の名前なのかは確かめる術などない。

名前などなんでもいい。

小さく身を寄せ、どこへ向かっていったのだろう。

会話を交えたのだろうか。

幾千もの死闘の中、私は感じた。

アリスに感情というものはあるのか。

ただ、何も感じない。

ふと表情は笑っているように見えた。

この少女に私はのみこまれ、

生きているという実感さえ奪い取られた気がした。

これまで、この森で恐怖という存在に狩られ続けられた私から、

恐怖という感情まで奪い去っていった。

そのうち、私も殺戮という行為でさえ何も感じなくなっていったんだろう。

ただ、何も感じない。

何も怖くない。

どこまでもいける気がする。

なぜそう思ったんだろう。

彼女の不思議な魔法の力のせいだろうか。

戦いに明け暮れ、ついた町は

人々が行き交い まるでさっきまでいた世界とは違う風景にみえた。

平穏。そう呼ぶしかなかったのかもしれない。

アリスが私をここに連れてきたのか。

私がアリスをこの国に連れてきてしまったんだろうか。

アリスは遠く指をさした。

私には何を指したのかはよくわからなかった。

アリスはゆっくりと歩き出した。

人ごみが消えてしまったかのように真っ直ぐに。

私はただ、アリスの後姿を見ていたんだ。

ゆっくりと遠くなっていくアリスの後姿をみているうちに

この国の人々は消え、この国でまるで私とアリスしか存在しないような

そんな風景が目の前に広がった。

雑音が消え、人々の姿が消え、この国で二人きりでたたずんでいる。

これが「無」なのか。

ただ一つ。

アリスが歩き出した方向に冷たい石で覆われ

孤独の世界への入り口の様なこの国にそびえたつ城。

その城があった。

アリスはこの城に魅せられたんだろうか。

その城を見ているうちに私の心も動かされた。

私もゆっくりとアリスの後を追い

孤独の世界へと1歩づつ進んでいったのか。

城の門は閉ざされ この奥には何があるのかもわからない。

私に奪われた恐怖という感情が一気に駆け上ってきた。

アリスにも欠落した感情が溢れ出したのか。

私とアリスは城の前で立ち止まり、ただ、冷たい石で覆われた

孤独の世界への入り口の前で、何かを感じ取っていた。

この城の前でアリスは断片的でその時の私には理解できないような話が

永遠と私に繰り返された。


この世の善と悪について。

なぜ、あなたは戦うの?

敵と呼ばれている魔物を狩っているだけだ。

魔物が人間を襲ってくるからだ。

なぜ、魔物は人間を襲うの?

よくわからない。

見たことも無い生物が近づいてきたなら

あなたは逃げるの?それとも殺すの?

よくわからない。

アリス・・・・・・。

人間は他の種族と共存はできないのか?

人間は他の種族には興味がない。

殺しあうしか生きていけないのよ。

アリス。

この城から何を感じる?

「―――支配」


この城を建てた王は何を支配したのかったのだろう。

人を支配したかったのか。

世界を支配したかったのだろうか。

きっと自分自身を支配し誰にも触れさしたくなかったんだろう。

 孤独、孤独、孤独・・・・・・

どこまでも・・・・・・

どこまでも孤独・・・・・・

冷たい石に覆われ 外には出ず

感情さえ奪われ 自分という人間に囚われた人。

支配されたのは誰。

誰も支配できなかったのか。自分さえも。

この城に支配という言葉は存在するのだろうか。

この城に存在するものは何。

ただ、冷たく・・・・・・

この国の人々は何を思い生きているのだろう。

感じる?何を感じる?

アリスは一人で昼も夜もわからないような深き森で

ただ、一人。ただ一人でたたずんでいた。

少女は全てをあざ笑うかのように。

ただ、一人。何もせず、何も感じず、たちつくしていた。

少女の不思議な力は全てを救う事ができる。

孤独?アリスは孤独だったのか。

孤独はどこまでいっても孤独。

私は深い傷を負い、昼か夜かもわからないような深き森で

この少女に光を照らしてほしかったのか。

少女は光も闇も持ち合わせていない。

そう、この城に名前がないように。

アリス・・・。

あなたは孤独だったのか。

私は・・・・・・私は孤独・・・・・・

あなたと一緒だ・・・・・・

アリス。



私は今、「支配」という言葉に狩られ

冷たい石に覆われた孤独の世界への入り口のような城へと向かっている。

仲間?今は仲間と呼ぶしかないのかもしれない。

何千という兵士を手中にし、仲間と呼べる者達と

この城を手に入れ、この世界へ君臨する為に私は向かっている。

孤独にはならない。あなたとは違う。

私は支配してみせよう。私は・・・・・・

アリス・・・・・・

私はあなたに一歩近づいている。

あなたの言ってた事、全てを理解できる。

感情は捨てた。残る感情はアリス。

あなただけだ。

 
       THE END

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