ALICE  3'rd False


暗闇の中で何を感じる事ができるのだろう。

何も感じない。何一つ存在しない。

これが「無」なのか。

光を照らした場所に何を見るのだろう。

照らされた場所には何も感じない。

何一つ存在しない。

これが「無」なのか。

表と裏。両極端に見える存在は

どちらにいきつこうと何も感じることは無く

何の存在さえも許される事はない。

孤独だという事。

ただ、孤独・・・・・・

支配さえ許されないのだろうか。

アリス・・・・・・

私にはわかっていたんだ。

私はこの国に生まれたのだから。


幼き日々を忘れ 故郷を忘れ

自分の存在さえ忘れただろう。

魔物という存在に脅かされ

私は剣をとった。

幾度となく繰り返される殺戮の中に恐怖を感じる。

私はこの世界の中で「生」という感情を実感することを許された。

冷たい石に覆われた城・・・・・・

私にはただの石の塊という存在でしか無い。

支配という言葉は無常にも

剣と交えた日々によりかき消された。

私にはこの街で好きな場所など何処にも無く

ただ、虚しくそびえたつ冷たい石に覆われた城。

自分の気づかない心の奥底で私はこの城から何かを感じとっていたんだろうか。

私はこの国に居る存在理由さえ無かったのかもしれない。

私は逃げ出したんだ。この国から。あの石の塊から。

そして自分さえも。


剣を交え この世界に交え

安息の地へと向かい

世界の果てへと辿り着いたと思っていた。

何も感じる事はなく この世界の存在理由さえ

私にはわかることは無い。

混沌。どこまでも手を伸ばし、私が掴んだ物は感触さえ許されない。

混沌。この世界で感じた私だけが知るただ一つの物。

アリス。

私が見た風景をあなたは見ていましたか?

あの頃、あなたはまだあの町に居たのかもしれない。

この風景を見る前に出逢っていたなら

別の風景を感じる事ができたのかもしれない。

別の風景・・・・・・

どんな世界を見る事ができたのだろう。

幸福という名の世界。

私にはわからない。

もう見る事さえ許されないだろう。

あなたにも見る事はできない。

この世界の中に踏み込んでしまったのだから。

そして昼か夜かもわからない様な深き森。

私に光を照らしてくれ。アリス・・・・・・


この世に創造主は二人も存在してはならない。

支配者は一人。

この世界を変える事をあなたは許された。

創造主が作り出した物。

それはこの世界に必要な物であろうか。

創造主は決して一人しか存在してはならない。

支配者も一人。

私はあなたに支配され

のみこまれる中であなたに光と闇を感じた。

あなたはこの世界を変える事ができる、ただ一人の創造主になろうとしてたのか。

この世界をも支配し、私さえも支配したかったのだろう。

冷たい石で覆われ孤独の世界への入り口の様なあの城。

あの城の前で私には恐怖という感情が再び蘇り

あなたに支配された私の心の奥底で

憎悪と恐怖が徐々に入り混じり

あなたを見ているだけで更に

自分が自分ではなくなる様な恐怖の虜にまでなった。

怖い・・・・・・怖い・・・・・・

私はあなたが恐ろしい・・・・・・

私を支配するな。

怖い・・・・・・あなたが怖いんだ。

何をしようとしている。

あなたは・・・・・・

冷たい石で覆われ孤独の世界への入り口の様なあの城。

あの城の前で私は・・・・・・

私はアリスを殺した。


あなたは創造主であった。

創造主はこの世に二人存在してならない。

支配者は一人。

創造主であるあなたは私という創造主を造りだしてしまった。

創造主が造りだしたもの。

それは更なる創造主。

あなたはなぜ創造主を造りだしたのだろうか。

孤独だったから?どこまでも孤独だったから?

私に支配されるのが怖かったのか。

冷たい石で覆われ孤独の世界への入り口の様なあの城。

あの城の前で私とあなたは気づいたんだ。

支配という孤独に。

私は創造主になろう。全てを支配するために。


動き出した戦争を止める事はできない。

今から起こるあの城での殺戮。

あなたは望んでいたことだろうか。

私は望もう。全てを手に入れるために。

新たな創造主が創造するもの。

孤独にはなれていたはずなのに。

アリス・・・・・・

あなたは孤独だった。

私にはわかっていたんだ。

いつか私はあなたを殺そうと企んでいた事を。
   
       THE END

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