その2


(オレは…何者なんだろうか?)

記憶を失ったイリュームは、ぼんやりとしていた。

今の時点で分かることは、自分の名前と職業だけ。


(オレに住んでる場所は、あるのだろうか?)

(友人は?兄弟は?…分からないことばかりだ。)


自分と周りに関する情報が全て綺麗に切られて消されてしまったような

そんな空しさを感じた。

・・・とそんな時だ。


「あれ?イリュームか?」

ふいに自分の名前を呼ばれて振り返ると、そこには41服の魔術師がいた。

「珍しいな。今日は、一人か?(・・?」

ツンツン頭でこげ茶色の髪の魔術師は、両手に買い物袋を提げていた。

「誰?」と訊くイリュームに

「お前の兄ちゃんのクーリエだ。

そだ、イリューム。買い物袋、持ってくれ」

とクーリエは、持っていた買い物袋の1つをイリュームに渡す。


「兄ちゃん?(・・?」と首を傾げるイリュームに

「うんうん(・・)”」と頷くクーリエ。


何故だろうか?何となく安心するこの空気…。

この人の言ってるコトは、本当かもしれない…。

「さぁ、オレの家までソレ持ってきてね(^^」

と言うとクーリエは、歩き出した。

その後に続くようにイリュームも歩き出す。


クーリエの家…。

「コレ、どこおけばいいの?(・・」と困ったように訊くイリュームに

「台所の側に置いといて。調理に使うから。」と答えるクーリエ。

「よっ…。」とゆっくりと買い物袋を置いたイリュームの視界に

ベットで寝ている男の子が見えた。


「なぁ、兄ちゃん…あれ、兄ちゃんの子供?(・・」

何気なくそう質問したイリュームにビックリしたクーリエは

「違う、違う。あれは次男坊。君にとっては2番目のお兄ちゃん(^^;」

と苦笑で説明した。

「え?じゃあ、兄ちゃんが長男?」とクーリエを指差すイリューム。

「生まれた順序は、最初がオレ。で、次にラファンって名前の長女。

その次が今、そこのベッドで寝てるクロスティア。

君は、4兄弟の『末っ子』だよ(^^」

と優しく解説するクーリエ。

しかし、どう考えてもベッドで寝ているクロスティアの顔は、幼かった。

(世の中って不思議だ。)とイリュームは思った。