『ラファンの日記〜風のウワサ〜』


『○月▽日。

怖い噂が最近、目立ってきました。内容は、課金に関するものでした。

アスガルドが2月か3月ごろあたりに課金されるかもしれないという噂。

それに対して、私は動揺していました。

やっとアスガルドで出来た友達。

そして、その人達と仲が良かったこともあったからです。

でも、根本的にこの時の私は、課金になったら消える運命でした。

しかし、それでもまだ私は心の中であがいてました。

出来ることなら、この噂がなかったコトになってほしいと…。』


アスガルドの世界は、ザワザワとし始めた。

どの町でも課金の噂が聞こえてくる。

そして、課金に関するもっと詳しい情報は、ないのだろうかと

住人達は、少しだけ神経質になっていた。

その空気は、やがてこの世界に来たばかりの人たちでさえも不安にさせていた。

確かな日付を知らされない不安定な日々が続いていた。


ミルレス〜ルアス4 午後6時。

「なぁ。今さっき立ち聞きしてきたんだが、ここもいよいよ課金になるって?」

どおりで町が騒がしいわけだ。と言いながら溜息をつく盗賊。

「どうやらそうっぽいね。」と頷くのは、外はねネコっ毛の髪型の修道士。

「でも、それだけじゃありません。みんな、詳しい日付を知らないんです。

だから、みんな怖いのですよ。…そして、私も。」

とわずかに落ち込んだ様子のラファン。

「ともかく。詳しいことは分からないから、これに関しては様子を見よう。」

というような流れになって、その場に居合わせた仲間はそれで納得した。

このエリアにやってくる魔術師は、その時に居なかった。


次の日の昼間。

狩りにやってきた魔術師にそのことを話すと

「どうなるか分からないけれど、でも様子を見るのはいいかもしれない。」の一言。

「そうだね。(・・」とラファンも頷いて、この話は一時的に終わった。


『課金の噂については、まだまだ不安がありました。しかし、だからと言って

噂に怯えていても何の意味もありません。もし、万が一でもその時が来た時に

その時には、後悔しないようにアスガルドを楽しもうと思いました。』


そう割り切った私にあったのは、単純にこの世界を楽しむ気持ちでした。

いつものようにミルレス〜ルアス4で回復聖をして、そして、時には休憩して

夜になったら、この場所に来る友人達と語らうのが私の楽しみでした。

(今の私はこれで精一杯。今が楽しいし、これ以上何も望むものはないわ。)

友人とおしゃべりしながら、かすかにそう思っていたラファン。


『△月☆日。

ネクソンに異変が起きました。『矛盾』という名の異変です。

これは…一体どうなっちゃうのかしら?』


課金の噂が流れてそして、そのめどが立った頃。

またしてもおかしな噂が矛盾と共に流れてきた。

課金間近になって新しい仕様が出てくるらしいのだ。


「コレってサドだよね。」

夜、ミルレス〜ルアス4のエリアで仲間の誰かが呟いた。

「確かに。いくら何でも課金の1.2週間くらい前に新しい仕様が出るとなると

総スカンくるぞ(−−;」

と呆れた顔で戦士が言った。

「そうだね。」とは言わないものの、その場に居たラファンを含む5人くらいが頷く。

「つか、仕様だして1.2週間くらいで課金なんかやったら、苦情の嵐だ。」

「ということは、先延ばしになるかもってこと?」

「今回のは、責任あるんじゃないの?あちらさんに…。」

と口々に言う人達。


そんな中、ラファンは一人だけ「延期かもしれない。」の一言に期待を寄せていた。


『何だか少しだけ、希望が持てた気がしました。

わずかな希望かもしれませんが、私はそうなってほしいと思いました。

まだ…みんなと話していたいから。まだこの時間をみんなと一緒に過ごしたい。

その気持ちで私は毎日が普通に終わることに祈りました。

明日もまた普通に一日が過ごせるようにと…。』


毎日を普通どおりに過ごしていこうとしているラファン。

そして、過ぎていく時間。

いろんな思いを抱えている人たちと共に過ぎていく日々。

そんなこんなで課金の予定の日付がやってきた。


『▽月△日。

いよいよ今日がその予定日。 私は…覚悟を決めました。

今日、課金が始まることになるにしても、延期されることになったとしても

どちらにしても、結果を見据えたいと思います。』


いつものようにやって来る朝。

ラファンは緊張していた。

消えるかもしれない自分の行く末を知るために…。


『しかし、私が消えることはありませんでした。

私は不思議に思いました。一体何が起こったのであろうか…?と』


その疑問の答えは、意外なことに知り合いの盗賊が教えてくれた

「あっ!やほ。なぁ、訊いたか?課金、ナシになったって(^^」

よっしゃぁ!と嬉しそうな顔の盗賊の言葉にラファンは一瞬、自分の耳を疑った。


(え?今の…課金がなし…ってコトは…まだこの世界にいてもいいの?)

頭の中で出てきた答えにラファンの中の不安が消えていく。

(よかったぁー(^^;))

ほとんど安心しきったラファンは、その場にへたりこんでいた。

「あ、大丈夫か?(^^;」と声をかけて心配してくれたものの

その後5分くらい、ラファンは立てなかった。


『課金がなくなったことに対して、すごく安心してしまいました。

まだこの世界にいることが出来るって思ってしまった私は、現金でしょうか?

とにもかくにも、まずは一安心です(^^』


やっと課金問題が解決して、ラファンはほっと一安心。

彼女の知り合いの人達も同様に安心していた。


次の日からラファンは狩りに行ったり、気まぐれに一日を過ごしたりしていました。

狩りに誘われてPTに入ってはPT仲間と一緒に行動したり。

ある時はソロでルケシオンダンジョンへ向かったり。


『そんな感じで、私は時々狩りに行ってました。

ある日、ルケシオンダンジョンへ行った時のことでした。

私は、とんでもない時にダンジョンの1階に足を踏み入れてしまったようです』


ルケシオンダンジョン1階…。

「はぁ、久しぶりかも(^^」と陽気にやってきたラファン。

しかし、そこで目の前に見えたのは、一人の聖女さんが

ワイキモンキやワイキサマー4匹と戦っているところでした。


(はぅ!助けなくっちゃ!!煤i・・;))と慌ててリカバリを唱えるラファン。

ところが、ラファンがリカバリをかけているのに気が付いたのか、

まだタゲを決めかねていたワイキサマーとワイキモンキが2匹。

ラファンの方へとやって来た!


(えええ?!これじゃ助けられなーい!!煤i・◇・;))

できるものなら『逃げて!』と叫びたかったが、それだけの余裕もナイ!

ラファンは、出来る限り自分の向こう側で戦う聖女にリカバリをかけて

自分にもリカバリをかけて、カルタハンマーで目の前の2匹と戦っていた。

少しして、ラファンをタゲにしていたワイキサマーが一匹、砂浜に倒れた。


(あと1匹!)と思っていた矢先、ラファンの視線の向こう側で力の均衡が崩れた。

サル4匹の威力に力負けした聖女が墓になってしまった。

(うわぁ!煤i・・;))と驚いたのもつかの間。

4匹のサルのタゲは、聖女の近くでワイキモンキと戦っていたラファンへと移動した!


(あぅ…ひっじょーに危険な予感(^^;))

空気の状況から明らかにラファンには不利な状況。

しかし、「助けてー」と墓になってしまった聖女の声で

ラファンは逃げるに逃げれない状況に追い込まれた。


(んー。ここは一つ意識のリミッター切って、やってみますか(^^))

さっきまでの苦笑からは明らかに違う笑顔でラファンは次々と呪文を唱えた。

「クレリックエイド・ホンアモリ・リカバリ・ロックスキン・ブレシングヘルス」

5つの呪文を唱えた直後にサルが襲いかかってきた。

リカバリと補助魔法の効果を有効利用しながら、

ラファンはカルタハンマーでサル4匹を一匹ずつ倒していった。

最後の一匹になったときに再びホンアモリを唱えて、

カルタハンマーを数回ほど打ち下ろす。

数分後。ラファンの近くで4匹のサルが倒れていた。


(はぁ、間一髪ね(^^;))と溜息をついて、周りに危険がないことを確認。

そして、墓の方に向き直ると「リバースでいいですか?(^^」と笑顔で訊いた。

「はい(^^」という返事が返ってきて、リバース発動。

聖女さん、復活。

「今度は気をつけてね(^^」と笑顔で言うと、

ラファンは、ルケシオン町へと戻った。


『◇月□日。

ルケシオンダンジョン1階は、かなり沸いていました。

ヘタをすれば私もお墓だったかもしれません。でも、お墓にならずに済みました。

「今、私がお墓になっちゃったら、あの聖女さんを助ける手立てがないじゃない!」

そう思ったからかもしれません(^^;

でも、やっぱりこれは驕りなのかもしれないと今になって思います(^^;』