『ラファンの日記〜うつろいゆくもの〜』


『思わぬ方向で起きたもの…それは『元、1番弟子の引退宣言』でした。

突然出された引退宣言に私は、頭がクラリと来たのが最初の心境でした。』


「引退してやる!!」とヤケになった彼の勢いは、止められませんでした。

しかし、結果的に3回くらいまでは私と一番弟子の友人仲間が阻止に回り、

食い止めました。

そして、それが阻止される度にラファンは安心しつつも

彼を引退にまで追い込んだ現況に苛立ちを募らせていたのでした。


『本当に、腹が立ちました。そして、引退すると言った元弟子の行動を

食い止めるのは、大変でした。それと同時に精神的に少しばかり疲れました。

「頼むから元弟子を引退に追い込むようなコトをしないでくれ!」と

元凶たちを憎みながら、何度思ったことか。』


ラファンは、その頃。日記の通りに少々疲れていた。

(ああ、もう!弟子を引退させようとした奴らが居たら、殴ってやりたい!)

相当キレていた日もあった。


『しかし、弟子を引き止めるのにも疲れていた私は、次に言い出したら

止めないことにしようかと思っていました。

正直、止めるだけの精神力が限界に近かったのです。

次に引退すると言ったときに

果たして私にそれを阻止するだけの力が残っているか疑問でもありました。』


そして、弟子の4回目の引退宣言。

ラファンは、止めないことにした。

引き止めるのが必ずしもいいこととは思えないほどの理由があったからだった。


『引退することで気持ちが少しでも晴れるのなら、それはそれでいいと思った。

嫌な気分に3回も落とされたのでは、本人にとってのアスガルドは…

この世界は、地獄でしかない。地獄だと思うような場所に縛り付けるのは

本人にとっての苦痛でしかない。そう判断したからです。』


それからだった。

『私は、今日も回復聖をやっていました。

元弟子が消えたのは、悲しかったけれど仕方がないことだ…と思って。』


いつものように回復聖をしていることに飽きたラファンは

ミルレス〜ルアス4から抜け出した。

そして、ミルレスの町に戻ると薬屋でルアスゲートを買って

ルアスに飛んだ。


ルアスの王宮庭園についたラファンは、

すぐさま庭園を走り抜けてサラセンの森へと入っていった。

ごちゃごちゃした気分でいつもの場所にいたくなかったから…。


『何でもよかった。私の気分が晴れる所なら。

何でも良かった。何かすることが出来るなら…。』


サラ森で、ラファンはキキをハンマーで殴って倒していた。

少しでも気分が楽になりたい為に…。


『しばらくキキを狩っていて、妙に空しく感じた。

ソロで狩りをすること自体、久しぶりな気がする。

私…いつから変わったんだろうか?

昔はソロで狩りなんて当たり前にさえ思っていた時もあったのに。

今は何だか、それすらも寂しい。』


はぁ。と溜息を一つついて、ラファンはミルレスゲートを広げた。

ゲートから溢れてくる光と魔方陣の中。

ラファンの姿がサラセンの森から消えていった。


(何だか疲れた…)

ミルレス町に現れたラファンは、そう思った。

(私は…どうしようかな?)

引退の2文字が頭をよぎる。

(それもいいかもしれない。もう何だか疲れた。

バタバタしすぎていて、私にはもう限界だ。)

(引退したい。)

ボーッとした頭の中にそれしか思い浮かばなくなっていた。

けど、その時だった。


『もし、あのときに誰とも会うことがなかったのなら…。

私は迷わず引退していたかもしれません。しかし、その時に知り合いの

仲間が通りかかったコトで私は引退の2文字を取り消すこととなりました。』


「何やってんだ?」と言われて、声のした方向に振り向いたラファン。

そこにはLv1服でLvをごまかしてる盗賊が一人。

「あぅ。ちょっと落ち込んでます(^^;」と苦笑のラファンに

「元気出せ!」と励ましてくれた人。


『まだショックとかはあったけれど、それでも少しだけ元気が出ました。

落ち込んだ状態から立ち直った私は、また前を向いて歩こうと思いました。』


それから時間が経つにつれて、ラファンはいつものように戻っていた。

かなり経って・・・

元弟子は、再びアスの世界へと戻ってきた。


この時だろうか?世界が1.12だったのは…。


元弟子と仲の良かった修道士とは50ヘル時から知り合いだったが、

この時くらいにはほとんど話し友達として、定着していたラファン。

いつものように普通に話しているのが当たり前みたくなっていて、

話していることも他愛ない話題。


『それが当たり前で…でも、何てことない日常の出来事になっていた頃。

Lv1服でやって来た魔術師の男の子がいました。その子を見てると

まるで最初の頃の元弟子と何となく似てるなぁーと思ったのです。』


ミルレス〜ルアス4。

「ねぇ、兄貴!何でここに来たの?」

21服の盗賊を兄貴と呼んで一緒にやって来たのは、Lv1服の魔術師。

「うるさい、ここならお前にちょうどいいだろう。」

と言うと盗賊は、Lv1服の魔術師と一緒にナイトモスを狩り始めた。

そして、その時。ラファンも2人の後ろの樹木の側に立っていた。


(初めて見た人たちですねー。(・・))

何も喋ることなく、2人の様子を見たラファン。

2人の状況を随時見回しながら、回復魔法や補助魔法をかけていく。


「あ、こりゃどうもですw」と盗賊が祈りの動作で敬意を表す。

「ありがとう(^^」ともうひとりの魔術師も祈りで感謝している。

ラファンは考えた。

(どうせなので、狩りしてるトコ拝見させてもらいます。)

口に出して言わず、あくまでも祈りの動作だけをするラファン。


『何となく退屈をしてましたので、誰かが狩りをするところを見たのは

久しぶりな気がしました。そして、私の記憶の中では今日みた2人組のような

様子は、見たことがなかったので、かなり珍しかったです。』


「んじゃ、ガンバレよぉー(・∀・)ノシ」

と状況的に一人で放っておいても大丈夫だろうと判断した盗賊は

足早に走って、ミルレス〜ルアス4を後にした。


「あ。兄貴!待ってくれー!煤i・・;」と追いかけようとした魔術師。

しかし、追いかけるよりも前に盗賊の姿は、こつ然と消えてもういない。

おまけに空は夕暮れ時。

一人残された魔術師は…。

「それじゃあオレもそろそろ帰ります。回復ありがとうね(^^」

とラファンに挨拶するとゲートで消えていった。


『▽月▽日。

盗賊と魔術師の2人組みとミルレス〜ルアス4で遭遇。

回復魔法を使って補佐したものの、しばらく後に盗賊が逃げた。

残された魔術師の男の子がなんだか寂しげに見えたのは、気のせいでしょうか?

それと…何となくですが、あの魔術師の男の子。

またあの場所に来るかもしれないと思うのは、私だけでしょうか?』

と日記帳を書いたラファンは、眠りについた。


その翌日。

昼間ごろにラファンの予想通りに魔術師は、やって来た。


それから来る日も来る日も魔術師は、ミルレス〜ルアス4に来た。

よっぽどやる気のある人らしい。

何となく、その性格が気に入ったラファンは、ある日話しかけてみた。


「あの…。」と言葉をかけると、魔術師はビックリして

「わっ!って、あ…こんにちは(^^;」と苦笑していた。


『何で驚いたのだろうかと思いました。そして、すぐに思い当たりました。

ルアスの森で回復聖がいる・・・と。そして、その回復聖は喋ったりも

するけれど、回復もやっていると…。しかし、そこにある意識は

たまにあったりなかったりするらしいそうです。

もしかして、この魔術師も私をその人と同じものだと思っていたのかな?』


「ごめんなさい。今まで私、黙ってました。NPCの物まねごっこ

やってたのです(^^;」と苦笑して言うラファンに

「そうだったんですか(^^」と笑顔で返事を返す魔術師。

その日から、いろいろなコトを話すようになった2人。


しかし、ラファンにはまだ魔術師に言ってないことがあった。

だが、それにきがつくこともなく、

いつもどおりの一日が過ぎていこうとしていた。


魔術師のLvが22くらいになった頃。

ナイトモスエリアでソロで狩れるようになった頃。

ラファンは、魔術師に補助魔法をかけた。

魔術師がナイトモスのエリアでモスに向かって突っ込んでいった時。

ラファンは目を閉じて眠りについた。

彼女の姿が消えたちょっと後に

ラファンの消えた場所とほぼ同じ位置に一人の男が現れた。

イリュームだった。


「Vっ!」とVサインをして笑顔になるとイリュームは、ナイトモスに

蹴りワザを当てて、倒していた。

でも…その実態は…ラファンだった。

(はぁ、まさかイリュームと同調しちゃうとは…。)

ふむ。と考えているラファン。

しかし、イリュームの意識は眠りこけているので、気が付かない。


(退屈だったんだよねーw)と一計を案じたラファンは

ナイトモスを狩ってる間に補助魔法が切れた魔術師が戻ってきたのをみて

様子を伺った。

「あれ?さっきこの辺りにいた聖女さんは?(・・?」

と訊く魔術師に

「へ?居たの?そんな人。ところで、Lvいくつ?(^^」

とわざとそらっとぼけて質問で切り返すと

「Lv22」と魔術師は答えた。

「へぇ。オレはLv20。良かったら、組んで一緒に次のエリアで狩る?」

と普通に言って、イリュームのフリをするラファン。

「いいね。じゃあPT許可ね。」


その数分後。2人はミルレス〜ルアス5で経験値を稼ぎまくった。


『修道士になることって案外楽しいんですね。

イリュームの体を間借りしたとは言えど、やっぱり楽しいです。

何より、PTを組んで行ったのも久しぶりな気がしました。

でも…やっぱりあれですね。本当のコトを言わないのは、

何となくワクワクする反面。バレたら怒るかな?っていうのも

ちょっとあるかもです。』


それから数日後。

ラファンは、いつものように佇んでいた。

いつもと同じ場所で。

そして、いつも来る魔術師にWIS機能を使って、本当のコトを話した。

魔術師は「ええ?!煤i・・;」と驚いたけれど

全然気が付かなかった(^^;とのこと。


そりゃそうだ。イリュームの意識が無になってるときに同調したし、

違和感ないように男言葉で話していたのだから、無理もない。

「そうだったんだ。これからもよろしく(^^」と言う魔術師に

「はい(^^;」と苦笑のラファン。


『こんな感じで私は、その人と『友達』になりました。

けど、これからずっと先に別な恐怖が待ち構えていました。

とある風のウワサがその原因でした』