君に贈る、巫山戯た作品〜続編(? その2


それから数日が過ぎた。

守護動物は、『またーり聖』になついた。

それはひとえに彼の作る料理が美味しかったからだろうか?
はたまた彼が『優しい人』だと思ったからであろうか?

どちらにせよ、守護動物は彼を信用していた。

ある日のこと…。

またーり聖は、いつものごとく料理を皿に載せて守護動物の足元に置いた。

そして、守護動物がそれをいきおいよく食べているのを見て
その間に目の前の緑の物体のステータスを見た。

(はぁ?!何だコリャ?!)ステータスを見て、またーり聖は驚いた。
目の前で料理を食べてる緑の物体のステータスは、経験値が0。
おまけにLvも1だったのだ。

(普通、外見を維持する人だって、
ここまで経験値上げない人って、早々居ないんじゃないかな??)
またーり聖は、そう思った。

ふぅ。やはりまたーり聖殿の料理は、美味しい。
我輩は、しばし至福の時に浸っていた。

少なくとも蒼とか言う無礼者の騎士よりかは、優しいし
あまり喋らない我輩のはずなのに、言葉が通じているような気がする。

…しかし、どうしたらよいものか? 我輩は、まだ伝えられずにいる。
『狩り』をしていづれは『エルモア』になりたいのだと…。

またーり聖殿、どうかご察し下され。

守護動物の気持ちが届いたのかどうかは、分からない。
だが、それに近いコトをまたーり聖も感じていた。

目の前の守護動物が料理を食べ終わったのを見て、またーり聖は、言った。

「ねぇ、今すぐとは言わないけれど。
他に君にはご主人様がいるかもしれないけれど。
今だけ…僕の家に居る間だけ、僕が君のご主人になっていいかな?」
もちろん、君のLv上げも手伝うよ。と言うまたーり聖。

本当にまたーり聖殿は、気が付くお方だ。
そして、我輩にご主人(ますたぁ)が居ることも分かった上で
Lv上げを提案して下さった。…今までのご恩を返していかねば。

我輩は、その案に賛成することにした。

ジッと自分を見てくる守護動物の目を見て、肯定したと判断し
「いいんだね。じゃあ、今から2時間経ったら狩りに行こう(^^」
とまたーり聖は、笑顔で言った。

それから2時間後…。

「さて、それじゃあ行こうか(^^」とまたーり聖は、
守護動物を掌に載せて、荷物のスロットに入れるとゲートを使った。

メンタルロニア文字で転送の意味を表す言葉の魔方陣が現れる。
またーり聖の家の中、強い光が収縮するとそこには誰もいなかった。

ルアス王宮庭園…。

一つの光が現れた。
光は、人の形を成すと、はじけて消えた。
またーり聖は、懐かしそうにルアス王宮の外観を眺めた。

(久しぶりだ。故郷に戻ってきたのは。)
幼い頃。ここで育ったせいか、妙に郷愁を感じていた。

(さて、そろそろ出してあげなきゃね。)
王宮庭園の中。またーり聖は、バッグの中から緑の物体を取り出した。
そして、それをゆっくりと地面に下ろしてリカバリをかけた。

「ここが僕の生まれた町だよ(^^」とまたーり聖は、にっこりと笑った。

ここは…。思い出したぞ、攻城戦なるものの折に見たことがあった!

そう、忘れもせぬ。我輩をドリル代わりに、
投げたあの忌まわしき場所の入り口へと続く道ではないか!

斯様(かよう)なる場所に再び舞い戻ってこようとは…
むぅ?という事は、我輩は愛しのご主人(ますたぁ)のいる町へと戻ってしまったのではっ!

危機感を感じて少々悩んでいる時にまたーり聖殿は、ルアス王宮を眺めていた。

「ねぇ、リーシャ。今からどこに行くのさ?」
ポチョムキンを肩に乗せたハーレーの手をぐいぐい引っ張るリーシャ。

「どこって、王宮に決まってるじゃない。」
当たり前でしょ。とでも言うようにリーシャは、歩き出す。

「何で僕も一緒なのさ?」と言うハーレー。
そして、ハーレーの肩から落ちないようにしがみついてるポチョムキン。

「もぅ。分かってないわねぇ!今から王宮庭園に行って、スキルを買って
ソレ覚えたら、その足で狩りに行こうってコトよ!!」
リーシャがムスッとした様子で答える。

「だからって、何もそんなに急がなくても…」
いいんじゃないだろうか?と言いかけたハーレーだったが、

「全は急げって言うでしょ!!」とムスッとしたまま、リーシャが言い返す。

(全じゃなくて善だと思うけれど…。)とは思ったものの、
リーシャをこれ以上怒らすと大変な事になると思い、黙るハーレー。

またーり聖と彼ら2人。ポチョムキンとディカンの守護動物。
彼らがどう出会うのか…それは次に続く。