『ナゾの薬、騒動記』 その2


「コンコン、コンコン」と外でドアをノックするのは、

知り合いのトフィという名の盗賊だった。

いつもなら家に居ればすぐにドアを開けてくれるイリュームが

今日に限っているのかどうか分からない。

だが、いつも居る狩場に行っても居ないので、多分ココだろうと

トフィは、予想をつけてやって来た。


「おーい!イリューム、狩り行こうぜぇ!!

オレ一人じゃつまらんから、一緒に狩ろうー!!」とドアごしにトフィが叫んでいる。

トフィだっ!とイリュームは、声で気がついていた。

しかし、今は出るに出られない。

長く伸びてしまった髪の毛と

41服がゆるくなって肩がでてしまいそうになってるトコをみられたくない。

でも、狩りには行きたいっ!!

いろんな思いがイリュームの頭の中でグルグル回る。

(でも、今日はさすがに狩りには行けない。なんとか断るだけ断らないと。)

なんとかそこまで結論が及んで、イリュームはドアのあたりまで歩き出した。


そして、ドアをちょっとだけ開けて

「あのなぁ、トフィ…。」

と説明しようとしたが…。

「イリュームいるんじゃん!やー、会えて、良かったぁ!!」

と言うのと共にイリュームに抱きついた。

いつもこんな感じのトフィだったが、今日に限ってイリュームに抱きついた途端。

違和感を感じて後ろに後ずさり…

「ち…違う。イリュームじゃない!」と目の前のイリュームを否定した。

「は?何言ってんだよ。オレは、イリュームだっての!」

と言って抗議するイリュームに

「えー?イリュームは、そんなに胸ないし、腰だって、そこまで細くない。」

とトフィに言われて、イリュームは自分の体を見た。


(うそぉ、女になってる?!)

困惑した。そんなばかなとも思った。でも、現実で…。

オレは、驚いていた。

「でも、もし、君がイリュームなら嬉しいなぁ。」

トフィの声に意識を引き戻されて、オレの視線がトフィに動く。

「君が女だったら良かったのにって…前に言ったよなぁ。」

トフィと会った頃に言われた言葉。

Lv1服でLvを詐称している時に言われた言葉…。


「君が女の子だったら、彼女にしたいなぁ。雰囲気が可愛いから。」

「ありえないよ。大体、何で雰囲気が可愛いのさ?オレ、そんなに可愛くないよ。

例え、女になることがあったとしても『じゃじゃ馬』だろうね。」

ケラリと笑ってそう答えると

「『じゃじゃ馬』でも結構。口説き落とす自信ならあるね。」

自信たっぷりにそう言ってのけたトフィの言葉を一気に思い出した。


そして、今の自分は女で…。

考えたくないけど、トフィの理想論が実現しちゃったわけで…。

オレは頭を抱えたい気分でいっぱいだった。

でも、トフィは嬉しそうな様子で…それがオレにとっては嫌な予感な訳で…。

「好きだぁ!」と駆け寄ってくるトフィ。


数分後…。

「まったく。(−−;」と呆れるオレがいた。

「イリューム、ごめんってば。(><)」

と謝ってるトフィは、顔に2つの手形がくっきりと残っていた。

「女になっても、もともとの性別は男なんだから、忘れないでくれる?(・・#」

むすぅと怒ってるイリュームは、幼い子供の怒った顔のようだった。

どこか憎めない…といった感じだろうか?

「ゴメンゴメン(^^;」と謝るトフィ。

しかし、彼が反省しているかどうかはまだ微妙だった。


「あ。そだ。トフィ、41の修女の服。買ってきてくれないかな?

この服だと、襟ぐりが大きくて、ゆるいから。」

と少し考えていたイリュームが口を開いた。

「え?」

「お金は後で払うから、よろしく。」と頼むと

「了解。」と言ってトフィは、外へとでかけて行った。

トフィが出かけて行った後、一人残ったイリュームは思った。

女って、ラクなんだか、損なんだか分からんなぁ・・・と。


20分後…。

トフィが修女の41服を買ってきてくれた。

「それ着たら、狩り行こうなぁ。」

と言うトフィを部屋の一室に入れて鍵をかけた。

「えええ?!」と驚くトフィに

「ちょっと待ってて。」

と言い残すと、イリュームは修女41服に着替えてゴーグルをかぶった。

そして、部屋の鍵を開けるとイリュームは、トフィと一緒に狩場へとでかけた。


薬の効果は、バッチリだった。

スキルを以って、目の前のバギにマシンガンキックをかまして倒していく。

しかし、その割にSPはかなりの割合で回復していく。

トフィもノリノリでえぐりやダブルスタブを使ってバギを倒している。

いつもの狩り仲間同士の空気がそこにあった。

でも…。

(もしかしたら、またーり聖も今頃は、女になってるのかな?)

ふとそう思ったイリュームだった。