第22話『困惑』


ルアス町広場…夜。

広場は、夕暮れ時の騒がしさよりも更に活気づいていた。

そんな中、ティアイエルは一人。頭を抱えていた

(私は、どうしたらいいんだろう?)

困惑していた。


…とその時。

ぱたぱたぱたぱた…と幼い聖職者がティアイエルの横まで走ってきた。

そして

「ぱぱー、ままー。いろんなものがうってるよぉ、はやく、はやく!」

と後ろを振り返って、その先に居る親を呼んでいる。

「マリン、いきなり走ると危ないよ。」

「そうですよ。ここで走ると誰かにぶつかって、コケちゃうかもしれませんよ。」


最初に聞こえたのは、多分この子の父親。

でも、次の声は、聞いたことある気がする…。

ふいにティアイエルは、後ろを振り向いた。

そこに居たのは71服の盗賊と同じく71服のミリアだった。


「ミリア。」

「こんばんは、ティアイエルさん。どうかしましたか?(・・?」

少し心配そうな面持ちで、ミリアが訊いた。

「うん…あ。こちらは?」

とティアイエルは、ミリアの隣に居る71服の盗賊を見た。

「私の旦那様です(^^」とミリアは、笑顔で答えた。

「こんばんは、ミリアの旦那のザズです。(^^」

ミリアの紹介が聞こえたのか、優しそうな表情で挨拶するザズ。

(わぁ・・・。)思わず少しだけ見とれていたティアイエル。


ところが…ザズとミリアのスキをついて、マリンが走りだした。

「まったく、困った子だね(^^;」すぐに気が付いたザズが走りだす。

2分後。マリンは、ザズに抱き上げられて一緒に戻ってきた。

「夜は、人通りの多いところを走っちゃいけないよ。」とマリンに優しく諭すザズ。

「だってぇ。走りだしたくなるんだもん・・・ごめんなさい。(・・`」

マリンは、しゅんとして少し反省していた。


「ザズさん、カッコイイね(^^」と笑顔でティアイエルが言った。

「でもね、こうなるまでにいろいろ苦労は、あったんですよ(^^;」

とミリアは、少々苦笑している。

(何かあの子、話したそうな雰囲気あったな…。マリンも退屈してそうだし)

とザズは、ふと閃いて。

「ミリア!今からマリンとルアスの中を散歩してくる。

だから、戻ってくるまで待っててくれないか?!」と提案した。

「分かったわ!でも、狩場にはまだ連れて行かないでね!」

「了解!」と言うとザズは、マリンを抱き上げたまま歩き出した…。


「さて、ティアイエルさん。どうしたんですか?」

ザズとマリンが人ごみに消えたのを見て、ミリアは質問した。

「ディグバンカーでラティに告白されて…その時は嬉しかったけれど、

今日…ガブリエルから…告白みたいなコト言われて、冷たく突き放されて

困惑…してるの。」

まるで不安なコトをぽつりぽつりと言うような感じで、ティアイエルは話した。

「ティアイエルさん。恋愛って何が必要だと思いますか?」

ミリアは、穏やかに質問した。

「自分よりも相手を思いやるコト。」と答えるティアイエル。


しかし・・・。

「ハズレですw」とミリアは、笑顔で否定した。

「何で?」訳が分からないティアイエル。

「確かに相手を思いやることも大事ですが、その前に自分を大事にしなくては。

よく、『相手が幸せって感じればそれで良し。』って思う人が多いですが、

体力が持ちませんよ?それに自分らしさもなくなってしまう・・・。

好きな人と長くいるには、自分を大事にした上で相手を思いやらなくちゃ。(^^」

とミリアは、笑顔で言ってのけた。

「でも、私は・・・っ。分からないの!自分の気持ちが…。」

ティアイエルは、泣きそうな表情だった。


「ティアイエルさん。ラティさんから告白された時と

ガブリエルから告白された時。どっちが心の中に残っていますか?(・・」

とミリアは、質問した。

「え?!煤i・・;」動揺するティアイエル。

「本当に好きな人なら、その人から好きって言われた言葉は

どんな形であれ、心の中に残りますわ。」

とミリアは、優しい口調でティアイエルを見た。


(心に残るもの・・・。)

ティアイエルは、ゆっくりと目を閉じた。

自分の心と向き合うために…。

(私の心は…。)

一つの結論が出たのか?ティアイエルは、再び目を開けてミリアを見た。

(私は…。)

迷いは、なかった。

「あなたに幸の多からんことを(^^」ミリアは笑顔で十字を切った。

「あなたにもね(^^」とティアイエルがミリアに笑いかける。

「お互いにこれからも幸のあらんことを。」

ティアイエルとミリアの2人は、同時にハモってそう祈った。