第14話『ディグバンカーにようこそ』


ディグバンカー…そこにはいろいろな狩場がある。

エレベーターを使って降りた先は『大空洞(だいくうどう)』と呼ばれ、

そこには狩場がいくつか点在している。

しかし、今回の話ではそのエレベーターを使わずに直進して行った

そう考えていただければ、分かりやすいかもしれない。


(全く。狩場じゃなくて町でイチャついてくれ。)

呆れながらズンズンと直進していくガブリエル。

その思考の先にあったのは、さっきの2人のコトが関係していた。


「待ってください!!」

ミリアが慌てて叫んだ。

やっとのコトでガブリエルの足が止まった。

「ミリア。・・・そう言えば、ここは、ドコだ?」

ミリアを見て、我に返った直後。

ガブリエルは、周りを見回して違和感に気づいた。


「何言ってるんですか?ここは、狩場の一つですよ。」

と冷静にミリアにツッコミを入れられてしまった。

そして、オレの背後に嫌な予感が近づいてきた。

即座に振り返ると、そこには吹き矢とヨーヨーを持ったノカンが5匹。

とっさに思いついたのは・・・。


「逃げろーー!!」

オレは、ミリアの手をひっつかんで、猛ダッシュで来た道を戻った。

ミリアは、かぶっていたピンクのピエロ帽をおさえながら宙に浮いていた。

つまりそれだけオレの逃げ足が速かったわけで…ってそれはさておき。


ディグバンカー出入り口エリア…。

オレとミリアは、最初の走り出した地点に戻った。

オレは、荒い呼吸を正常に戻そうと必死になっていたが

宙に浮いてた(?)であろうミリアは

「大丈夫ですか?」と少し心配そうにオレの顔を見ていた。

(そうだよなぁ。こういう風に気を使ってくれるような女のがいいのに。

ラティとかいう奴も物好きな。)

荒い呼吸と共にその言葉が口から抜けたような感覚がした。


「だーれが、物好きだって?」

背後から殺気がした。

(こ…この声は?!煤i・A・;))内心慌てた。

そして、振り向いた。

そこに居たのは、まさしく『不屈の女』…もとい、ティアイエルだった。

「ティア・・・おまっ・・・感情読めるのか?!煤i・A・;)」

思わず『図星的な一言』が出てしまい、しまった!と思ったが、もう遅い。


「ほほぉ、やっぱりそう思ってたのね(・・)+」

一瞬、ティアイエルの目が光った気がした。

(ヤバイ、殺される??)殺気を感じてへたりこんだまま、後ずさる。

ティアイエルは、オレを上から見下すように見ている。

(ああ、こんなコトならノカンに殺されときゃ良かった。)

訳の分からんところで訳の分からん後悔がきた。


と、その途端。オレの中で何かがプツリと切れた。

もはや何もかもがどうでもよくなってきた。

そして、どうでもよくなってきたオレは、ゆらり・・・立ち上がった。

「何よ。やろうっての?」身構えるティアイエルに

「大体、お前何なんだよ。訳わかんねーよ!最初に会った頃にゃ、

いきなりオレに冷たいこと言ってきて。無視して放っときゃ良かっただろ?

なのに、こっちに来た時だって何だよ…まるで偽善者そのものだな。

オレに家のカギと部屋のカギを渡して空き部屋使えだって?

何でオレなんだよ。オレじゃなくたって、いいんだろ?!

それとも何か?困ってる奴を見ると放っとけないって奴か?

とんだご都合主義だな。というより極度の甘やかし過ぎにしか見えん。

まぁ、救ってもらいたいとか願ってる奴からしたら、都合がいいけれどな。

…オレにとっては余計なだけだ。それともうオレには関わるな。」

オレは、今までの疑問と悪口をないまぜにして言ってやった。


そして、持ってた所持金の一部をティアイエルに渡し

「スペルブックの代金だ。」

そういい残して、ティアイエルに背を向けるとミルレスゲートを開いた。

オレの足元に広がる魔方陣。

ティアイエルは呆然として、何も言えなかった。ただ立ち尽くしていた。

オレは振り向かなかった。

魔方陣の光がオレをミルレスへと飛ばす。


次の瞬間、オレはミルレスの町にいた。

(これで良かったんだ。)オレは、ミルレスの青い空を眺めた。

オレの心の中に残ったのは、とてつもなく大きな罪悪感。

『言ってはいけないことを言ってしまった後悔』が残った。

でも、もうそれすらもどうでもいい。

ただ、もうティアイエルには会いたくなかった。

会うのがかなり心苦しく思えたから。

(早くティアイエルのコト、忘れよう。)

(そして、この心苦しい気持ちも…忘れてしまおう。)

しかし、ここにいるとどうしても忘れられそうにない。

スッ・・・と立ち上がったオレは、薬屋の方へと歩き出した。

その先の未来の皆無を思いながら。