第19話『計算外?予想外?』


「君ならそう言うと思ってたよ。さぁ、再びゲームの始まりだ。」

裕也の手に黒い魔力が集約する・・・・・・。


「へっ!またさっきのようにでも投げんのかよ。」

とあざ笑うように皓は、言ってのけた。

「甘いね。こう使うんだよ!」

と裕也は両手の魔力を合わせると、地面に叩きつけた。

闇が地面に広がり、そこからモンスターがうじゃうじゃと出てきた。


「ちっ、ちょこざいな方法使いやがって。エル、補佐よろろ!」

と皓は、エルに呼びかけた。

「了解w」と答えたエルは、皓の方に向き直り

ブレヘル・ブレスキ・ロックスキン・マナエイド・ホンアモリ※1を唱えた。

「よっしゃ!、んじゃ戦ってくらぁ!!」

と言うと、皓は不可視の呪文を唱えて近くの敵から次々と倒していく。


「おー。やるじゃんw」とエルは、その光景を見ながら笑ってる。

「つか、・・・・・・大量虐殺??」向こうにいる皓を見てケンタがぼやく。

「あ、でもヤバイ。」すかさずエルが補助魔法をかけ直している。

「ダメじゃん^^;」慌ててケンタも回復魔法で補佐した。


エルとケンタの影の手助けで皓は、ほとんどのモンスターを倒した。

残るはあと1匹。ノカンおじさんだった。

「よっしゃ!・・・・・・って、うぉ!SP※2足りねー!!」

動揺のあまり皓は、叫んだ。

ノカンおじさんは、容赦なく丸太を皓の頭上に振り下ろそうとしている。


間一髪!!

「リカバリ!!※3」エルが叫んだ!!

SPが一部回復する。

(チャンスだ!)

「えぐり!!」と皓は、メデンで思いっきり一撃を入れる。

ズシャッ・・・・・・。とノカンおじさんは、倒れた。

「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・。」皓は、肩で息をしている。

「疲れたろうね。あれだけ走り回ってただけに。」裕也がクスッと笑う。

「さて、ぼくは逃げようかな。ユウト、行くよ。」

と裕也に引っ張られて出てきたのは、目に光のないユウトだった。


「まてっ!」とケンタは、裕也を追いかけた。

「邪魔されると困るんだよね。」と裕也は、黒い魔力でケンタに攻撃した。

ケンタは、攻撃を避けた。そしてスモールハンマーで裕也を攻撃!

「ガッ!」と音がして、裕也の体がグラリとゆらぎ、倒れた。

「こんなので、ダメージ入れたと思ってるの?」

ゆらり・・・・・・。と裕也が起き上がった。


それからは、ケンタと裕也の2人だけが戦っていた。

ところがケンタは聖職者な為、わずかに不利だった。

ケンタの体にのしかかってくる疲労・・・・・・。

(神頼みとかなんていらない・・・・・・。)

(アスガルドの神なんて信じない。)

殴ったり、殴り返したりの応酬・そして回復と攻撃が続いた。

そんな矢先。エルが口を開いた。


「『この世に流れし時の意志、時間の流れ・人の流れ。

その流れに介在しうるは、光と闇。光よ、今こそ降りきたれ。

聖職者、エルの名の下に・・・・・・。』」

呪文のような独白のようなものをエルは一通り唱えた。

・・・・・・なにも起きない。

裕也とケンタは、相変わらず戦っている。

そうこうしている間に多少は回復したのだろうか。

晧が、走り出していた。

「本当に邪魔だね。消えてくれ!!」

と裕也は、黒い魔力を両手に集約すると、その手でケンタを吹っ飛ばした。

ケンタは、近くの壁に思いっきり背中をぶつけて苦悶の表情で倒れた。

(あ・・・・・・。)エルは目の前で、ケンタや晧が攻撃されてるのを見てしまった。


2人が倒れた後。裕也は、エルの目の前まで歩いてきた。

「何も出来そうにないとは思うけれど、君も倒しておかないとね。」

黒い魔力を右手に集約させて裕也がニヤリと笑う。

(怖い・・・・・・。)恐怖のあまりエルは、立ち上がれない。

「せいぜい、神にでも祈るんだな。」幼い裕也の残酷な顔。

(イア神。どうかご加護を!!)ぎゅっと目をつぶってエルは、祈った。

裕也の右手がゆっくりと振り下ろされる。


「ガッ!!」ふいに裕也の右手が何かで打ち払われた。

「くっ!」と裕也があとずさる。

目の前でさっきまで祈っていたエルが、スタッフで裕也の手を打ち払っていた。

「ほぉ。神が来たか。」クスッと笑う裕也。

「『あなたがここで暴れている影響で町は、メチャクチャです。

だからエルは、私を起こしたのでしょう。』」

そう言って立ち上がったエルの目は、いつもの水色ではなく、桃色になっていた。

「イアだな。しかし、町の影響はどう食い止める?」

クスッと笑う裕也の後ろの水鏡には、ミルレス・ルアス・スオミの町の火災の風景。


「火災は、町の人達がなんとかするでしょう。」とイアは、淡々と言ってのけた。

「ぼくに歯向かうのなら、容赦しないよ?」と裕也は、イアを見据えた。

「容赦しないのは、こちらも同じです。」とイアは、キッと裕也を睨み返した。

そして。倒れた晧とケンタの方へ歩き出して、止まると

「ホーリービジュア※4」と2人の怪我を一気に回復させた。


「あ・・・・・・あれ?」と晧は、ガバッと起き上がった。

さっきまで倒れてたはずなのに、ダメージはほとんどなかった。

「ホーリービジュア」

とエルに乗り移ったイアは、目に光のないユウトにも唱えた。

「・・・・・・あれ?」とユウトは、不思議そうに周りをキョロキョロ見回している。

「う・・・・・・ん。」とケンタが目を覚ました。

「ケン兄ー、大丈夫?」ユウトは、ケンタの近くまで走ってケンタを見た。


「そんな・・・・・・。」裕也は、驚いていた。

「まだこれでも戦うというのですか?」イアの冷たい表情が裕也を見据えていた。


※1 ブレヘル・ブレスキ・ロックスキン・マナエイド・ホンアモリ:    ブレシングヘルスは持続的に体力回復、ブレシングスキルは持続的に気力回復、    ロックスキンは防御力上昇、マナエイドは最大MP上昇、ホンアモリは攻撃力を25%増加 ※2 SP:気力。技を使うときに消費。先生!リアルのSPが切れそうです!とは、少し違う(エ。 ※3 リカバリ:体力と気力を同時に回復する。う〜ん、便利。 ※4 ホーリービジュア:視界回復。簡単に言えば目薬かな?