第20話『イアの通り名』


「そんな・・・・・・。」裕也は、驚いていた。

「まだこれでも戦うというのですか?」イアの冷たい表情が裕也を見据えていた。


「くっ!」と言いながらも、裕也はまだ諦めていなかった。

「『休息のイア』と呼ばれし神が出てくるなんて、計算外だったよ。」

裕也は、笑ってる。

「関係ない。」とイアは、冷たく言い放った。


「イア・・・・・・だって?!」と皓は、エルを見た。

「その通り。私は、ミルレスで聖職者と修道士の神として崇められている※1あのイアです。」

とエルに乗り移ったままでイアは、答えた。

「かみ・・・・・・さま?」

「はい。」

ユウトの質問にも臆することなく、イアは頷いた。


「イアが出てきたのは、確かに計算外。だが・・・・・・。」

裕也の手に黒い魔力が集まる。

「『休息の神』に何が出来る!!」

裕也の手から黒い魔力がイアに投げられた!

イアは動揺することもなく、

「パージフレア※2・ロックスキン」

と呟くように唱えた。


「ドオオォ・・・・・・ン!!!」

黒い魔力がイアに直撃したのとほぼ同時に、裕也の足元に魔方陣が現れた!

「ん?なんだこれ・・・・・・」

と裕也が不思議に思って見た直後に魔方陣は、炎で攻撃してきた。

「うあぁぁぁ!!」

裕也は、かなりのダメージを受けた。


黒い煙の上がる中・・・・・・。

「何か当てましたか?」イアは、冷たい表情でそう言ってのけた。

イアの体には、ダメージのようなものがあまり見えない。

裕也は、動揺していた。

「すっげぇ・・・・・・。」目の前の出来事を見ながら、ケンタがボヤく。


「これでも悪事をなさるのですか?」見据えるようにイアが裕也に訊いた。

「たとえ不利でもやめられないね。」クッと裕也が笑った。

「では、こちらも容赦しません。」

そう言うと、イアは手に持っている『ケインスタッフ』に力を与えた。

杖が変容して、町の神官の持つ『光の杖』に変わる。


「ホーリービジュア」

回復にして最高位の魔法が発動する。

「くあっ!!」

ビジュアの範囲内にいた裕也は、がくっとひざをついた。

「何だありゃ?!」皓は、訳が分からない。

「ホーリービジュアは、普通のプレイヤーには回復魔法として。

闇には攻撃魔法として作用するのですよ。」

イアは、冷たい表情のまま皓に答えた。


「くうっ・・・・・・『休息の神』だなんてウソじゃないか。」

裕也は、ひざをついたまま言い返した。

「『休息のイア』は、この世界で神々の戦争が終わった後に

私が一番最初に眠りについたから、そう呼ばれたのですよ。

そして・・・・・・。」

とイアは、杖をグッと握り

「パージフレア」と攻撃呪文を唱えた。

「うわぁぁぁ!!」と再び攻撃される裕也を見て

「戦争時の私の通り名は、『冷酷のイア』です。」

とだけ答えた。

パージフレアの効果で何かが少しだけ裕也から抜けていった。


※1 当時、ミルレスは聖職者と修道士の二つの職の開始地点でした。    今はサラセンですが・・・・・・ ※2 バージフレア:聖なる炎、敵を焼き尽くす。アウトドアに最適(それ違う