第12話『悪夢U』


「うええええ・・・・・・」ユウトはまだ泣いていた。

「よっぽど怖かったんだな。」皓は、ユウトの背中を軽く叩く。

「うん・・・・・・。くらい・・・・・・ところに水の入った・・・・・・石のいれものが置いてあって・・・・・・。」

ユウトは泣きじゃくりながらも少しずつ話し出した。

「そこに・・・・・・水の中に・・・・・・いっぱ・・・・・・いのモンスターが・・・・・・いて。

モンスターのいちばんうしろ・・・・・・に・・・・・・黒いかげ・・・・・・みたいなのが・・・・・・あって。

こわいって・・・・・・おもったの」と言いながら、ユウトは震えていた。


「(黒い影・・・・・・キナ臭いな。)それで。」と皓は、話を促した。

「こわくなって・・・・・・かくれたの・・・・・・そしたら、何かに見つかっ・・・て。

何かの力で・・・・・・飛ばされて。」

「(何かに見つかった?・・・・・・可能性は低そうだが、怪しい)それで?」

「何かにとばされたぼくは、空気みたくいろんな町を上から見た。

そしたら・・・・・・。町に・・・・・・町に火がついた・・・・・・。最初はミルレス・・・・・・

次にルアス・・・・・・スオミの順に・・・・・・。」


皓にひっついたまま、恐い話をしているユウト。

おそらくこうして一生懸命話しているのが精一杯の気力なのだろう。


「火のついた町から・・・・・・っ、モンスターの声が・・・・・・おどろおどろしい声で・・・・・・

『われらの世界を・・・・・・新しい世界を・・・・・・今のこことは・・・・・・違う場所に・・・・・・

新たなる新天地を・・・・・・理想郷を・・・・・・』って・・・・・・言って・・・・・・た。」

ユウトの中で不安が高くなってしまったのだろうか?


ユウトはひととおり話し終わると、皓にひっついたまま意識が遠のいた。

(ありゃりゃ。かなりいっぱい、いっぱいだったか。^^;)

お疲れさん。と意識を失ったユウトの背中をポンポンと叩いた。そして…

(しまった。リアルが見たら、切れそうな予感が^^;)

何となく危機感を感じたものの、皓はWIS機能※1を作動させた。


(皓:「エル、聞こえるか?」)

(エル:「はい、何ですの?」)

(皓:「今からオレの家に来てくれないか?」)

(エル:「ケンタさんは、どうします?」)

(皓:「連れてきて。多分オレ殺されるけど、それは覚悟しとくから。」)

(エル:「クスッ、了解いたしましたわ。では、今から参りますw」)

そう言って、WISが切れた。

「さて、この現状を何とかせねば。」

皓は、ケンタに殴られないように対策を考えていた。


それから30分後・・・・・・の12時。

「こんにちはです^^」
「よぉ。って、あー!!」

ノホホンなエルとは対照的にケンタは皓の家に入って早々、不服顔。

「リアル、そう怒んないでくれよ^^;」皓は説得しようとしたが

「言い訳マトモじゃなかったら、怒るぞ。」とケンタは冷たい。


「ならば話をするよ。今回集まったのは、エルに分析してもらおうと思ったんだ。」

皓の表情が今までの苦笑から、真面目な顔になった。

「ぶん・・・・・・せき?」いみが分からず、困るケンタ。

「つまり調べることです。」と言うエルにやっと納得できた。

それから先、皓は、ユウトが話した夢の内容をひととおり話した。

エルとケンタは黙って話を聞いていた。


「おそらく・・・・・・予知夢ですわね。」エルがそうつぶやいた。

「予知夢?」

「先のことを夢で見ちゃうのさ」皓が説明した。

「夢などで出てくる水は、無意識の力であったり自分で持ってる力などを表しますから。

更に・・・・・・『今のこことは違う場所に』というのもひっかかる。」

とエルは分析した。

「もしかしたら、『オレやユウトのいる世界』かもしれない。」

ケンタは何となくそう言ってみた。

「だとすると何らかの方法でこの世界から、行っちゃうかもってことか?」

リアルの世界にモンスターが?と皓は、付け足した。


「もしそうだとしたら大変です。なおさらLv上げもしていかねば。」

エルは、キッと皓を見た。

「そうだな。」と皓も頷いた。


「ほぉ・・・・・・ようやっと気が付いたようだな。」

暗闇の中。水鏡で4人の動きを見ながら、『影』はほくそえんだ。

「さぁ、Lvを上げろ。そして、もっともっと強くなれ・・・・・・。

我と拮抗できるほどに・・・・・・。そして、その時が来たら返り討ちにしてくれる。」

『影』は、再び暗い中に消えた。


※1 WIS機能:他のプレイヤーと1:1で話をする事。簡略的に言えば内緒話。