第13話『とりあえず目標かな? エルとユウト』
「しかし・・・・・・。」
話を切り出したのは、ケンタだった。
「やはりまだ時間は、かかるかもしれませんね。」
エルは、複雑そうな表情でそう言った。
「でも、ここでやらないと仕方がない。強くなるためにはこれしか・・・・・・方法がないんだ。」
と皓は、2人を説得していた。
そんな折、ユウトの意識が戻ってきた・・・・・・。
「ぉ。ユウト、起きたか。」
皓は、目をこすってるユウトに声をかけた。
「あ・・・・・・。えと、ごめん。」
ユウトは、皓に引っ付いていた手を放した。
「いいって。それよかユウトに話がある。」
と皓は、真面目な口調で言い出した。
「え?」きょとんとする、ぼく。
「実はこのままだとLv上げの効率が悪いんです。」
そう言ったのはエルだった。
「オレとユウトのLv差がいまのままだと詰まらない。
このままだと、補佐もこれからきつくなってくる。
しかし、Lvを上げないといけない。」
困ったように言ったのは、ケンタ。
「そこでだ。最初に決めたLv40を最初の目標としておく。
そして、これが達成できたら今度は70ヘルを目標にする。」
と皓(こう)は、きっぱりと言い放った。
40と70。その差は約30。普通に聞いただけでも苦労である。
「すごいもくひょうだね。」
びっくりしながらユウトは、言葉の重さを感じていた。
「そして、ユウトとケンタさんを一人ずつ。私と皓(こう)の2人で
Lvを引き上げるお手伝いをします。」
とエルは、静かにそう言った。
「残った方は、どうなるんだ?」ケンタは、すかさず訊き返した。
「もち、その日は休日だ。」と皓は、きっぱり答えた。
「えっと・・・・・・どっちが『さき』なの?」
とユウトは、質問してみた。
「最初は、ケンタさんからです。」とエルが答える。
(やっぱりか・・・・・・。)ケンタは、ガクッと頭を下げた。
「・・・・・・リアルも強くなりたいだろ?強くなって、ユウトの力になりたいだろ?」
と皓は、真面目な表情でケンタを説得にかかる。
(血はつながってないけれど、いじめられたら言ってほしい。)
1年前、由斗に言った言葉を思い出したのか
「うん・・・・・・。」とケンタは頷いた。
「さて、今日はこれで終了。」と皓は、話を打ち切った。
いつの間にか外は、夕暮れ時になっていた。
「ケン兄、皓(こう)。またねぇー。」
「お二方共、また明日です。」
とエルとユウトの2人は挨拶をすると、一緒に家路へと歩いて行く…。
「またなぁ。」
「おつー。」
皓とケンタは、手を振った。
30分後・・・・・・エルの家。
「なんか、すごいことになっちゃったね。」
暖炉のそばでユウトがボヤいた。
「でも、皓なりの考えが何かあるのかもしれませんね。」
さすがに私にはまだ分かりませんが。とエルは、ユウトの隣でごちた。
「なにもかもがおわったら、ぼくは『もどる』のかな?」
なにげなくユウトがつぶやいた。
「おそらく。」エルが頷く。
一瞬、ユウトの顔が暗くなる・・・・・・。
しかし、次の瞬間には少しばかり笑顔で・・・・・・。
「ぼくね、いつもくやしかったんだ。
いつもいつも、言いたいことがいえない。
そんな時には、じゅもんみたくさ・・・・・・『いつものこと、いつものこと。』
そう言ってた。
なんでもかんでも『いいかえしたり』とかしたかった。
だから、『田村由斗』から『ユウト』になった時に『かわれる』って・・・・・・。
思ってた。でも、ぼくはまだ『かわってない』・・・・・・。」
と言うユウトを見て、エルは・・・・・・。
「ユウト。人は・・・・・・そんなすぐには変われない。
けど『少しずつ』なら『変われる』わ。『自分で何を変えたい』かを知り、
どうすればいいのかを考えて、行動にうつせば『変われる』わ。」
とだけ答えた。
(ぼくもいつかは『かわれる』のかな?)
そんな疑問をのこしてぼくは、ねむった。