第11話『悪夢T』


ミルレスの町なかを皓(こう)は、すごい速さで走りぬけていた。

(すごーい、速――い。)驚きのあまり。ユウトは、声が出なかった。

(なんか随分と今日のリアルは、おとなしいなぁ。)

抱えてるのがユウトとは気が付かず、皓はそのまま自宅まで走る。

ようやっと着いた家に入ってユウトを下ろした時点で気がついた。

「ああああああ!!」皓が叫んだ!

「え?」わけもわからずユウトは、きょとん。

「うぬぬ。さすがは、オレのリアルだ。入れ替えの術でも使って

オレをだますとは・・・・・・してやられた><;」


皓は勝手にだまされたと思ってる。しかし、別にケンタがだました訳ではない。

ただ単に皓が3人の位置を確認せずに近くのユウトを連れてきてしまっただけ。

その事実に皓は、全く気がついてない。


「皓。明日になればまたケン兄に会えるんだから、元気だして^^;」

とユウトは、励ました。

「ありがと。そんじゃ、今日はもう寝るかぁ。」

ふっ切れたのか、皓は自分のベットに入って眠りについた。

ユウトはもう一つのベットに入って目を閉じた。

ゆっくりとくる眠気に誘われるように眠りにおちていく・・・・・・。


暗い・・・空間・・・・・・。何だろう?ここ・・・・・・。

水・・・・・・水の入った・・・・・・石のいれもの??

見える・・・なにかが・・・・・・

モンスター・・・・・・いっぱい・・・・・・見たことないものも・・・・・・いる。

モンスターのいちばんうしろの黒いもの・・・・・・。こわい。

『この世界と他の世界をつなぐ計画。まず我らを作りしものたちの国・・・・・・』

かすかに聞こえてくる声。

『・・・・・・だを・・・・・・国へ・・・・・・つぶそう』

ないようは分からないものの、こわい。

それだけは、かろうじて分かった。

『誰だ!』モンスターの1匹がこっちを向いて。

『■■■■■■・・・・・・』何かの呪文を唱えた。

姿の見えないものがぼくをどこかへふっとばした。


『しかし、まさか『夢を通して現実を視る者』がいたとはな・・・・・・。』

ドロイカンナイトがつぶやいた。

『おそらくあの修。今の会話を夢で立ち聞きしているかもしれん。』

『ほ?そんなコトが可能なのですか?』

ドロイカンナイトの一言にハンドカプリコが訊き返す。

『お前は学習能力が低いのか?さきほどの様子を見てまだそう言うのか?』

呆れるドロイカンナイトに

『ははぁ、なにぶん納得いかないさまでして。』と答えるハンドカプリコ。

『もう良い。闇殿より、お呼びがあったぞ。至急来られたし。とな。』

ドロイカンナイトは、そう言い終わると闇の中へと消えた。

『へぇへぇ、全くカプリコ使いの荒いお方だ。』と呆れるように言って

ハンドカプリコも闇の中へと消えた。


重力も何も働かない空気同様な感じで吹っ飛ばされたぼくは

仕方がなく、いろんな町を上空からふよふよ浮いた感じで見下ろした。

どこの町も人通りが多く、往来の人や物売りでごったがえしている。

そのざわざわした町に火の気があがる!!

「?!」ビックリして、炎の上がった町を見た。

最初に炎があがったのは、ミルレス。

続いてルアス・スオミと火の手があがる。

「やだ・・・よ。こんなの・・・・・・。」

火のあがる町。そこから聞こえてくるのは、モンスターの声

『われらの世界を・・・・・・新しい世界を・・・・・・

今、こことは違う場所に新たなる新天地を・・・・・・理想郷を・・・・・・。』

おどろおどろしいモンスターたちの声・・・・・・。

「あたらしい世界・・・・・・新天地・・・・・・。」

ユウトの頭に浮かんだのは、『自分たちの世界』だった。

「やだ・・・・・・やだよ。そんなの・・・・・・やだよぉ!!!」


「ユウト、ユウト。」

ふいに声が聞こえてぼくは、声のする方へ逃げていた。

「ユウト、ユウト。朝だー、起きろ。」

カッと目を開けると皓は、ビックリして驚いた。

「あー、ビックリした^^;ユウト、大丈夫か?なんかうなされてたぞ。」

まだビビリながらも皓は、ちょっと心配そうに訊いた。

夢から一気に覚めて安心したのと、怖い夢に対する恐怖心が

まだぼくの頭の中でごっちゃになっていた・・・・・・。

「どんな夢を見たのかは分からないが、相当苦しそうだったぞ。

もし良かったら相談くらいは、のってやるよ・・・・・・。」

ユウトのベッドの端に座りながら皓は、笑った。


何故か気が抜けたのかもしれない。

ぼくは皓にしがみついて泣いていた。

(よっぽど酷い夢を見たな、コイツ。)

なんとなく皓は、ユウトの様子で悟った。

(でも、今はとりあえず、ユウトが泣き止むのを待つか。)

皓は、それまで何も言わないことにした。

(でも、こうして2人のこと見ると、えらく違うもんだな。

リアルは、寝起き悪くて気が強いのに。

コイツは・・・・・・ユウトは寝起きがよくて気が弱い?

つか、泣き虫と言うか・・・・・・。

リアルがコイツのこと守ろうとしてるのなんか分かる気がする。

けど・・・・・・なんだろうか??)

皓は、何かひっかかるものを感じていた。

(何だろ・・・嫌な予感?? ユウトを見ると何となく不安になってくる。)

ユウトは、いまだに泣いていた。


そして、エルとケンタはいつものように狩りをしていた。

ユウト・皓・ケンタ・エルの4人のうち、ユウトだけが見た悪夢。

果たしてそれは何を意味するのだろうか?

やっと少しだけ出てきた『闇』との接点。

しかし、これがアスガルドでの最初の遭遇になるとは誰も思わなかった。

そう・・・・・・だれも。