第6話


「どういう事か説明しろよっ!」とイリュームは賢者に突っかかった

「実は今と同様の事件があった。」賢者は、語り出した。

今より5年前・・・。

ワシは、いつものようにこの世界の入り口で番人をしておった。

その時だ。あれはリアルの時間で真夜中頃だ。

一人の子供がワシの前に現れた。まだ幼い雰囲気のする男の子だった。

ワシはその時も追い払った。だが、子供はこの世界に入ってしまったんじゃ。

子供は、この世界の住人としてのキャラ登録をしてしまった。

そして、あろうことか自分の使うキャラと会ってしまった。

この世界では自分の持ちキャラと会ってしまうのは、禁忌だった。

自分の持つキャラと会うとこの世界とのつながりが強くなってしまうのだ

そして、この世界から抜け出られなくなる。


老人・・・こと賢者の言葉を聞いて『マリエ』の表情が青くなる。

「その子供は?」とクーリエは訊いた。

「くわしい事は分からないが、どうやらこの世界からは抜け出たようじゃ。

どうやって元の世界へ戻ったのかは未だに分からぬがな。」

賢者は、そう答えた。

「…という事は、その方法さえ分かれば?」と首を傾げるラファンに
「可能性は0とはいえない。」と賢者は答えた


「ちょっとまった!そうなると私はこの世界に??」

とっさに『マリエ』が口を挟む

「そういうことだ。」とクーリエが答えた。

「・・・。」言葉が出ない。その代わりに出たのは涙だった。

「まぁ、なんとかなるさ!」とイリュームは、笑って言った。

「他にも何人か同様の事件があったが、ここの住民になった者もおる」

と横から賢者の冷たい一言が聞こえた

「じじい。こんな時に落ち込ます一言を言うな!!」とイリュームが怒る。

ギャアギャア言い合う賢者とイリューム。

「うっ・・ぐすっ・・・。」と泣くマリエ。

どうしたらいいのか分からず困ってるクロスティアだったが

マリエの近くまで行くと

「マリエ・・・さん。今すぐって訳にはいかないかもしれないけれど
でも、みんなでいつか戻れる方法をきっと見つけるから。だから元気出して」

と励ましの言葉をかける

「うっ・・・うっ・・・うわああーーん!!」

とマリエは、クロスティアにしがみついて泣き出した。

「オレじゃないのか、残念。」とイリュームが横からボソリと言った。

「・・・。(^^;)」と苦笑の体でクロスティアがイリュームを見る。


「さて、ワシはそろそろ消えるか。ここにいてはいけない存在だしの。」

そう言い残すと、賢者は消えた。

「じじい。消える時だけは、速いのか」イリュームが毒舌を吐く。

「コラ、イリューム。賢者殿に向かって失礼な(^^;」
「いいじゃんか。消えた後だし(・3・)〜♪」

クーリエのたしなめの一言にもイリュームは、ケロリとしてる。
こういう所は、肝が座ってるのかもしれない。


マリエがようやく泣き止んだ。

「クロスティア、ありがとうね^^」
「いえいえ^^」

クロスティアに礼を言うと、マリエは4人に向き直った。

「初めまして。この世界のコトは、いつもパソコンの画面上から見ていたわ。

さっきは取り乱しちゃって泣いちゃったけれど・・・でも、今になるとね。

ホントはちょっとだけ嬉しいの。」

「?」と4人が疑問系な顔でマリエを見る。

「私ね。この世界がとても好きで…この世界に入ってさ。

こうしてみんなと話してみたかったの」

と嬉しそうに話すマリエを見て

「じゃあこの世界の住人にでもなる?ついでにオレの彼女に・・・。」

とイリュームがさり気に言ってのけた。その直後!!

イリュームの足元でパージフレアが作動した!

「あちち・・・ラファンだな?!」とイリュームは、ラファンを見たが

当のラファンは、イリュームを無視した。

「何はともあれ、あなたを元の世界に戻すまで私たちは頑張りますわ。」

イリュームを完全にシカトし、ラファンはマリエに笑顔で言った。

ラファンの笑顔はとても優しげで、安心感のようなものがした。

「はい^^」と思わずマリエも笑顔になった。

すこしだけ、不安の消えた夜でした。