第5話


「くしゅん、くしゅん。・・・風邪かなー?」

当の毬絵は、自分が噂されてることに気が付いてない。

「チッチッチッチッ・・・」

とわずかに聞こえる時計の音に振り向いた。 現在、午後10時50分…。

「大変!もう寝ないと!!」と慌てて毬絵は、ベッドにもぐりこんだ。

睡魔がゆっくりと降りてくる

毬絵は、眠りに落ちていく・・・。


スウッ・・・と目を開けると、毬絵の目の前は真っ暗だった。

(私、夢を見てるんだ・・・。)

周りを見回した。辺りは闇が広がり、光らしきものはない。

(こわい・・・でも、なにか・・・ドキドキする)

不思議な気持ちで闇の中を歩き出す。

(どこかで見たような気がする・・・どこで見たんだろう?)

悩みながら、毬絵は闇の中を歩く。すると、一人の顔の見えない老人を見た。

杖にくくりつけられたランタン・体全体を覆うような布の衣装

まるで、タロットカードに出てくる『賢者』だ

そう思っていた毬絵を見た老人は、目つきが厳しくなった。

「お前さん、悪い事は言わん。今からこの闇を抜けて出て行ってほしい。」

老人はあくまでも注意するようにそう言った。

「この先に何があるの?」

「この先は、電子の世界。お前さんのような現実に体を持っとるものは
この世界に入れてはいけないというルールがあるのじゃ。」

毬絵の疑問にそう答えた老人は、わずかに毬絵を警戒していた。

「ふーん。」と毬絵は頷いた。

入るな!と言われると、逆に入りたくなるものだ。
老人の背後にある3つのドア・・・。

毬絵の記憶の中で言葉が浮かぶ

「『アスガルド』・・・。」

その直後に3つのドアが「バタン!」と音を立てて開く

「『イアサーバ』」

毬絵の言葉が鍵となり、毬絵はイアサーバの方へと吸い込まれた。


毬絵が消えた後、老人はあっけに取られた

「大変じゃ。早く連れ戻さねば!!」

我に返った老人は、後を追うように『イアサーバ』へと消えた。


だだっぴろい平原。

知ってる。ここは最初の場所。

毬絵はためらうこともなく、入学案内の女性に声をかけた。

全ての情報を聞いて、学校を出る。

職業案内の女性に聖になることを伝え、ミルへと向かった。


ミルレス町・・・。

(なぜだろう?何か感じる。)

謎に思いながら手を見ると、右手から糸のようなものが見えた。

そして『糸のようなもの』は、ある場所へと伸びていた。

(この糸の先に何かが・・・。)

何となくそんな感じがして、毬絵は糸の伸びる方へと歩き出した。

『マリエ』という名の聖職者として・・・。


一方、そんな事とはつゆ知らず

毬絵の持ちキャラ4人は、ミルレスの武器屋地域の民家でダベっていた。

「今日ナイトモス行ったら、『助けて』ってナイトモスの集団から
追いかけられてる奴がいてさー。お掃除してあげたよ。」

とイリュームが楽しそうに話している。

「掃除ねぇ。私もノカン村で清掃活動してたわよ。
・・・ディドスープ50個も落ちてたのには、驚いたけれどね。」

と言ってるのはラファン。

・・・とその時。

「ギィ・・・。」と木の軋むような音と共にドアが開いた

4人が瞬時に警戒する。

ドアを開けて入って来たのは、『マリエ』という名の女性。
外見は、まだ入ったばかりの人だと分かるような格好だった。

「迷子かい?」とクーリエは、言葉を投げかけた。

クーリエの名前を見た途端、『マリエ』は驚いた。

そして・・・。

「クーリエ?…ってことは、そこに居る聖は、ラファン?
修のカッコの子がイリューム。…ってことはクロスティアもいるの?!」

そう言って「あっ」と『マリエ』は、口を抑えた。

「クロスティアは、僕ですが?」と出てきた戦士を見て

「わぁー!クロスティアだぁ^^」
とマリエは、クロスティアの両手を掴むとピョンピョン飛び跳ねた

「???」と訳も分からず、一緒に飛び跳ねてるクロスティア


とそこへ老人が「シュッ!」と現れた

「遅かったか・・・。」

目の前の光景を見て、老人はガックリとうなだれた。

「賢者殿、これは?」とクーリエが聞いた

「もはや、うすうすとは感付いておるか?」そう訊く賢者に
「ええ、まぁ。ちょっとは」とクーリエは頷いた

「もはや、どうすることも出来ぬ。」と賢者は諦めると同時に

「ここにいる者達よ、君たちだけには真実を明かしておこう。
君たちと今同じ空間にいるこの『マリエ』は君たちのリアルじゃ。」

と語り出した。

「えええええ?!」

クロスティア・ラファン・イリュームの3人が驚く。

「どういうことだよ、説明しろよっ!!」

驚きから早く立ち直ったイリュームが賢者に突っかかる。

「どうやら、同じ事件がまた起こってしまったようじゃ。」

賢者は、溜息と共に語り出した。