第10話


マリエの意識が眠ったままになって、3日が過ぎた。

けど、まだマリエが起きてくる様子はなかった。

マリエの意識はまだアスガルドの中にあった・・・。


真っ暗闇の世界・・・。

ゆっくりとマリエは目を開けた。

「気が付いたようじゃな。」目の前の賢者がマリエを見て言った。

「私・・・。」ぼんやりとした感じを引きずってるマリエ。

「君は、アスガルドの世界に呼ばれたようじゃ。

アスガルドは、この世界をこよなく愛するものを時として呼んでしまう。

じゃが・・。」

と老賢人は、口ごもり

「この世界は、『体』を持ちうるものには向かない世界だ。

もともと、『現実に体を持つ者』がこの世界でキャラとなると

いろいろと厄介なのじゃよ。『作られたキャラ』には存在しない

『痛覚』・『視覚』がある上に一旦入り込むと、『世界の停止』が起きても

おっと失礼。君たちの世界の言葉で『メンテ』というものじゃな。

それが実行されたとしても、『体を所持する者』は休眠してしまうんじゃ。」

と言いながら、老賢者は溜息をついた。

「それって便利じゃない。」マリエは、いいなぁと嬉しそう。

「バカモン!『現実に体を残している』という事は、極めて危険なんじゃ!

長い間、体に意識が戻らないと現実の体が持たずに死んでしまうわい!!

現にそうなって現実の方が滅びてアスの住人になった者も居る。

汝もそうなりたいのか?!」

と怒り口調で叱られて、マリエはショボンと落ち込んだ。

(死ぬのは、こわいよぉ^^;)

マリエの思考が読めたのか、賢者は・・・。

「さぁ、帰るが良い。人の子よ、次はけしてこの世界に魅入られるな。

もし、また同じような事あれば、ワシは何としてでも関与はしない」

賢者は冷たく言い放った。

「帰るけれど、最後にワガママ言っていいですか?」

そうマリエは言った。


アスガルド・イアサーバ、ミルレス森の中

ミルレス〜ルアス4

「ここにいましたか。」後ろから声がした。

しかし、クロスティアは振り向かなかった。

森の中でへたりこんで動かない。

「マリエの件で話す事があります。」とラファンは一応言った。

「姉さん、放っといてください。」とクロスティアは呟いた。

「そうもいきません。」ラファンは、クロスティアとPTを組んだ。

そしてミルレスリンクを使った。

2人の姿は、森の中で消えた・・・。


数十分後、ミルレス薬屋地域のとある民家。

「クロスティアを連れてきました。」

とラファンは、クロスティアの腕をグイグイ引っ張って民家に入った。

「ご苦労様。」とクーリエは、言葉を投げかけた。そして・・・。

「クロスティア。賢者殿から、みんな宛てに贈り物がきた。

君にもあげるつもりで呼んだんだ。」とクーリエは説明した。

「いらない。」クロスティアは拒否した。

「マリエからのものなんだとさ・・・。」イリュームが耳打ちする。

「え?何?」ビックリして顔を上げる。

「コレです。」と渡されたのは『手のひらサイズの小さな白い石』。


「???」と訳も分からず、きょとんとするクロスティア。

・・・とその時。石が光った。

(・・・。)頭の中に聞こえてくる音。

思わず意識を集中してみる。

(…クロスティア、最初見た時驚いちゃった。でもね、想像してたとおりの人で
結構嬉しかった。イアでは育てる事が出来なくてゴメンね。

君をロオに作ったのは、セトアの世界にはあまり人がいなかったからよ。
あんまり人の居ない寂しい場所に移すのはキツイと思ったから。

さっきは悲しい思いをさせてゴメンね。でも、現実にもどったら
その時はまた。ロオであなたのLvも上げる予定よ。その時はヨロシクw)

石は、光を失い 元の白い色に戻った。
クロスティアは、少しだけ元気になれそうな気がした。


「その石は、色違いで私たちにもありました。それともう一つ。」

とラファンは、野球のボールくらいの大きさの石を出した。

そして外に出る。他のみんなも外へと出た。


ちょうどいいかな?と場所を見計らってラファンは垂直に上へと石を投げた。

石は、フワリと浮かぶと話し出した。

『クーリエ・ラファン・イリューム・クロスティア。

みんなのことは、これからもパソコンの画面から見てるから。

もうみんなと話す事はないけれど、でも、これからもみんなと共にいるから

アスガルドの世界を通して、みんなといるから。だからみんなも力を貸して。

私と共にアスガルドの未来を見ていこう。』

言葉はそれで終った。石は、何も無かったかのように地面に落ちる。


「つまり、この世界の語りべとなれと?」
むむ?とでも言いそうな表情でクーリエは、考えている。

「まぁ、それもいいかもしれませんね^^」とラファンは、にこにこ笑ってる。

「ま、何とでもなれ〜w」と楽天家なイリュームだったが、

「はよ、オレのLvに追いついてこい♪」とアプサラスにからかわれてる。

「悔し過ぎっ!つか、いつかその余裕ヘコます!!」
と悔しさのあまり、イリュームが宣戦布告するが、

「ま、お前がオレと同じLvになるまでまっててやるさ」
とアプサラスはケロリと言った

「何だとー!!!」とアプサラスとケンカするイリューム。

ケンカする2人を軽く無視したクーリエは、クロスティアを見た。

(立ち直ったか。)そう思うと、安堵の表情になった。

クロスティアは、もう前を見据えていた。

今、なにをすべきかを探すために・・・。