最終話 『その後・・・』


毬絵が起きなくなって4日目の朝。

毬絵は、ゆっくりと目を開けた。

白い天井・・・周りを見回すと、そこはいつもの自分の部屋。

(戻ってきたんだ…。)

目覚ましを見ると、まだ朝の5時・・・。

(また寝よう・・・。)

再び毬絵は眠った。


「ジリリリリリリ・・・!!」目覚まし時計の音。

「ジリリリリリリリリリ!!・・・リンッ」音を止めて起きる。

いつもの日常。やっと帰ってきた。

今日から普通が始まる。いつもと変わらない日々が。


「おはよう。」
「あ、おはよう。3日間も学校休んでたから心配だったよ。」

学校に来て早々、ビックリした。

(はい?!3日間?!!)動揺している私に友人は・・・。

「ビックリするよねぇ。私も驚いちゃったから^^;」と苦笑する。

(アスガルドの時間と現実のこっちとは差が大きいんだ^^;)

そう思った。


授業が終り、私は家に帰った。

今日もキャラのLv上げをやる予定だ。

アスガルドをクリックして、起動させる。

賢者のおじいさんが、長々と話すところを飛ばした

シューッと白い光が『Asgard』の文字を描く。

その後に出てくる3つの文字・・・。『Connect』を選んでクリック

さて、今日はどこのサーバに行こうかな?


数年後・・・。

今日もリアルの毬絵は、アスガルドを終えて、ログアウトした。

ログアウト確認後、パソコンの電源をOFFにした。


その数分後。

毬絵のキャラ達が動き出した。

ラファンは、最近出来た知り合いや彼氏と楽しくおしゃべりしている。

クーリエは、民家の一角で窓を開け、椅子にもたれながら本を読んでいる。

イリュームは、アプサラスとまたケンカ。

「いつか追い抜いてやる!!」悔しさのあまりまたしても宣戦布告。
「期待しないで待ってるよ。」アプサラスは、ニッコリ笑う。

「きー!その余裕が許せん!」とムキになるイリュームだが
「あはは。まだまだガキっぽいな。イリュー。」とまたしても笑われた。

(ま、ガキっぽいところが面白くてからかってるんだがw)
そんなアプサラスの考えてる事が読めたのか

「あー!またガキだと思ってやがんなー!!悔しすぎ!!(><)」
とイリュームは地団駄をふんでる。

イリュームとアプサラスのいさかいは、この後も延々と続く。

残った一人は・・・あれ?いない。

4番目のキャラ、『クロスティア』。

彼は、今から3年前にロオサーバで修行を積み、今は70ヘルに到達していた。

以前は子供っぽい考え方しかできなかった。

ところが今は、冷静さも入って以前より子供っぽさが抜けていた。

そんな彼も、以前までは居なかった『友人』が今は、ロオにたくさんいる。

「ねぇ、クロスティア。あの話を聞かせて、聞かせて。」

クロスティアにそう言って集まる者。

「いいよ。」と言うと、クロスティアは語り出した。

自分や他のキャラをいくつか使い分けてるリアルのこと。

そのリアルがひょんなことから、この世界に来てしまったこと。


「ねぇねぇ、クロスティアはその人のこと、どう思ってたの?」

話を一通り聴いた人達の中から1人がそう質問してきた。

「今でもそれは分からない。けど、あの人は優しい人だったよ。
そして、僕が今のようになるためのきっかけを与えてくれた人。」

そう言って、クロスティアはふと呟くように・・。

「もしかしたら、僕のリアルは僕を変えるために来たのかもね・・・。」

と言うと「なんかいいね。カッコイイじゃん。」と反響がきた。

「そうだね^^」とクロスティアも笑顔で頷いた。


強くなりたい!・・・その思いは今も変わらない。

けど、ただ強くなるだけが良い訳じゃない。

それに、今ならきっと分かる気がする。 

マリエが自殺のようなことをした意図も・・・必死に考えていたんだ。

戻るためにどんな方法があるのか考えて・・・みんなに気が付かれないように。

家を飛び出したのは・・・みんなに追われ、止められるのを想定していたんだ。

今になって考えて分かる事実。目の前で見た残酷な現実。

そしてもう戻らない過去。


(全ての過去を僕は忘れない。この身が消える日が来るその時まで・・・)
クロスティアは、そう決意した。


―この世界は『現実に体を持つ者』は、入ってはいけない。それがルールじゃ。

ルールを破れば、汝はこの世界に魅入られるであろう―

                           =終わり=