Please sing your name for me.Y


 パーティーの件が片付くとプリスは何やら「見せたいものがある」と二階に上がっていってしまった。

「それじゃあ、私たちはミーティングがあるから。プリスのことくれぐれも頼んだわよ」
 そう言ってアストラたちも戦士と聖職者の二人組みの居るテーブルへと移動していく。

 聖職者の方は何度か顔を見たことがあった、
 カディナルモスティックを着たその男がクラウスだろう。

 戦士のほうは初めて見る顔だった。
 ガーディアンチェインアーマーに身を包んだ男は身のこなしに隙が無い。
 相当の使い手に違いない。

 俺は師匠たちの方に眼を向けた。カウンターの席に座り夫婦で団員たちを眺めている。

 師匠の妻、高位法衣服ラナーベストを着た女性、
 エステル=アルドールは若くしてミルレス神殿で司祭の地位を持つ高位聖職者だ。

「F」の副団長でもある彼女は男性団員に圧倒的な支持を得ていた。
 一部ではファンクラブまであるという。

 それもそのはず。プリスにして女神様と言わしめるその美貌は、
 結婚していてなおどこぞの貴族から求婚されるというほどだ。

 そうしている間に、バタバタと階段を下りる足音が聞こえた。

「見て見て! アル」
 そう言って姿を現した彼女を見て俺は絶句した。

「お前。それ……」
 彼女は服を着替えていた。

「じゃ〜ん! レイムドラゴンマスターブレイス! 昨日露店で買ったの」
 どこかの少数民族の民族衣装を思わせる高位詩人服。それも光服だ。

「どう? 似合うかな?」
 そう言ってくるりと一回転。

「それ……、いくらした?」
 俺は動揺を隠せない。そうそう市場には出回らない代物だ。

「えぇっと。秘密っ」
 ぺろりと舌を出してウィンク。
 本人はうまくごまかしているつもりなのかも知れないが、世の中そんなに甘くない。

「い・く・らだ!?」
 普段から目つきが悪いと言われている眼光をさらに凶悪にする。

「うぅ……。ごっ、ごひゃくまんです」
「ぐはっ」
 かるく全財産の五分の一が吹き飛んだ計算になる。

「あれほど俺が無駄遣いはするなと――」
「だって必要なものでしょ。蒼竜を相手にするならこれくらいのものが無いと」
 プリスが俺の言葉をさえぎる。確かに正論だ。

「ぬぅ」
「それに、竜を倒せば問題ないでしょ」
「う、うむ……」
 そう、竜を倒すことが出来れば報奨金が出る。

 一千万グロッド。二人だけで倒すことが出来れば山分けで一人五百万グロッドだ。
 収支はとんとんだ。

「まぁいい。作戦会議やるぞ」
「まぁいい。じゃない! 似・合・う? どうなの? はっきり言ってよ」
「に、似合う」
 俺は不承不承頷く。

「なんで目をそらしながら言うかなぁ」
「……それより、作戦会議だ」
「むぅ。分かった」
 ようやく彼女は腰を下ろしてくれた。