古の賢者達〜第12話〜


やっと眠りにつけた俺を起こしたのは、愛らしい声ではなかった。
空気をも凍て付かせるような、張り詰めた殺気。

身を起こすと、どこから流れてくる気配なのかは分かった。
ゆっくりと立ちあがると、見習たちを起こさないように気を付けながら、
その方向へと歩いていく。

曲がり角をひとつ曲がると、そこには3人が立っていた。
ルーク、サーディアン、そして、セリス。

「おはよ、5匹だけ・・・・か?」
「そうみたいね」

目の前にいるモンスターは”スパティ”
上半身が、人間の女性。
下半身が、カタツムリというモンスターだ。

俺と、ルーク、そして、サーディアンは、このモンスターが嫌いだ。
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「じゃ、俺が3匹引きうけるから、残り2匹頼む」
ルークとサーディアンにそういって、俺が呪文の詠唱に入ろうとすると、

「そんなことしちゃダメ!!使えなくなるでしょ?」
と、セリスの静止が入る。

”う”・・・・・やっぱり・・・・・・”

男三人は、あきらめたようなため息をつくと、本当に嫌そうに武器を構える。

「なぁ、ルーク。なんでセリスが起きる前に片付けなかったんだ?」
言っても仕方ないと思いながらも、言わずにはいられない。

「俺より先に、セリスが気づいたんだよ」

3人は、再びため息をつくと、目の前のモンスターに八つ当たりした・・・・・
できるだけ優しく・・・・・

「あれ?今日はセリスさんが作ってくれたんですか?」
目を覚ましたルーシアが、あたりに漂うシチューの香りに気がついて言った。

「たまには女らしいところも見せないとね」

はにかみながら言うセリスの傍には、
見習の男連中が集まって、口々に”うまそう”とか言ってる。
やがて、シチューが完成し、それを、各人がよそっていく。

「あれ?お師匠様達は食べないんですか?」
ルーシアは、少し離れたところにいる俺達に気がついてそう言ってきた。

「いらないんだって。まったく・・・・作り甲斐がないんだから・・・」
セリスのその語尾に、早速食べ始めたやつらの
”うまい”という言葉が重なる。

ルーシアも、一口食べて”おいしい〜〜〜”と顔をほころばせている。

俺達3人は、離れた場所でシチューを視界に入れないように気を付けながら、
乾燥肉を削り出して、食べていた。

「なぁ、レイク、”あれ”はどうしたんだ?」
不意にルークが言ってくる。
もちろん、何を刺して聞いてきたのかは分かった。

「ファイアストームで完全に灰にした」
おかげで魔力がほとんどなくなってしまっていて、体がだるい。

「そっか・・・・・
 あいつらにシチューに入っているものを告げるのは城に帰ってからのほうがいいな。」
セリスを眺めながら言うルーク。

当のセリスは、女の子達から、シチューの作り方を聞かれている。

「お城に帰ったら、ゆっくり教えてあげるね」

・・・・・・・・・・・・

俺達と、なにも知らないあいつら。
どっちがより幸せなんだろうな・・・・・

そんなことを考えながら、俺は削り出した肉を口に運んだ。