古の賢者達〜第11話〜


ぱちぱちぱちぱち・・・・・
スオミダンジョンに、薪の爆ぜる音が響いていた。

あの後、俺達はセリスとサーディアンの連絡を待ってから、
スオミダンジョン地下27階に降りていた。

この階には、遠距離攻撃をしてくるモンスターも、
物陰から、不意打ちをしてくるモンスターもいない。

気を抜きすぎなければ、どうということもないので、
冒険者達の休憩場所ともなっている階だった。

ヒルダは、この階に下りたとたん、
安心したのか、ジークに抱き着いてずっと泣いていた。

”無理もないか・・・・・・”

下手をすれば、死んでいたのだし、
彼女は今14歳だと聞いた。
平然としていたほうが、不思議だろう・・・・

俺達は、ここで、予定通りの野営をすることにして、
軽い食事をとった。

必死に戦っていた見習達は、お腹が一杯になると、すぐに眠りについた。

「それにしても、ジークが”プレイア”なんて扱えるなんてな」
見張りの交代にと、起きた俺に、
最初の見張りに立っていたルークが話しかける。

「まったく・・・・・・こいつらには驚かされるよな・・・・」
ジークだけではない。
さすが、各師匠の秘蔵っ子だけあって、かなりの戦闘能力を見せていた。

そうでなかったら、
ヘンスタに囲まれたときにあれほど長くは耐えられなかっただろう。

”それならそれで、早めに退却ができただろうけど・・・”

苦笑を漏らす俺に、ルークも苦笑で返す。

「ったく・・・・中途半端に戦えるから、
 サーディアンの修行にならないな〜〜〜」
「まったくだ」

”じゃ、俺は寝るから”

そういって、ルークは、仮眠をはじめた。
すぐに寝息が聞こえ始める。

”ったく・・・・・寝つきのいい奴・・・・・”

「レイク?」
俺のそばで寝ていたセリスが、不意に声をかけてきた。

「ん?まだ交代の時間じゃないし、寝てていいぞ?セリス」
「ん〜〜〜〜〜〜〜」

答えになってない声をあげて、セリスが俺の隣に座った。

「何だ。寝つけないのか?」
「そう・・・・でもないんだけど・・・・・」

「ん?」
不思議な気分で、俺がセリスのほうを見ると、
顔を膝に埋めたまま、セリスが告白をはじめた。

「前に・・・・・・・パンプキン族の大群に攻められたとき。
 夜中にカルディス様と話してたよね・・・・」
「ああ・・・・・」

「あの時・・・・ドアの外で、話し聞いちゃった・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
黙り込んで、薪を見つめている俺。

「ごめん・・・・・・・・ごめんなさい・・・・・」
「何で謝ることがあるんだよ」
苦笑をもらしながら言う俺に、セリスは”ごめん”と何度も謝った。

「聞かれてまずい話じゃなかったし・・・・・
 まぁ、ルーシアにはまだ話す時期じゃないと思うから、
 あいつにだけ黙っててくれたら、それでいいよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・」
「さぁ・・・・もう・・・・」
”寝ろ”といいかけた俺をさえぎって、セリスが言葉を投げかけてきた。

「ルーシアちゃんがレイクの弟子になったときね・・・・」
顔を上げ、炎を見つめながら言うセリス。

「ああ・・・これは神様が私に罰を与えたんだな・・・って。
 そう思ったの・・・・・
 今まで、勇気を持たなかった、私に対する罰」

その顔は、どことなく悲しそうだった・・・

「でも、あの時話を聞いて、
 神様がもう一度チャンスをくれたのかな・・・・って」

「何のことだよ・・・・意味がさっぱりわからないぞ?」

”こんな思いつめたセリス・・・・はじめてみるかもな・・・・”

「私は、あなたのことが好き・・・・・
 見習いのころからずっと・・・・・
 聖職者と、魔術師は生き方がまったく違う。
 だから、あきらめるしかないと思ってた。
 ううん・・・・そう自分に言い聞かせてた。
 だけど・・・・・・・・・・・・・」

「セリス・・・・・」

こいつはこんなことをずっと言えずにいたのか・・・・
ずっと、苦しんできたのか・・・・・
でも・・・・・

「ごめん・・・・・
 今すぐに、お前の気持ちに応えることはできないよ・・・
 せめて、ルーシアが独り立ちするまで・・・・・
 それまで、答えを待っててくれないか・・・・」

「そう・・・・言うと思ってた」
いつもの微笑を見せて、言うセリス。

「私はいつまででも待つよ・・・・
 それで振られることになってもいいの。
 ただ・・・・自分の気持ちを伝えたかっただけ。
 ごめんね、オヤスミ、レイク」
そういうと、セリスは再び眠りについた。


見張りの交代の時間までが、ものすごく長く感じられた・・・・・