古の賢者達〜第9話〜


「アイスラン・・・・・・」
「アイシクル・・・・・」

「フローズンシャワー!!」

私とシャルロットちゃんが、
近づいてきていたヘンスタに、魔法を放とうとした瞬間。
いつの間に隣にいたのか、お師匠様が、魔法を解き放った。

『え?』
二人して、声をあげると、
いきなり襟首をお師匠様に引っ張られる。

"え〜〜〜〜〜〜〜〜!!"

そのまま、セリスさんと、ジーク君、ヒルダちゃんのそばまで引っ張って行かれた。

その間にも、お師匠様は呪文を唱えつづけ、
身振りもなしに打ち続けて、6匹のヘンスタを氷漬けにしている。

「お師匠様?」
訳がわからずに、問い掛けると、

「そこでじっとしていろ。フローズンシャワー!!」
すでに、別の敵に向き合っていたお師匠様は、説明も無しに呪文を解き放った。

"え〜〜〜っと・・・・・"

どん!!

何が起こったのか、考えようとしていたとき、
いきなり背中に堅いものがぶつかってきた。
振りかえると、そこにいたのは、ザビーネちゃん。

「あ・・・・・ごめん、ルーシアちゃん。
 何がどうなったの?」

”それは私が聞きたいよ・・・”

口に出す代わりに、首を振る私。
気がつくと近くに、フレデリカちゃんと、ユリアン君、カリンちゃんもいた。

4人がここまで下がってきた理由は、
疾風のように駆け抜けている、ルークさんのようだった。

ホントに風のような速さで、次々と、ヘンスタを倒していく。

”あれじゃ、モンスターの近くにいられないよね・・・・”

あれだけいたモンスターの群れが、
お師匠様の魔法、ルークさんの鞭、
そして、人が変わったように槍を振り始めた、サーディアンさんによって、
あっという間に全滅させられていた。

「お師匠様?いったい・・・・・」
他のみんながあっけに取られているので、私が代表して、質問する。

「お前達への説教はあと。
 で・・・・・・サーディアン?」
視線を向けられて、サーディアンさんは思わず一歩後ろに下がる。

「な・ん・で、退却の指示を出さなかった?」
「う”・・・・・
 いや・・・その・・・
 前もって言うのを忘れて、戦闘中に指示を出す機会が・・・・」
「いくらでもあっただろうが・・・・そんなの・・・
 お前がここに参加してるのは、護衛よりも、
 その手の指示を出す訓練のためだろうが・・・・
 しっかりしろよ・・・・・」

頭を掻きながらしゃべるお師匠様。

「すまん・・・・」
サーディアンさんが申し訳なさそうに謝るなんて、想像もできなかったな・・・

「レイク、こんなとこでそんなこと話してる・・・・」
「フローズンシャワー!!
 場合じゃないな」

ルークさんの言葉をさえぎって、魔法を解き放つお師匠様。
見れば、いつの間にか、ダンジョンの奥から、またヘンスタが現れ始めていた。

”でも、お師匠様、よく気がついてるなぁ・・・・・”

「サーディアン!!
 今のうちにちゃっちゃと指示出す!!」

「あ。。。。ああ・・・
 ここから、比較的安全な場所まで、駆け抜ける。
 前方のモンスターはレイク。
 左右からのモンスターは、俺と、ルークが相手を。
 見習達は、一塊になって、セリスといっしょにいる。
 こんなところでいいか?レイク」

「俺に聞くな。
 まぁ・・・・そんなところかな?」
ため息をつきながらお師匠様が言う。

そして、私達を振りかえると、

「モンスターの相手をしようと思わなくていいから、
 セリスについていくことだけ考えてな」
そういうと、セリスさんも、頷いている。

「さぁて。んじゃ、とっとと突破しますか」
お師匠様のその声で、ルークさんと、サーディアンさんが先行する。

ルークさんは、ブリズウィクを唱え、
サーディアンさんは、高速移動ポーションを飲み、
集まりかけていたモンスターに一瞬で詰め寄る。

そのすぐ後を追いかけていたお師匠様が、魔法で道を開け、
その道を、私達はセリスさんと一緒に駆け抜けていった。