古の賢者達〜第7話〜 ユリアン君に質問されて、お師匠様はなぜか不気味な笑顔を見せた。 "こんな顔をするときっていっつも・・・・" 「んじゃ、 王室図書館主任司書官サリーさんに勉強を教えてもらっている、ルーシアに説明してもらおうか」 ”やっぱり・・・・・” 「おまけに宮廷魔術視聴の孫弟子だ、答えれるよな〜〜〜〜」 「う”〜〜〜〜〜。 えっと・・・ マイソシア大陸に存在しているダンジョンは、3箇所。 このスオミダンジョン、 サラセンダンジョン、 ディグバンカーです」 テストをされているような気がして、無意識のうちに"ですます口調"・・・・ 「ルケシオンにも、ダンジョンと呼ばれる場所はあるけど、 あそこは、凶悪なモンスターや、海賊の要塞が近いからそう呼ばれているだけですから。 そして、3箇所のうち、ディグバンカーだけが他の場所と違います」 「どう違う?」 面白そうに質問してくるお師匠様・・・ こういうときは意地悪なんだもんな・・・・・ 「えっと・・・ スオミダンジョンと、サラセンダンジョンは、 "古代人が人工的に"作り上げたものです。 ディグバンカーだけは自然の洞窟だったもの。 現在のディグバンカーの大半は、現代の人間が、鉱石を求めて掘ったもので、 他の二箇所と違うというのはそれが理由です」 「補足すると、古代人が"入り口を埋めていた"洞窟を掘り当てたってことなんだがな。 そのせいで、ディグバンカーの奥地でも古代人の遺跡のようなものは見つかっている」 「はい。 お師匠様たちが退治したデスペラードワード、通称赤龍を封印したために、埋められたみたいです。 それと違って、残りの二箇所のダンジョンは元々は"生活空間"だったと思われています。 根拠はさっきお師匠様の言った、 "防護魔法がかけられている" "数々の生活の痕跡" "残された家具や、生活用品" この3点です。 これまでのダンジョンの探索で、”魔法の実験がされていたのでは”との報告もあります。 そのせいで、モンスターが生息するようになったのではないでしょうか・・・・」 「ブラボ〜〜〜〜〜!!」 私の説明が終わったとみて、ルークさんが歓声を上げてくれた。 「俺でもそこまできっちり説明できないや。 いや、さすがは"月の魔術師"様のお弟子さん」 誉められて、私は自分の顔が赤くなるのを自覚しちゃった・・・ 「誉め過ぎだ、それに、俺はまだ称号をもらったわけじゃない」 お師匠様が、半分呆れたように突っ込みをいれる。 「実験自体は、最下層付近で行われていたみたいだ。 魔術書のたぐいも、ほとんどが最下層で見つかるしな。 魔術の実験の暴走。あるいは、それが放置されたためにモンスターが生まれたんだろう」 「生まれた?」 お師匠様の言葉を聞いて、フレデリカちゃんが不思議そうな声で聞いた。 「ああ・・・"生まれて"来るんだよ 最下層付近になると、いたるところに水色に発光した液体が流れている。 古代では"神の水"と呼ばれていたらしいが、 それからモンスターが生まれ出るのを俺達は見たことがあるんだよ。 実験の暴走もしくは失敗で、モンスターを生み出す"水"ができてしまったのか。 あるいは、元々はコントロールできるものだったのが、 人の手を離れるうちに変質したのか。 どちらなのかは分からないけどな」 ダンジョンの報告書の類は勉強にもなるからということで目を通してきた。 私が読んだのは、お師匠様達の報告書。 けど、改めて本人から聞くと、なんかリアルだな・・・・ 他のみんなも、お互いに顔を見合わせたりして、びっくりしてるみたい・・・ 「さぁて。休憩は終わり。 みんな体力も魔力も回復してきたころだろうし、 本来のこのPTの目的、"ダンジョンの探索"を開始しますか」 立ち上がりながら言うお師匠様の言葉で、みんなはいっせいにうなずいた。