古の賢者達〜第6話〜


ゆさゆさゆさ
“まだ眠いんだよ・・・・・“

ゆさゆさゆさ
”ったく・・・・・・”

重たいまぶたを開けると、そこには、愛弟子が立っていた。

「お師匠様?いつまで寝てるつもりなんですか?」
やっと起きてくれたお師匠様。

「モンスターが回りにいるって言うのに、よくのんきに寝れますね」

声に振り向くと、そこには、聖職者のジーク君が立っていた。
確かに、今いる場所は、町の中の安全な部屋ではなかった。

ルアスから、一日ほど歩いた森の中。
目的地のスオミダンジョンまでもう少しというところで、
私たちのPTは一夜を過ごしていた。

「こんなのは、慣れたら眠れるもんさ。
 それに、俺は明け方まで見張りしてたんだからな・・・・・
 出発まで寝かせてくれよ・・・・」
言って、また寝ようとするお師匠様。

「だ・か・ら〜〜〜〜!!
 もう準備できたから、出発するんだってば〜〜〜〜」
周りでは、野営のための装備を片付けている皆の姿があった。

「しかし、何でウィザードゲート使わなかったんだ?」
俺の隣りを歩きながら、ルークが問い掛けてくる。

「まぁ、確かに俺がウィザゲ使えばすぐなんだけど・・・・」

PTの先頭を歩くのは、騎士のサーディアンと、戦士のザビーネ。
その後ろに、修道士のカリンとユリアン、そして、盗賊のフレデリカ。

その次にセリスを含める聖職者の3人と、
見習い魔術師2人が続き、

最後尾が俺と、ルークという隊列。

「PT未経験の見習いつれて、しょっぱなからダンジョンってのは、
 ちょっと不安だったからな・・・・・・」
遠い丘の上にはスオミダンジョンが見え始めている。

「それなら、ルアスの森を歩いて、
 少しでもPTの経験積んだ方が得策だろ?」

「ま・・・・・経験積ませて、正解だっただわな」
頭の後ろで両手を組んで気のない返事をするルーク。

ルアスの町を一歩出ると、そこには数多くのモンスターが生息している。
これは、ルアスに限った事ではない。

このマイソシア大陸において、確実に安全なのは、人の住んでいる“街”だけだった。
だが、ルアスから、スオミダンジョンまでの道のりに生息するモンスターで
見習いたちが慌てるような奴はいない。

全員1人でいるのであれば、楽に敵を倒せるだけの技量は身につけているものばかり。
だけど、PT戦の初心者である見習いたちは、いつもの技量を発揮できていなかった。

あるときは、後衛のカバーが遅れたのに慌てて。
あるときは、前衛への掩護が遅れて。

お互いが、お互いの邪魔をしてしまう場面が多かった。

ちなみに・・・・

ルーシアとシャルロットは、味方を巻き込んだこと2回。
味方の攻撃で傷ついた事4回。
指導役の俺たち4人は、頭を抱える事数知れず。

まぁ、それでも、1日の旅程の中で、味方の邪魔をする事は、ほとんどなくなったけど。

「あの状態を知らずにダンジョンに行ってたら、
 あれくらいの被害じゃすまなかったわな」
ルークの言葉に、俺は溜息をついた。

確かに、ダンジョンに生息するモンスターはここまでの奴らとは一味違う。
死ぬ事はなくても、重傷者は出てただろう。

「まぁ・・・・・・あいつらも慣れてきたみたいだし、大丈夫だろ」
半分自分に言い聞かせるつもりで、俺は言葉を下にのせた。
そのころには、ダンジョンの入り口は目の前にあった。

「なんか緊張するな・・・」
「そうだね・・・・」

入り口を目の前にして、私は今までに無いくらい緊張していた。
隣りにいるシャルロットちゃんも一緒みたい。

「ここにはモンスターいないからとっとと入れ」
後ろからお師匠様に言われて、私はビックリして振り返った。

「え?だって、ダンジョンってモンスターでいっぱいで・・・・・」
「説明はあと、とっとと入れって」

後ろから近づいてきていたモンスターを軽くあしらいながら、お師匠様がもう一度言う。

“げ・・・・いつの間に囲まれてたんだろ“

私とシャルとっとちゃんが、慌ててダンジョンの入り口をくぐると、
お師匠様と、ルークさんも、戦うのをやめて、あとに続く。

近づいてきていたモンスター達は、入り口まで後ちょっとというところで立ち止まると、
悔しそうに私達を眺めてから、やがて散り散りに去っていった。

「どういうことなんですか?」
先にダンジョンに入っていたザビーネちゃんがお師匠様に尋ねる。

「ダンジョンってのはな、もともとは、古代人の住居みたいなものだったみたいなんだよ。」
近くにあった手ごろな岩に腰を下ろしながら、お師匠様が説明をはじめた。

「言ってみれば、俺たちが住んでいる町みたいなものかな?
 そのため、入り口には、厳重な守護魔法がかけてある。
 モンスターが近づけないようにな。
 古代人がいたころには、ダンジョンには、モンスターはいなかったんだろう。
 ダンジョンの中では生活の形跡を見かけることも多い」
そこまで言ってから、お師匠様は、奥のほうにある機械を指差した。

「例えばあれ。
 発見された記述によれば、あれは“エレベーター”って言うんだ。
 このダンジョンの奥まで一度に運んでもらえる。
 今は所々壊れてるから、思い通りの階にはいけないし、
 15階以下は、使い物にならない。
 けど、古代はあれで、最下層までいけたみたいだな」

「じゃぁなんで今はモンスターでいっぱいなんですか?
 町だったんなら、そんなものいるはずないのに・・・」
ユリアン君が、不思議そうな顔でお師匠様に尋ねた・・・・