古の賢者達〜第3話〜


廊下に響く、師匠と、フェリア様の足音が聞えなくなると、
無意識のうちに溜息が漏れた。

“さてさて、これからどうしましょうかねぇ”

決められている予定では、
このあとは“ダンジョン探索のメンバー同士の話し合い“だった。

”だけどな・・・”

ちらりと、サーディアンの顔を盗み見ると、
いつも通りの鉄面皮が、騎士になったことで分厚くなっている。

“こいつに任せたら、いつになっても終わらねぇな“

俺は再び、溜息を漏らした。

「さぁて、堅苦しいのはここまでにしようか」
カルディス師と、フェリア様が出て行った後も、

緊張の漂っていた部屋に最初に響いたのは、
お師匠様のそんな声だった。

「そんな緊張するなって、今からそんなんじゃ、もたねぇぞ?」
いつもなら、ルークさんが言うようなセリフをお師匠様が言っている。

そのまま、私の隣りの机のところに来ると、
机の上に−椅子じゃなくて−に座る。

「まぁ。宮廷魔術師の長と、騎士団長を前にして、
 緊張するなって方が無理だけどな。
 俺たちだって、緊張してたしさ」
そう言って、肩をすくめて見せるお師匠様。

「あ・・・・・ルークは除くけどな。
 あいつはどんなときでも緊張しないから」

「どういう意味だよ、レイク」
抗議をするルークさんに答えたのは、セリスさん。

「二人の前で、あんな自己紹介して。
 あれで、“緊張してた“なんて言われても、
 信じれるわけないでしょ?」

くすくすと笑いながら言う、セリスさんに、
ルークさんは、”ちぇッ”と拗ねたような表情をして見せた。
それを見て、私も、くすくすと笑ってしまう。

気がつくと、そのやり取りを聞いていたみんなが笑っている。
ただし・・・・サーディアンさんは除く・・・・・

「あ・・・そうそう、俺たちの自己紹介したけど、
 サーディアンを呼ぶときには、”騎士様”って呼んでやってくれる?
 その呼ばれ方に慣れるのも、あいつの“経験”のうちだから」
お師匠様の声を聞いて、
反論はしなかったけど、サーディアンさんの表情がこわばる。

「俺の事は“ルーク様“って呼んでくれな。
 特に、女の子は」

言って片目をつむって見せるルークさんに、
間髪いれず、サーディアンさんと、お師匠様が唱和する。

『あいつは呼び捨てで』
再び、部屋は笑いに包まれていた。

当のルークさんは、
「ひでぇよなぁ」
って言いながら、盗賊の女の子のそばに行っている。

セリスさんは、いつの間にか、聖職者の三人のところに、
サーディアンさんは、正面の壁に背中を預けている。

「じゃ、みんなの自己紹介お願いできるかな?」
お師匠様は、そう言って、私に目配せする。

“私が最初にって事か“

私は立ち上がって、自己紹介を始めた。

「私は、魔術師のルーシアって言います。
 えっと、ここにいるレイクさんが、私のお師匠様。
 4日間だけど、仲良くしてください」
そう言って、お辞儀をした。
椅子に座ると、お師匠様が、私の頭をポンポンと叩いていた。

「じゃ、次は君ね」
次にお師匠様が、目配せしたのは、私の隣りにいた女の子。

「あ、はい。
 私は、シャルロットって言います。
 ルーシアちゃんと同じ、魔術師。
 どちらかというと、範囲魔法の方が得意かな?
 よろしくお願いします」
言って、ぺこりとお辞儀をした。

次に立ち上がったんは、戦士の服を着た女の子。
「私は、ザビーネ・フォン・クロイツェル。
 見ての通りの戦士です。よろしく」

そこからは、席についていた順に、自己紹介をしていった。

「聖職者のヒルデガルドです。ヒルダって呼んで下さいね。
 セリス司祭ほどの力はありませんが、
 精一杯頑張ります」
と、聖職者の女の子

「同じく、聖職者のジークです。
 足手まといにならないように頑張ります」
こっちは、男の子。

「盗賊のフレデリカです。
 鑑定は任せてね♪」
女の子の盗賊さん。

「修道士のカリンです。
 全力で頑張りますね」

「同じく修道士のユリアン。
 カリンの双子の弟です。よろしく」
そっくりだと思ったら、双子だったんだ。

「さて、自己紹介も終わった事だし、
 みんなで、街にでも行っておいで、
 俺たちにも、ちょっと準備があるからさ」
自己紹介が終わって、お師匠様が立ち上がりながら言う。

「明日からは、御互いに、命を預けあう仲間だ。
 仲良くなっておいて、損はないからね」

お師匠様がニッコリと笑ってくれたのを見て、
私たち9人は、町で久々に羽を伸ばせる事になった。