暁の魔術師〜第6話〜 「アイスアロー!!」 俺の放った魔法は、目標に着弾し、その一部を凍りつかせた。 「ん〜〜〜〜〜。 やっぱこうなるか・・・・・・」 たった1人で、部隊演習用の部屋で実験をしていた俺。 予想通りではあったが、なんとなく、釈然としない気持ちで、 身につけていたアイテムを、視線の高さまで持ち上げる。 目の前にあるのは、古の賢者が残した、 ハイリビエラ"ウィザードリーウォーター" それから視線をはずして、もう一度、実験の"結果"に目をやる。 この部屋に入って、俺が放った魔法は、アイスアローを3発・・・・・ 目標としていたのは、障害物代わりに置かれていた岩。 目の前に並んだ3つの岩には、それぞれ一発ずつ魔法を放った。 最初は、何もアイテムの補助をしないまま、左端の岩に。 2発目は、通常のウォーターリビエラを使って、真ん中の岩に。 最後の一発は、ハイリビエラを使って、一番右端にの岩に。 それぞれ、魔法の命中した個所が凍り付いてはいるが、 真ん中の1個のみは、その範囲が広い。 リビエラの効果で、魔法の威力が上がっていた印。 だが、何もない状態の魔法と、ハイリビエラを使ったときの威力は同じ。 「ハイリビエラは、発動していなかった・・・・・ まぁ、呪法使わなかったし、当たり前といえば当たり前かな」 独り言を呟いて、身体を180度反転させる。 目の前には、大人が20人で囲んでも、手が届きそうにもない大岩。 「本題行きますか」 そう言って、俺は呪文を唱え始める。 「お師匠様〜〜〜〜〜〜」 目の前の扉を開けると同時に、私は声を張り上げた。 けど、そこには、人影はなかった。 今いるのは、お師匠様の私室。 「ココにもいないや・・・・・・」 私は、お師匠様を探して、王宮中を走り回っていた。 宮廷魔術師の溜まり場。 礼拝堂。 食堂。 他にもいろいろ回ったけど、どこにもお師匠様の姿はなかった。 部屋にいるのかなと思って、ココに来たけど、ここにもいない・・・・ 「どこいってるんだろ・・・・・」 "これ、見せたかったのに・・・" 私の手には、解読の終わった魔術書が握られていた。 「こんなとこでどうしたの?ルーシアちゃん」 声に振り向くと、廊下にセリスさんが立っていた。 「お師匠様探してるんだけど、どこにもいなくて」 「あ・・・レイクなら、騎士団の鍛錬所に行くっていってたけど? まだ、そこにいるかもね」 「鍛錬所って?どこにあるの?」 セリスさんに、場所を教えてもらうと、 私はお礼を言ってから、その場所へと駆け出した。 "あの遺跡に書かれていた物が正しくて、 俺の解読に間違いがなければ・・・・" 呪文を唱えながら俺が考えていると、 胸に下げたハイリビエラが、青白い光を放つ。 同時に、はっきりと知覚できるほど膨張した、 俺自身の魔力が、部屋を埋め尽くしていく。 ”やっば〜〜〜〜〜” 呪文を唱えれば唱えるほど、膨張した魔力は密度を上げていくのが分かった。 はっきり言って、最強の魔法とされる、メテオの比ではない。 "まともにやれば、洒落にならなくなるな・・・・・・" 呪法の部分が終わり、続けて、アイスアローの詠唱・・・・・ その呪文を、わざと間違える。 「アイスアロー!!」 充満していた魔力が、呪文によって、空間に具現化する。 まともに唱えていれば、無数の氷の矢が、岩に突き刺さっていただろう。 が、わざと呪文の内容を間違えていたから・・・・・ 「いったい何なの!!これは!! 説明しなさい!!レイク!!」 血相を変えて、飛び込んできたのは、騎士団長のフェリア様。 他にも、多数の騎士が付き従っているけど・・・・ 「あはははは。 ちょとだけ派手な実験のつもりが・・・・ 派手にやりすぎましたね・・・」 乾いた笑みしか浮かべる事はできなかった・・・・・ 俺が使った呪法によって、この部屋の中だけが、 "吹雪"に包まれていたから・・・・・・