暁の魔術師〜第5話〜


「レイク、どうした?こんなところへ」

王宮の離れにある一室。
そこに足を踏み入れたとたんに知った顔から声をかけられた。

「サーディアン。
 ちょっと、派手な実験したいから、場所を貸してもらいたくてな」

今いる場所は、王宮騎士たちの鍛錬所。
部屋の隅には、さまざまな大きさ、形をした、武器。

人形を相手に、技の練習をしている者。
集団で、型の練習をしている者たち。
周りには、たくさんの王宮騎士たちが、訓練をしていた。

ざっと見回すと、探していた人物がみつかった。
4人の騎士を相手に、実戦形式の訓練をしている人。

「それじゃ、またあとでな」
サーディアンに、そう言うと、俺はその人の元へと、足を進める。

"相変わらずの腕だな・・・・"
その人は、たった1人で、4人もの相手をしている。
そして、その4人を圧倒していた。

息の上がってきていた1人を、その人が打ち据える。
受身も取れずに吹っ飛ばされる騎士。
そして、残る3人も、次々と倒されていく。

使っているのは、柔らかい材質の木刀なのだが、
怪我人が出る事もあると聞いた。

「御見事です、フェリア様」
そう声をかけると、たった一人、その場に残っている人が振り向く。

「あら、レイクじゃない。
 どうしたの?珍しい」
振り向いて、微笑を見せる彼女。
少女のような、あどけない顔立ちをしていて、
街ですれ違えば、男なら、おもわず振り向いてしまうほどの美人だ。

休暇に、街に繰り出すと、
必ず1人は、声をかけてくる男がいるそうだ。

そんな男たちは、彼女の本当の姿を知らないだろう。
ルアス王宮騎士団の騎士団長を勤めている事など。

そして・・・・

"これでも、40に手が届こうかという年齢なんだよな・・・・・"

俺は、おもわず、声に出せば、本気で殺されそうな事を考えてしまった。

「私の顔に何かついてる?」
頬に手をやりながら、聞いてくる彼女。
凝視しすぎてしまったか・・・・

「あ・・・いえ。
 ちょっと派手な魔法の実験したいんで、
 部隊練習場を、貸してもらってもいいですか?」

この部屋の奥には、小隊、中隊規模で戦う練習をするための、
かなり大きな部屋があるのだ。

「いいわよ。今日は使う予定はないし」
俺は、フェリア様に礼を言うと、1人、その部屋へと入っていった。




「う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
私は、図書館で、頭を抱えていた。

「どうした?ルーシア」
ちょうど近くを通りかかったカルディス様が、声をかけてくれる。

「あ・・・・カルディス様、どうしてここに?」
突然の事に驚く私。

「暇だったんでな。
 ルーシアがココにいると聞いて、
 ちょっと覗きにきたのさ」
そう言って、優しい笑みを見せてくれる。

「それよりも、どうかしたのか?」
カルディス様の声に、私は、答えた。

「最後のところで躓いちゃって・・・・
 こんな単語、どこにもないんだもん・・・・」
そう言って、巻物の、一番最後に書いてある文字を指差す。

「もしかして、もうそこ以外解読してしもうたのか?!
 まだ3日目じゃないか!!
 レイクは、一ヶ月もかかったというに。」

そう言われても、できちゃったものは仕方がない。
私が頷くと、

「すごいのぅ〜〜〜。
 じゃぁ、最後のところのヒント教えてやろう。
 辞書で探すんじゃなくて、声に出して読んでごらん?」
笑いながら言うカルディス様。

私は、言われたとおりにしてみる事にした。
「ば・・ると・・・ふぇ・・ると・・・?
 れ・・・い・・・・・・か〜・・・・す?」

読んでみたけど、意味が分からない・・・・・

「バルトフェルト=レイカース。
 レイクの本名だよ。
 おめでとう。初めて、自分で、古代書を解読できたな」
そう言って、私の頭をなでてくれる。

私はそれを聞くと、急いで、解読した者をメモしていた紙に、
お師匠様の名前を書くと、

「ありがとうございます!!
 これ、お師匠様に見せてきます!!」
そう言って、図書室を飛び出していった。