暁の魔術師〜第2話〜


全ての作業を終え・・・
後に残ったのは、達成感ではなく・・・・ただ、虚無感が残るだけだった。

机の上に並べられた数々の物。
古代文字の翻訳に使う辞書。
リビエラの事に付いてかかれた書物。

俺自身の持ち物である、ウォーターリビエラ。
ディグバンカーの奥にあった、古代の遺跡から書き写してきた、古代文字のメモ。
それを翻訳した物。

そして・・・・・

”古代の賢者が最後の切り札として使った、ハイリビエラ・・・・
 ウィザードリーウォーター・・・・・か・・・・・”

ウォーターリビエラとほぼ同じ形状をしたメダル。

しかし、その秘めたる力は、現存するリビエラとは、全く別物。
そして、その力は、禁呪とするにふさわしい物のはずだった。

俺は、深く溜息をつくと、机の上を片付け始めた。

窓の外には、朝日が昇りつつある・・・・

「あれ?」
私が声をあげると、

「ん?どうかした?」
隣を歩いていたセリスさんが、私に聞いてくる。

「ほら、あそこ」
私は、廊下の窓から見える、王宮の一室を指差す。

「図書館に明かりがついてる・・・・・・」
その部屋は、昨日私が、サリーさんという魔術師の人に、
古代語を教えてもらっていた部屋だった。

「おはよ〜〜」
いかにも寝起きという感じの声が聞えた。
振り向くと、そこには、サリーさんが立っていた。

「おはようございます」
「おはよう、サリー。
 こんな時間から図書館に明かりなんかつけて、何してたの?」

朝の挨拶を交わしてから、セリスさんがサリーさんに聞いた。
サリーさんは、図書館の管理を任されている魔術師だから。

「・・・・・・・・?
 私は、昨日あなたたちが帰ってきたあと、
 怪我人の応急処置の手伝いをして、すぐに寝たから、
 起きたのが今よ?
 明かりなんてついてるわけ・・・・・・」
サリーさんは言いながら、窓から見える図書館の方を覗いて、

「あ・・・・ほんとについてる。
 誰だろ・・・・・?」
本当に心当たりがないのか、首をかしげるサリーさん。

「もしかしたら、お師匠様かも」
私が思いつきを口にすると、

「そうかも。
けど何で図書館なんかにいるんだろ?」
「お師匠様って・・・・レイクが?
 けど、傷が完全には消えてないんじゃないの?」

サリーさんと、セリスさん、2人が顔を見合わせる。

「まったく・・・
 人がせっかく早起きして、傷の手当てしてあげようとしてるのに、
 それさえ待たずにうろうろしてるんだから、あの人は・・・・」
きびすを返し、図書館への道を歩き出すセリスさんに、
今度は、私と、サリーさんが顔を見合わせる。

「大変ねぇ・・・・セリスも」

他人事だといわんばかりの、サリーさんの口調に、
私は苦笑を返すしかなかった。

"でも、相当怒ってるな〜〜〜"

足早に図書室へと向かうセリスさんについていきながら、
私は、その背中が、怒りに燃えているのを感じ取っていた。